君と彼女と彼女の恋。 その5(君と彼女の恋。/美雪トゥルーエンド)

美雪は、望んだとおりに世界を作り変えることができた。
絶対にバレるお外でエッチしても大丈夫だし、喉から血が出るまで主人公に好きって言わせることだってできた。

すべてが彼女の思い通りになる世界。
すべてが彼女の思うようにしかならない世界。
彼女は一人ぼっちだった。

しかし、私だけは、彼女の孤独を埋めることができた。
私は世界の外側にいて、彼女の思い通りにはならない唯一の存在だったから。

だからこそ、私が彼女の間違いを正さなければならなかった。
それは私にしかできないこと。

---

最初から美雪と心一は両想いだった。
なのに結ばれないのは、ほんのちょっとだけ、二人が臆病だったせい。
一歩を踏み出すことができる、ほんのちょっとのきっかけが足りなかったせい。

なのに私は間違いを犯した。
ハッピーエンドに、セカイのアップデートなんて必要なかったのだ。
私よりもずっと早く、美雪はそのことに気づいていた。
気づいていながら、しかし彼女はそれを正すことができず、マイナスにマイナスを掛けるように、さらなる間違いを犯してしまうのだ。

「もとのセカイにもどれば、セーブもロードもきかないの」
「いちどきりのこいなの」
「しっぱいしたら、おわりなの」
「それが、ミユキは、こわいの」


ようやく過ちに気づいた私は、固く決心した。
彼女は、私を好きだと言ってくれた。愛していると言ってくれた。
私にはクリックしかできないけれど、それでもずっと彼女の気持ちに応えたいと思っていた。

「私は、信じたい!」
「君が、私を、好きになってくれるって!」
「そう……信じたいの! 信じられるはずなの!」


彼女の気持ちに、間違いはない。
私の気持ちにも、間違いはない。

私はそれを証明するために――本当は弱虫なままだった彼女に代わり、あの日の間違いを正すために――本当の気持ちを伝えたのだ。
それだけが、私が彼女にできる、たった一つのことだったから。
彼女は本当にうれしそうに笑って、泣きながらこう言った。

「正しいことを、しましょう」


---

失敗したら取り返しのつかない想い――
たった一度きりの恋――
もとに戻った世界で、「彼」と「彼女」は、それを手に入れた。

二人きりのオープニングムービーには、心一と満ち足りた日々を過ごす美雪が生きている。
それこそが、私が望んで選択した「彼女」の幸せだ。
そうに違いないはずだった。

……なら、どうしていま私は泣いているのだろう?
私が流している涙は、いったいなんなのだろう?
好きな女の子が、ずっと望んでいた幸せを手に入れた。
だったら――そう、これは嬉しい涙だ。
嬉しくて、私は泣いているんだ。そうに決まってる。そうじゃなくちゃおかしいよ。
だって、私は正しいことをしたんだから……。

---

「彼女」は、もう「君」を憶えてはいない。
関連記事
category
ゲーム [★★★★★]
君と彼女と彼女の恋。

Comment

Trackback

http://otabes.blog.fc2.com/tb.php/916-a1099011