FLOWERS -Le volume sur été- (夏篇) その2(まとめ)

春篇の感想はこちらから。

シナリオ

あぁ、夏篇も「百合系ミステリィADV」だったんだっけ?
「ツンデレとクーデレのイチャイチャADV」かと思ってたよ!
シナリオの詳しいレビューは、記事その1からどうぞ。

夏篇の本当のミステリィ要素は、「フックマン事件で、バスキア教諭が庇おうとした人物」「マユリが絵画に残したメッセージ」「八代譲葉殴打事件で、譲葉が庇おうとした人物」になるかな。
まぁこのあたりのお話は、秋篇以降で。

エンディングは、私はやっぱりトゥルーを推しておく。
友達以上恋人未満エンドも悪くはないけど。やっぱりギャルゲーだしね、ハッピーエンドがいいですね!
ダリアエンドも、私は嫌いじゃない。
というか、えりかちゃんってばおっぱいにドキドキしすぎなんだよなあ?

テキスト

基本的には春篇の感想に準ずる。ライターは同じ人だしね。

ただ、春篇よりもギャルゲー寄りの甘いテキストが増えた気もする。
これは主人公が真面目キャラの蘇芳ちゃんから、皮肉屋のえりかちゃんに変わったからかな。

えりかの軽口に千鳥が皮肉で返す、偏差値高そうな会話が好き。
バレエの講師が誰か尋ねられて「私だよ」とか適当言っちゃうえりかちゃんを見つめて、「嘘つきの顔をじっくり確認しておきたかったのよ」と返しちゃう千鳥ちゃんとか。

私のお気に入りは、プロローグの最悪の出会い。
だいたい口達者なえりかちゃんにやり込められちゃう千鳥ちゃんだけど、えりかちゃんに煽られたこのときの刃物みたいな鋭さは、彼女のキャラクターを印象付けるとてもいいシーンだったと思う。

わたしの眼を、顔を、身体を、車椅子を、動かない足を順に眺め、
「――貴女は卑怯者ね」
耳元でそう言った。
続け――甘えている、と。


グラフィック

夏篇は夏服なのです!
セーラーワンピ、いいですねえ!
学院指定の下着(そこまで制服!)に色気が足りないのは、やや問題ではあるが。

今回は、おいしそうなお昼ご飯CGが充実していた。
料理絵って手抜きなことが多いので、こういうの好感度高し。
(っていうか、えりかちゃんグルメすぎでしょ?)(仔牛のカツレツとか食べたことないですけど?)

あとは――もう原画・スギナミキのグラフィックについて語るのも野暮でしょう。
トゥルーエンド後のタイトル画面は、ギャルゲー史に残ると信じています。

声優

私は痛車のモデルにしちゃうくらい雷が好きなのです!
なので、CV:洲崎綾がヤバスギでした。
ちょっと心を開いてくれたときの無防備な声なんか、まんま雷なんだよなぁ。
(壁を作っているときが響だというわけではない)(暁と電要素もないので、あしからず)

ちなみに、えりかちゃんに那珂ちゃん要素はぜんぜんなかった。

音楽・ムービー

こちらの評価も、春篇に準ずる。
OPムービーは春篇のほうが好きだったかも?

ただ、千鳥ちゃんがアカペラで歌っていた唄がEDに流れるのは、かなり震える。

システム

こちらの評価も、春篇に準ずる。
キャラ別音量調整が、さらに手が込んでおりました。

総評

ミステリィ風味、百合系日常ADV。
春篇に比べて、ギャルゲー色が強まっている。

春篇での百合百合は、世界で一番大切な相手のことを便宜上「恋人」と呼びました――といった、S極とN極が引き合うのと同じお付き合いだった。
変わって、夏篇での百合百合は、前世からの絆であり、薬指の運命の赤い糸に結ばれたお付き合いだった。
あまあま度が段違いなのです!

とは言え、今回の作品ではレーティングが18禁だったとしても、Hシーンが入るようなことは誰もしていなかった。(春篇とは逆に)
ま、奉仕の心に目覚めた千鳥ちゃんに、照れ屋なえりかちゃんが押し倒されちゃうシーンとか想像してしまいますけどね!

FLOWERS・夏篇、傑作評価・★4つを継続です。
批評空間ベースでは、春篇をしのぐ86点をつけておきます。
ツンデレとクーデレがイチャイチャするゲームとか、傑作以外ありえないんだよなぁ……。

ちなみに、車椅子少女に萌えてしまうのは人間として不健全なので、私はここには書かないようにしました!
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ゲーム [★★★★☆]
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FLOWERS -Le volume sur été- (夏篇) その1(シナリオレビュー)

FLOWERS・夏篇がなぜ素晴らしいのか、考えてみた。

ツンデレ小悪魔とクーデレ雷がイチャイチャするゲームとか、素晴らしくないわけがなかった。
(千鳥のCV・洲崎綾は、艦これ第六駆の声優さんなのです!)

と、一行で感想文を終えてしまうわけにもいかないので、二人のイチャイチャ具合をもう少し掘り下げてみたいと思う。

今回のシナリオは、(普通のギャルゲーと同じく)主人公がヒロインの抱えている問題を解決することで、距離が縮まっていく――という、王道のパターンだ。
ここでは、その「ヒロイン」である考崎千鳥嬢にスポットを当てる。

---

足下に落ちた自分ノートを拾いぱらぱらと捲った。こんなものが無ければ、好きか嫌いかも判断できない自分。
父母が興味を持ってくれるかだけを考え――詐病を繰り返し、バレエですら父母を振り向かす為の……。
私は、私自身とは何なのだろう。


(ありがちな話ではあるが)えりかも千鳥も「家族」に問題を抱えていた。
二人ともきっと気が合うわぁ――とはバスキア教諭の言葉だけれど、大きな共通点は、まずここだ。

えりかは足が不自由なことから、どうしても家族に負担をかけざるを得なかった。
そのことに心を砕いた彼女は、全寮制の学校に進み、家族から離れることを望む。

一方千鳥は、能力至上主義な家庭に育ち、常にエリートでなければならなかった。
けれど、両親が唯一認めてくれたバレエに挫折し、聖アングレカム学院に転入することとなる。

千鳥が今まで努力してきたすべては、両親に認められたいからであり、ひいては「自分のため」だった。
彼女が病を患ったのは、バレエを踊ることを「後輩のため」と歪な動機付けを行ったからだろう。
今までの彼女の人生のスタンスでは「他人のためになにかをする」ことが認められなかったからだ。
(もちろん、千鳥もそれが正しいことだと頭では理解していたはず。けれど、実際に行動に起こせるかは別問題だ。
 朝起きなきゃいけないとわかってはいても、学校や仕事が苦痛すぎてベッドから出られないのと同じことだ)

けれど、千鳥は(春篇と違い、正しい意味で)変わっていく。
それは朗読劇を成功させるために奔走したえりかの、発表会を成功させたいと自分を思いやってくれたえりかの姿を見たからであり。
そして過去を乗り越えたことを知ったとき、自分がどれほど多くの人に支えられていたか、アミティエがどれほどのものを自分に与えてくれたかを知る。
自分のためではなく、贖罪のためではなく、本当の意味で「人のためになにかをする」ということを肌で理解するのだ。

自分とはなにか。
自分はなぜ生きているのか。
「両親のため」「後輩のため」と自分を騙すことができなくなった彼女は、そうして一つの答えを得る。

好きな人の為に、何かしてあげたいと思ったことはありますか――


---

バスキア教諭の言う、二人の共通点。
それは、触れられたくない心の聖域を守るために周囲に壁を作っているということ。

千鳥は信念を持って生きている、強い少女に見える。
逆に、えりかは不自由な身体で、なんとなく優しくしてあげたくなる少女に見える。

けれど、実の二人はその見た目とは全く逆だ。
千鳥の心はとても脆く、(そのクールなルックスからは信じがたいほどの)幼い拗ね方をしてみせたりする。
逆に、えりかは他人を寄せ付けないほどの強い自分を持っている。
いずれにせよ、千鳥はその態度で、えりかはその言葉で、他人を拒否していたのだ。

私たちはいつでも居場所を探している――
私はそう書いたけれど、居場所とは、自分を守るために身構える必要がない場所だということ。
そんな二人が良いアミティエになるのは、パズルのピースがはまるのと同じくらい自明なことだ。

「この学院に転入して――落ち込むこともあったけれど、今は此処が私の家だわ」
「そしてわたしは家族」
問うわたしへ、千鳥は小さく、だが決然と首を振る。
「えりか、貴女は私の――」
呟かれた言葉は、確かにわたしが望んだ言葉だった。


照れ屋なえりかはそれを家族と呼び、生真面目な千鳥は恋人と呼んだ。
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur printemps- (春篇) その2(まとめ)

シナリオ

「百合系ミステリィADV」と銘打たれているものの、中身は、やれば出来る系主人公の成長譚。
もちろん、女の子たちの百合百合しい距離感も、見どころの一つ。
詳しいレビューは、記事その1を参照されたし。

「マリア様がみてる」から影響を受けているような部分も散見されるが、ただの二番煎じではない。
もっと繊細な「自分探し」がテーマとなっている。

しかし、冷静になってみると、私たちは「自分らしさ」などという台詞をキーワードに、いつでも居場所を探している気がする。
その頻度は恋をするくらい高いようにも思える。
ひょっとしたら、だから恋をするのかもしれない。

テキスト

読み物としてのクオリティは十分満たしている。
漢字の使いかたに代表される、グラフィックにマッチした透明度の高い綺麗なテキストで作られている。

その文章自体にさほど意味のない、装飾的なテキストが多いのも特徴。
「文章力」という観点で採点したときの評価はわからないけれど、それが作品の雰囲気作りに大きく貢献しているのはたしか。
(そういう意味では、奈良原一鉄のような個性があると言えるのかもしれない)

ただ、選択肢はちょっと意味不明気味。

グラフィック

さすがイノグレ、さすがスギナミキと言いたい。
殻ノ少女シリーズのときはちょっとダークな雰囲気の絵が多かったけれど、今回はもっと明るくて優しい絵が多い。
はじめて図書室に入ったときの蘇芳ちゃんを見ていると、なるほど、一枚何十万とかの萌え版画を買っちゃう人の気持ちがわかる気すらしてくる。
グラフィック面では、間違いなくギャルゲー界最高峰の一角。

個人的にお気に入りなのは、聖アングレカム学院の制服。
ワンピースのセーラー服に、ベルト代わりにリボンを結ぶデザインだと思うのだけれど、これが妙にロリロリしい。
生地がずいぶん柔らかそうなせいか、スモックのようにも見えますね!?

声優

どうしてこんなところにまりのさんが!? とは思うけれど、全体的にナイスキャスト。
特に、やっぱり蘇芳ちゃん。
この控えめで優しい声で囁かれると、もー蕩けちゃいそうです。

苺と林檎の声優さんが一緒っていうのも、にわかには信じがたいところ。

音楽・ムービー

BGMやボーカル曲を単体で取り上げたときのクオリティは、中の上~上の下くらい。
つまり、「ふつーにいい」レベル。

ただ、この作品の雰囲気作りには二役か三役くらい買っている。
縁の下の力持ち、ってやつかな。

そして、OPムービーにはこのゲームの魅力が濃縮されている。
イノグレ作品はいつもそうだけれど、こういう一点に作品の雰囲気を凝縮して投影するのが上手なんだよなぁ。

システム

必要十分。
バックログがマウスでスクロールできないのが、ちょっと残念。
(ウィンドウモードが使えなくなってしまったのは、たぶん私の環境のせい?)

イノグレ作品では、キャラクター別音量調整は必ずしようね!

総評

ミステリィ風味の百合系日常ADV。
気になったなら、まずはOPを見てみよう。
そこで感じた雰囲気は、ゲームの中に広がる世界とまったく同じものだ。

また、作品を構成している要素すべてが「透明感」という統一性を持って、作品の雰囲気作りに寄与しているのは、特筆すべき点だと思う。
まったくブレがない、いわゆる「一貫性がある」というやつ。
こういった個性とセンスはなかなか持てるものじゃない。

大人数が関わって完成する作品にそこまできちんとした芯が通っているということは、それほど「作り込まれている」と言える。
その点のみでも評価されるべきだと思うし、さらに、その個性が私の好みにとても合っているのだ。

また、このゲームが18禁じゃないのも重要な点。
「マリみて」とは違って、このゲームでは女の子同士でキスするし、たぶんそれ以上もしてる。
(蘇芳ちゃんとマユリちゃんは図書室でマリア様に見せちゃいけないことをしたよ! 私はそう信じている)

もちろん、そういった18禁要素が一枚絵付きで描写されたならそれは至福の時だろうが、そうして作品がR18指定になった瞬間、すべての個別ルートでえっちなことをしなくちゃいけない義務が発生する。
それは、彼女たちの純粋さを大きく損なうことになる。
(男の子はエッチしたいから恋をするけれど、女の子は恋をしたからエッチをするのです!)

つまり、このゲームは全年齢レーティングだからこそ、透き通る輝きを放っているのだ。
FLOWERS・春篇、傑作評価・★4。
批評空間ベースでは、83点です。
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ゲーム [★★★★☆]
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FLOWERS -Le volume sur printemps- (春篇) その1(シナリオレビュー)

祝・冬篇発売決定!
ということで、記事を書かずにやりっ放しプレイだったFLOWERSだけれど、ようやく2周目をしたので、ようやく記事にします。

余談だけれど、イノグレは私のベスト3に入るお気に入りブランドなのです。
そのお気に入りポイントをごり押ししてくるのが、この作品。
この透明感は他所じゃ味わえない!

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『悪魔と青く深い海の間で』という英語の慣用句がある
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現だ
青い海に飛び込み身を投げてしまった女性
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況であれば――
悪魔に食べられたくない女性は時として深い海のほうが魅惑的に感じるという
どちらを選んでも救いはない
これから始まるのは
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない二つの問いに迫られる、始まりのお話


「百合系ミステリィADV」と銘打たれているように、このゲームには主人公も含め、女の子しか登場しない。
(ついでに、全年齢レーティングなのでHシーンもない!)
四部作の「起」に位置づけられるこの春篇は、超絶コミュ障な主人公が、拙い足取りで初めての友達を作り、ゆっくりと絆を結んでゆく、三角関係のお話である。

---

ストーリーそのものについては、語るべきことは多くない。
学院生活に起こる身近な事件を、主人公が探偵のように解決していくあたりが「ミステリィADV」なのだろう。

けれど、このゲームでのメインは、謎解きミステリィではなく、謎を解いた結果として影響を受ける少女たちの関係性がメイン。
(例えば、立花の濡れ衣を晴らしたことで、主人公のポジションが「取っつきづらいミステリアスな美人」から「知的で寡黙な大人な女性」にランクアップし、立花からの好感度がうなぎ上りする――など)

まぁ……マユリちゃんを失踪させた「真実の女神」は、本物のミステリィかもしれないけど。
この謎については、冬まで持ち越しということで……ひとつ。
(というか、毎度イノグレ作品は選択肢が意味不明すぎるんだよなあ?)

「好き」も「嫌い」も、本当に他人だったなら持ち得ない感情だ。
もはや他人でもただのクラスメートでもない「アミティエ」という仮初の友人となったせいで「関係」が生まれる。
三人の少女たちのそれぞれの思惑と、否応なしに起きる出来事と、どうしようもない感情によって、近づいては離れ、また近づいて……な、思春期独特の距離感が、このシナリオの醍醐味である。

ここでは主人公・白羽蘇芳にスポットを当て、感想文をまとめてみようと思う。

---

彼女はいわゆる「おどおど系」で、内気な小心者だ。
このキャラクターには、たぶん好き嫌いがあると思う。
(うじうじ思い悩むばかりの彼女にイライラさせられた諸兄姉も多いのではなかろうか?)

けれど、そのメンタルの弱さとは対照的に、今流行りのラノベ主人公も真っ青な超絶スペックの持ち主でもある。
誰もが学年一と認める容姿に、恵まれた体躯、頭脳明晰、手先も器用で、アルパカみたいに優しくて、おっぱいも大きい。
彼女こそが「実は出来る系主人公」そのものなのだ。

ついでに個人的な話をさせてもらえれば、彼女こそが私の「憧れ」でもある。
もし私が女の子として生まれたのなら、蘇芳ちゃんになりたかった。
そう、そんな私はおどおど系の陰キャなのでした!
(どーでもいいことを一応断っておくと、今から女の子になりたいとは思わないので、TSモノには興味がなかったのでした)

そして、このシナリオはそんな人見知りな蘇芳ちゃんの成長ストーリーでもあるのだ。

例えば、「血塗れメアリー」事件での、沙沙貴姉妹との顛末。
自分の中に膨れ上がる感情を初めて発見し、思い切って言葉にした日。

「――だって、友達じゃない」


例えば、「桜狩」事件の最中、自暴自棄にすべてを吐露せざるを得なくなるほど弱り切ったマユリとの顛末。
自らの過去を明かし、そしてこう続ける。

「私が自分の事を告白したのは、マユリさんを擁護するためではないの」
「貴女が今ここで全てを失っては……諦めてしまったら、貴女を目指していた私も終わってしまう。そう感じたのよ」
  「私を立ち直らせるのは……自分の為、か」
「そう。だから聖母役を降りるなんて言わないで。私が目指せる貴女で居て欲しいの」


蘇芳は決して自分に自信が持てるようになったから、強い言葉を口にできるようになったわけではない。
友人になれるほど彼女たちと積み重ねてきた日々を――つまりは友情を、信じられるようになったからだ。
そうして結実するのが、マユリエンドなのである。

---

ふと
「悪魔と青く深い海の間で」という英語のことわざを思い浮かべ
私自身が分水嶺にいるのだと識った
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況――
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現
どちらを選んでも救いはない
私たちの行為は神に叛するものだろう
だけれど、
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない選択を迫られている今こそ愛おしいと思えた


彼女たちの関係性は変わっていく。
それがたとえ背徳だったとしても、想いを交わすことの、互いのすべてを受け入れることの喜びを知る。
けれど、彼女たち自身は変わらない。
己の弱さを克服できないままだ。

真実はいつも残酷だという
ならば嘘は優しいのだろう
いつか読んだ文章にあった言葉、次はなんと続くのだったか


二人きりの深夜の図書室を「青く深い海」となぞらえた蘇芳は、なぜマユリを「悪魔」にたとえたのか。
互いのすべてをさらけ出し、重ねること。
その後戻りのできない一歩が「絶望の海」だというなら、「優しい悪魔の囁き」は、マユリの抱く二心だ。

――だから優しさは嘘だ

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」5話より)


それを知っていたから、少女たちは祈るのだ。

どうかこの一時だけ
アングレカムの花言葉を私に――

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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

水葬銀貨のイストリア ゆるぎルート

3月発売枠としてちょこちょこ進めていたのがこのゲーム、水葬銀貨のイストリア。
誤字脱字がひどくて放置しかかっていたけれど、どうやら修正パッチが出ていたらしい。おそすぎ

ストーリーとしては、過去に同じ事件に巻き込まれ、同じトラウマを持つ主人公たちが、どうやってその「過去」を乗り越えるか――というもの。
全体的に胸糞悪い登場人物が多いのが、このゲームの特徴っぽい?



メインヒロインぽい玖々里ちゃんは最後にすることとして、攻略したのは直情型元気系後輩・小不動ゆるぎ嬢から。
金髪ツインテガールかと思いきや、私服のときにはサイドポニーに変わっていたりして、実はそっちのほうがかわいい。

CVは、桜似あかり。
白崎和葉(空のつくりかた)の人らしい。
他の作品のときにはぜんぜん思わなかったけれど、ちょっと鼻にかかったようなこの声は、ゆるぎちゃんにはハマっている。かなり好き

---

玖々里を裏切り、小夜を救い出すという使命感を捨て、生きる意味も生きてきた意味も見失っていた主人公を救い出せるのが、ゆるぎちゃんの魅力。
そうだね、路地裏での祈吏とのシーンだね。

二人とも、主人公をヒーローだと憧れ、尊敬していた。
けれど、憧れが膨らみすぎた末の失望を感じたとき、祈吏は怒りをぶつけてきて、ゆるぎは抱きしめてくれるのだ。
対照的な二人のリアクションは、ゆるぎちゃんの包容力をさらに際立たせてくれる。

しかし残念なことに、個別シナリオには、彼女の魅力はあまり反映されていなかった。
というか、個別はゆるぎちゃんとイチャイチャするだけのオマケっぽい。
夕桜と主人公を取り合うとか、テーマにはまったく関係ないエピソードだけれど、まぁ楽しかったからいっか!

次回、玖々里ルート。(えっ?
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[視聴中] ゲーム
水葬銀貨のイストリア

ChronoBox まとめ

「恒例となった、お待ちかねのゲームの時間よ。今回の中身は何かしらね」
「何が入っているのか、わくわくしない?」


そう言って差し出される箱が、クロノボックス。
そして、そうなることがわかっていながらも箱を開けて殺されてしまうのが、私。
久々に記事を書くギャルゲーは、クロノボックスです。

いわゆるループものなのだけれど、ループのたびに世界が変わっていく。
それをヒントに、謎解きできるもんならしてみなさいよ? な、サイコホラーサスペンスです。
細かい考察は、どこかほかのレビューサイトに譲ってしまいます。
以下、まとめ。



シナリオ

とてもよく練り込まれている。
伏線の張り方とその回収の仕方は秀逸。
中盤までの「はっ?」「どういうことなの……?」な謎が、すべて一点に収束していく様には、カタルシスを覚えるほど。
謎解きがメインのシナリオではないけれど、この感覚はひぐらしに似ているかも。

とは言え、いくつかの謎や疑問点は、まだ残っている。
世界観設定にSFが混じっているため、私にはうまく咀嚼しきれていない部分があるかもしれない。
たとえば、「屍」の正体とか。
(最初のエンディングで結ばれた樺音ちゃんは、いったい何者?)

シナリオはよく作られていると思うけれど、グランドエンドに相当するエンディングが、個人的にはあまり好みではない。
(ほかのレビューではとてもよかったと書かれていることもあるので、本当に個人的な好みだと思う)
だって、ちょっとキレイにまとめちゃいました! な雰囲気出してるけど、結局はジサツしちゃってるんでしょう?
樺音ちゃんは那由太くんの幸せを願ってその身を捧げたのに、その幸せは天国にしかありませんでした! だなんて、あまりに救いがなさすぎる。
いや、たしかに客観的に合理的に考えれば、那由太くんがリアルワールドで幸せになれるとは到底思えないけれど、そこをなんとかするのが良い物書きのはず!
(あれ、もしかして悪い子を目指してた? にわかわ?)

……とかなんとか言っているけど、これが凡庸な「ハッピーエンド」を迎えていたら、私は「ご都合主義www」とか言って叩くんだろうなぁ。
救いようがないですね?

テキスト

読み物としての必要十分を満たしている。
とりわけ光る部分があるわけではないけれど、最近やっていたイストリアとかいうゲームのテキストがひどすぎるせいで、非常に安心して読み進められる。

グラフィック

立ち絵に差分がないのは残念だけれど、クオリティそのものは普通に良い。
そして、このゲームの売りの一つである危険度(グロシーン)も、同じクオリティを保ち続けているところは評価できる。
つまり、グロCGがきちんとグロいってことだね!
(残念ながら脳みそやはらわたが飛び出ちゃってるところを現実に見たことがないので、リアリティがある絵なのかは不明です)

十字架にかけられた彼女の一枚絵は、グロCGのはずなのになぜだか神々しさすらまとっていた。
御伽ちゃんではないけれど、あれにはぼっきっきしちゃいそうでしたね!?

そして、シナリオ上での伏線を、グラフィックにも緻密に反映してきている点も好印象。

Hシーン

抜きゲー並みのクオリティ。
シーン中の女の子の言葉遣いが全体的に頭悪い感じなのが、とてもよいですね!
2017年のHシーン淫語大賞は「スケベ」になるはず。間違いない

システム・音楽

不足なし。
バックログからのシーンジャンプって、やっぱりいいものですよね……。

総評

2017年5月発売枠。
ブランド処女作だけあって、非常に手がかかっている作品。
世界観にのめり込んでしまい、一息に終わらせてしまいたくなる。
(ただしHシーンが続きすぎるせいで、休憩せざるをえない)

ただ、謎が解けるカタルシスはあるものの、読後感はあまりよくない。
もしかしたらこれは鬱ゲーなのかもしれない。
これなら私はノーマルエンドでぜんぜん構いませんよ!

私の評価は、ギリギリ秀作に届かない★3つ、良作評価。
批評空間ベースでは、77点をつけておきます。

大切な言葉。
自分の感情を、わかりやすく言い表した一言。
希望。夢。未来。幸福。
それらを真っ直ぐに繋ぐ、たった一言。
「結婚しよう」

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ゲーム [★★★☆☆]
ChronoBox

あきゆめくくる まとめ(お詫び)

お詫びです。

沙織ルートを攻略し、レビュー記事を書いたのですが、消えました。
ショックで半年寝込みました。
起きたころにはプレイ時の記憶がだいぶ薄れておりましたので、再プレイするまで感想文は書けません。
なので、一旦ここで締めます。

シナリオそのものは、なつくるよりは面白かったものの、はるくるは越えられていなかったような……?
でも、はっちゃけた日常シーンのクオリティがヤバすぎた記憶は鮮明なので、とりあえず★4、傑作評価をつけておきます。
批評空間ベースでは80点です。
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ゲーム [★★★★☆]
あきゆめくくる

あきゆめくくる キスルート

あきくる、正ヒロインの3人目は、「人間外」な毒舌系ロリっ娘・土織キス嬢を攻略。
このゲーム随一のツンデレヒロインでもある。

CVは、沢澤砂羽こと桐谷華。
野々宮藍(春季限定ポコ・ア・ポコ!)、真鍋計(あえて無視するキミとの未来)といった伝説の残念系ヒロインをはじめ、あずま夜(はつゆきさくら)、小太刀凪(大図書館の羊飼い)、クルル(ワールド・エレクション)等々でもお世話になっている、私のお気に入り声優さん。
はっちゃけロリボイスな演技は、いい感じにぶっ飛んでる土織さんのキャラにぴったりだと思います!

ウィルスによる改造人間であるキスの脳では、スパインという物質が作られ続けることにより、PCでいうところの「メモリー」が永遠に増え続けるような現象が起きているらしい。
その容量は、宇宙を丸ごとシミュレーションしてしまえるほどだとか(!)。
そんな「人間外」な彼女のお話は、恋そのものにスポットを当てたラブコメ。

---

「宇宙の終わりについて知ってる?」


ビッグバン以降膨張をし続けている宇宙と同じく、キスの頭の中にも空白が増え続けている。
ビッグリップ現象――宇宙の終わり方のひとつと同じことが、キスの頭の中でも起ころうとしていた。

ビッグリップは、宇宙の膨張速度が一定速度(光速)を超えることで、すべての物質が形を保てなくなり、素粒子レベルで崩壊する現象のことである。
それを防ぐには、膨張速度を抑制するような大きな重力が必要なのだという。
頭の中がどんどん間延びしていくような恐怖のなかで、キスは思う。
広がりたい。恋をしたい。

「覚えておいて……」
「きっと、恋は重力だってこと」


---

ストーリーそのものはシンプルではあるけれど、キスの女の子的魅力と、世界設定についての謎解き要素が絡まりあい、やや複雑なお話になっていた。
そもそも、ワスプさんとの関係性が、柚月ルートとは違う。
キスがワスプ化したのは、キスの空白にワスプさんが入り込んでしまったせいかと思ったのだけれど、そうじゃなかったし。

キスという人格は、ウィルスから作り出されたもの(現在の観測により、過去が決定される)。
だから、空白の存在であるワスプさんにドゥルキスを「感染」させることにより、死から逃れようとした。
主人公のワスプ化は、キスに感染された主人公が、自分の肉体をキスに譲り、ワスプさんを自分にしようとした――と、たぶんこういうこと。たぶん。

そして、今回のルルランは、なぜかループから脱出していた。
うーん、歩ルートとの共通点、柚月ルートとの違いはなんだ?
よくわからんですよー……。

しかし、キスの唐突なデレの破壊力ったらなかったね!
初エッチのときのキスちゃんはちょっと頭がおかしくなっちゃってたけど、こっちの頭までおかしくなっちゃいそうだったもの。
これぞ正統派ツンデレです。間違いない。

……すみっこのゲームで正統派なんて言葉を使う日が来るとは思わなかったよ!?

「ん~。まぁ、いいでしょう。みんなでお弁当を楽しく食べて、おいしい、おいしい、と言い合うぬるいラブコメも世の中には多いですからね。ケッ」

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ゲーム [★★★★☆]
あきゆめくくる

あきゆめくくる 柚月ルート

あきくる、メインヒロインの二人目は、エロス担当な天然ピンク・小高柚月嬢を攻略。
天然エロスのくせに「保持者は去勢すべき」というセンセーショナルな信念を持っているという、ヤマアラシのジレンマみたいなヒロインである。

CVは、杏子御津。
東雲希(はつゆきさくら)、青海衣更(恋と選挙とチョコレート)、九鬼紋白(真剣で私に恋しなさい!)等々でお世話になっている声優さん。
この人の声は久々に聞いたけど、舌っ足らずなとろけるボイスはやっぱりかわいい。

柚月ルートでスポットが当たるのは、去勢ではなく、WSPさんの正体について。

---

もし、WSPさん達を人間の姿に戻して、救うことができたなら、人を殺した、という罪の意識を自覚できるかもしれないって。
これだけの人を救えたという実感があれば、これだけの人を殺したんだってことを実感できるかも。
実感したいから、私を取り戻したいから……。
「だから、私はWSPさん達を救いたいの……」


「保持者」としての能力を用いた歌声で、200人以上が死ぬ事件を起こしてしまった――
その罪悪感から、柚月は去勢を考え、ワスプを救いたいと願うようになる。

ラブコメをはじめたのは「ワスプに楽しい雰囲気を伝えることで、新しい可能性を与えるため」。
そして、ラブコメもといエロコメを経て、ワスプに変化が見られる。
ループから抜け出し、意思疎通ができるようになるのだ。

しかし、その結果、ワスプの正体も明らかになる。
なんと、彼らは人間の可能性の残骸を乗っ取った宇宙人だったのだ(!!)。

彼らは(地球上の生物と同じように)生殖を行いたいという意志を持つ。
その過程では、もちろん他者を攻撃する可能性もある。
ならば、人間の歴史にあったように、侵略者は排除するしかないのだろうか?

「ちゃんと考えようよ、ちはやくん。……私達が始めたラブコメなの。私達のラブコメでこうなったんだよ」
「だから、最後までちゃんとラブコメをしようよ。みんなを殺して終わりなんてラブコメは聞いたことないよ。そんな尖ったラブコメは土織さんだって否定すると思うの」
「ラブコメを続けるべきだと思うの! それにラブコメって葛藤だと思う!」
「わっ、私だって……パンツをはかない時は悩んだの。ちはやくんを好きになる時だって悩んだの。去勢のことだって。……おもしろく葛藤しようっていうのがラブコメだと思うの」


そうして、彼らは自身の意思と覚悟を持って、ラブコメを続けることを選択する。
幸せになってはいけなかったかもしれない自分たちが、幸せになる覚悟を決めたように。

「私が私だ……」


---

しかしまぁ、歩ルートほどではなかったにせよ、ゆずたんの織り成すラブコメもすさまじかったなぁ。
露出狂となって野外オナニーにふけってしまうくだりでのテキストには、感動すら覚えるほどだったよ。

ところで、ループしなくなったのはワスプさんだけなんですね?
歩ルートとは違い、街全体の量子的可能性は死んだまま。

とは言え、歩ルートでの出来事だったはずの腕もぎりが今回も発生していたし、ここって並行世界っぽい?
なんだか土織さん(別人格)が言ってた、世界シミュレーション説が現実味を帯びてきますね?
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あきゆめくくる 歩ルート

あきくる、メインヒロインの一人目は、幼馴染な伊橋歩ちゃんを攻略。
「~~だわ」な口癖は、はるくるの静夏にそっくり。
こういう子、好きなの?

CVは、有栖川みや美。
狭霧紫穂(なつくもゆるる)、風戸依瑠(この大空に、翼をひろげて)等々、結構お世話になっている声優さん。
だけれど、今回のみや美さんは、あまり好きじゃないほうのみや美さんだった。
なつくるの紫穂のときはめっちゃお気に入りだったんだけどな。
ジブリール4の葵ちゃんのときみたいな、ちょっと無理しておしとやかさを演じようとしているところが気になったかも。

---

「――わたし達は蕾の状態で刈り取られたんだわ」


保持者と非保持者との「闘争」を指揮してきたリーダーだった彼女のお話は、彼女の犯した罪に科された「呪い」について。

「保持者」に限らず、特出した才能を持つ人が「為すべきを成した」結果に後悔する話は、ままある。
(キラ☆キラのきらりも、そのことに悩んでいたと思う)
歩の場合、他人の感情を把握し導くことに長けていたから、必然的にリーダーになった。
その結果、知っている人、知らない人、大勢が死ぬことになる。

「どうして? どうして、わたしは生きているかしら? みんなを死地に向かわせておいてわたしが生きてるなんて……」
「……そんなの絶対に間違っているわよね?」
「わたしのせいでこれ以上、誰かが死ぬなんて……。そんなのもう耐えられない。どうしてこんなことに……。わっ、わたしは……もう限界だわ」


歩の「呪い」は、帰還兵のPTSDと言われるものと同じだ。
主人公が偏執していた「膝から流れる鮮血」の描写は、彼女の心の傷そのもの。
そのPTSDをサトリに利用され、歩は過去を変えたいと願う。
闘争が終わった日に自殺するために、過去に戻りたいと願うのだ。

「わっ、わたしは! わたしはただ、ただ咲きたかっただけだわ! 蕾のままで終わりたくなかっただけだわ! その結果が……。ちはちはの言う通りなら、わたしはやっぱり死ぬべきだわ」


そうして、歩は過去へと戻る。
しかしそれはサトリの作った「運命改変装置」によるものではなく、主人公の能力によるもの。

主人公は「脳が機能を停止しても意識を保つことのできる」不死身の肉体の持ち主。
彼の意識=心は、彼の肉体の外にあるのだ。
彼は肉体の一部を物理的に世界と同化させる(ことを観測する)ことで、精神的にも世界と同化できるようになった。
だから宇宙のどこかを飛んでいる過去も観測できるし、その観測結果によって世界を変えることだってできる。
(この要素は、たぶんなつくるとリンクしている。光人間的な意味で)

そして、主人公は闘争が終わる日の歩に――一緒に死のう、そう誘う歩に言うのだ。

「僕らは後悔する。だけど後悔して生きて行かないか?」
「いいか、よく聞けよ。どんなにつらくても僕らには――ラブコメがある」


このゲームをやってない人にはまるで意味不明なセリフだろう。
これほどまでに頭が悪そうなセリフで、しかしあれほど感動的なシーンが存在できるこの世界の可能性に、私は震えた。
そう、愛とは育むものであり、恋に努力してこそラブコメが成立するのだ。

「僕らがちゃんと生きていくにはラブコメが必要なんだ。好きであることに努力できたら、きっと乗り越えられる」


このセリフの正しさは、これまでの歩ちゃんが証明している。
主人公に女の子として意識してもらいたいがためだけに、マンコを見せることを決意してノーパン登校を決行した歩ちゃんが!
なのに主人公には見せられないまま、なぜかさおりんにびしょ濡れマンコを見られてしまった歩ちゃんが!
そして、まんチラどころかぱいチラまですることになってしまった歩ちゃんが!
嗚呼――過去にこれほど身体を張ったギャルゲーヒロインがいただろうか?

そして、ループから抜け出したルルランで、今の歩ちゃんなら、笑顔で言えるはずなのだ。

「ホント、ラブコメって地獄だわ」


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歩ちゃんが繰り広げてきた闘争のエピソードに興味があったけれど、そこは期待外れ。
けれど、歩ちゃんの感情がさらけ出される「いつ転向した?」からのくだりは神がかっている。
そして、個別ルート冒頭のノーパンエピソードはマジでヤバスギですね!?

なぜループから脱出できたのかは、次回以降にわかるはず。たぶん。
次回、柚月ルート。
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