Maggot baits まとめ

シナリオ

誰かを助けられるヒーローになりたいと思っていた。人生のすべてをかけてきたはずだった。
なのに、誰の命も救えなかった――
その事実は、重く重く主人公の心を蝕み、少女の今際の台詞すら、彼を苛むようになっていた。

生きているとつらいことはあるし、苦しいこともある。
でも、私たちは軽々に「助けて」なんて言わない。なぜなら、あなたも知っているからだ。
(甘えるな)(みんな一緒だ)(みんな頑張ってるんだ)(泣き言を言うなら、お前なんか……)

消え去りそうな精神の中で、もう誰も自分を助けにきてはくれないのだと悟った。
自分が信じてきた、善意や愛情で支えられる人間の世界。それが嘘っぱちだったのだと、誰かから思い知らされたような気がした。
これが世界だ。この身勝手で際限のない欲望と、弱者を躊躇なく踏み躙ってやまない悪意こそが。

これが死なのだと思った。何もかも消えていく悲しさだけがそこにあった。
だからこそ、瞳子は最後まで意識の中で手を伸ばし続けた。そして静寂の中で叫び続けた。
助けて――誰か助けて、と。


それでは「WORLD END ECONOMiCA ep.2」より、主人公・ハルとシスター・理沙の会話。

「世の中は理不尽だ。正義を追いかける奴があっさり罠に嵌められ、詐欺を働く奴らだけがのさばっている。それじゃあ、神ってのはどこにいるんだ?」
「聖書に書いてあるわよ。神は常にいまし、昔にいまし、後に来られる方」
「そんな……子供だましではなく」
「本当のことよ。神は常に私たちとともにいらっしゃる。でも、確かにハルの言いたいこともわかる。実際、重い荷物を運ぶ時にひょいと手を貸してくれたりはしないものね。
 だからね、ハル。あなたが困っている誰かの元に駆けつければ、その誰かはあなたの側に神を見るでしょうね。それこそ……あなたには見えなくても。
 これが、神は常にあなたの側に、という言葉の、あまり語られないもうひとつの、でもとても大事な意味」


キャロルに――瞳子にとって、彰護こそが神だった。
決して訪れることがなかったはずの救いの手を差し伸べてくれたのだから。
彰護は瞳子の命は救えなかった。けれど、確かに彼女の魂は救われていたのだ。
たったそれだけ、たったひとひら伝えたかった言葉のために、二人はどれほど遠回りをしたことだろう。

「この世にある、綺麗なこと、美しいこと……」
「それを嘘にしてしまうのは、いつだって私たちの方だから」


この腐敗したヘドロの底みたいな世界のなかで、真実の輝きはあまりにもか細く、儚い。

テキスト

三人称で書かれているこの文章は、いまいちみずみずしさに欠ける。
感情表現が乏しい、とでもいうのだろうか?
まぁ主人公がほとんど心を動かさない人間だから、仕方のない面もあるような気もするけど。

それでも、バトルシーンでの「ただ出来事を描写する」テキストはちょっと物足りない。
唯一燃えたバトルが、グランドルートでのグロリアvsサンディ。
あのシーンは、グロリアの「妖蛆への恐怖」という感情も、それを乗り越えようとするサンディのストイックさも、生き生きと描かれていたね。お気に入りです。

グラフィック・Hシーン

えっちなのたくさん。9割9分凌辱かリョナかグロ。
あ、ただの触手プレイかぁ……とか安心してると、触手が女の子のお腹を突き破って出てきたりするから、マジで気が抜けない。

グロゲーと呼ばれる作品は数多くあるけれど、いくらテキスト上でグロいことをしていても、グラフィックが追いついていないことが多い。
その点で遠慮会釈ないグロCGを備えているのは、例えば「ゴア・スクリーミング・ショウ」とかか。
あれも内臓はっちゃけ解体エンドが多かったけど、それでも内臓にはモザイク入ってたからねぇ。
臓物ブチ撒けて死んでる女の子の一枚絵を、モザイク無しで実装しちゃうこのゲームはやっぱりスゴい。

まぁ媚薬プレイがほとんどなのは、ちょっとどうかなーっと思った。
たまには普通に凌辱してほしかったよ?
媚薬って、女の子を快楽堕ちさせるときの男の(あるいはシナリオライターの)甘え、みたいなところがあるからね。

声優

毎度のことながら、熱演すぎる。
そして、CV:御苑生メイの無名の魔女ちゃんがかわいすぎて、御苑生メイまで好きになりました。
しかし、メイちゃんのスタッフコメントの闇が深すぎる。どうしたの

音楽

BGMはふつう。
OPがムービー含めてとってもクール。世界観を余すことなく伝えてくれます。
……あれ、ムービーは90秒縛りじゃなかったの? いいけどね、別に!

システム

贅沢。いろんなところをカスタマイズできる。

しかし、私が評価したいのは、ゲーム起動時の演出。
大抵のゲームは、「ブランドロゴ(大体ボイスあり)」→「注意事項(たまにボイスあり)」→「タイトル画面(ゲームタイトルのボイスあり)」というプロセスで起動するよね。
なのに、このゲームは「ブランドロゴ(無音)」→「注意事項(無音)」→「タイトル画面(キャラがカッコいいセリフを言う)」というプロセスで起動するのだ。カッコいい!!

総評

ヒロインが生身の人間じゃ、ハードなプレイにも限界があるよね? ←わかる
じゃあ死んでも生き返る女の子をヒロインにして、好きなだけ殺しちゃおう! ←???

原画師であり企画原案にクレジットされている「はましま薫夫」は、女性であるらしい。
私も人のことを言えた義理ではないけれど、なにをどうこじらせたら、こういうゲームを作ろうと思っちゃうのだろうか?
ゲームの内容もそうだけど、制作陣のほうが闇が深い気がするのだ。

この作品のジャンルは「クルーエルノワールADV」である。
ノワールはフランス語で黒色のことだけれど、映画にも「フィルム・ノワール」というジャンルがある。
これら、ハリウッドで昔作られた退廃的な犯罪映画について少し触れる。

フィルム・ノワールとは、息もできないような閉塞的な世界におぼれた主人公たちが、堕落し破滅していく様子を描いた作品群だ。
彼らは最初から人格破綻者だったわけではない。警官や弁護士といった「普通の人間」が、なにかをきっかけに壊れていくのだ。
これらの映画は「誰だってきっかけさえあれば、"普通"という仮面など剥がれてしまうものだ」と私たちに語り掛けてくる。
きっかけは、例えば関東邪法街という狂った都市で、べっとりと死が裏側に張り付いた快楽を与えてくれる女の子に出会ったときかもしれない。
(少なくとも、こういうゲームをプレイしてしまう)私たちは、ぱっと世界が反転すれば、女の子のお腹をナイフでぐちゃぐちゃにしながらエッチしちゃったりするのだ。
(そして、たぶんほんの些細なきっかけによって、CLOCKUPというメーカーのクリエイターたちが、こんなエグいゲームを作ろう! と思い立ってしまったりするのだ)

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26人の魔女たちが悲惨な目に遭うのは、彼女たちが悪いわけでも、男たちが悪いわけでも、妖蛆といったバケモノたちが悪いわけでもない。
ならやっぱり、無名の魔女ちゃんが言うように、世界が悪いのか?

「神なんかに関係なく、人間ってのは元々そういう生きものなんだ」
「この世界がろくでもないんじゃねえ。ろくでもないのは、俺たちの方だってことだよ」


私たち誰しもが臓物に隠している腐った膿を絞り出したのがフィルム・ノワールであり、今作「Maggot baits」なのだ。
私の評価は★4つ、佳作評価です。

Hシーンの方向性は「euphoria」の流れを引き継ぐが、シナリオの雰囲気は「ゴア・スクリーミング・ショウ」とよく似ている気がします。
未プレイなら是非。
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ゲーム [★★★★☆]
Maggot baits

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