WORLD END ECONOMiCA まとめ

シナリオ

シナリオライターは支倉凍砂。狼と香辛料を書いている商業作家の同人作品。
さすがプロと言うべきか、ストーリーの練り込み具合はすごい。

近い未来の月面が舞台ということで、SFに経済小説を混ぜたようなジャンルだが、しっかりと地に足の着いた世界観。
そこで一人の少年が人生における最も大切なものを手に入れる様子を描き切る。
そこには苦悩があり、挫折があり、停滞があり、しかしきっちり成長していく。
その成長と立身出世がうまく噛みあうデキル系具合は、見ていてとても気持ちがいい。

ヒロインやサブキャラも魅力的な人物ばかり。
特筆すべきは、悪役の使い方の上手さ。
筋の通った悪役はカッコイイ理屈もあり、さらにバートンの場合、一概に悪とも言い切れない。
バートンとハルの信念が対立したせいで、たまたま悪役に見えたという解釈だってできるわけだし。

そして、バートンこそが、主人公を成長させる最も重要なキャラクター。
最終的に彼を乗り越えてエンディングを迎えるあたり、出世ものの作品としての完成度は高い。

しかし、どうも私の根が貧乏性なのか、後半になると金額が壮大すぎて、わけがわからないことになってくる。
宝くじで3億円どころか、1千万円当たったって即座に隠居生活を決め込む自信がある私には、兆の位で話をされても、正直ピンとこない。
というか、作中の登場人物もピンときていないから、あんなことになってしまうのだろうけれど。

テキスト

これがこのシナリオライターの特徴なのだろうか、文章がかなりくどい。
同じことを手を変え品を変え、何度も描写する。ハルの内面なんか、特に。
大事なことをわかりやすく、感情移入が苦手な人も引き込むように、なのかなぁ?

そして、第三話で顕著だったように、金融商品のお話なんかはかなりオタク臭い。
私はデリバティブとかスワップとかオプションとかに馴染みのある人間だったからよかったようなものの、まったく知らない人にとっては、第三話の序中盤はかなりしんどかったんではなかろうか。
逆に言えば、だからこそ物語に裏付けが作れて、深みが出るということなのかもしれないけど。

ただし、シナリオを展開させるテキストは読みやすい。
気づけば電気もつけずにディスプレイにのめり込んでいるあなたがいるはずだ。

ギャグ的な意味での面白さというのはほとんどなし。
代わりに、狼と香辛料でのホロとロレンスのように、頭がいい人同士の掛け合いの妙といったものがたっぷりと堪能できる。
これがこのライターの醍醐味なのかもしれない。

キャラクター

どのキャラクターにも信念があり、それがとても格好いい。

私の一押しは、理沙。
二次元ヒロインランキングに入れてしまおうか本気で悩むレベルの、すてきなお姉さん。
本作には挫折する主人公・ハルを導くキャラクターが数人いるが、その中でも最も心に寄り添ってくれるのが彼女。
特に、第二話での迷える子羊だったハルの背中を押してくれる理沙は、本当に神様みたいだった。

クリスもエレノアもハガナも、その気になればルートに入れるだろう、言わば正ヒロイン。
けれど、理沙だけはどうやってもルートに入れる気がしない。
それが理沙が理沙たる由縁であり、理沙がいつでもすてきなお姉さんな証でもある。
手に届かないものって、いつでもキラキラして見えるんだよね。

グラフィック

CGの枚数は、Ep.1、2が各40枚、Ep.3が60枚程度。
これらがすべて日常シーンなのは、すごく贅沢な気分になる。
Ep.1では画力は同人ゲームレベルだが、Ep.2、3では商業作品でも通用するレベル。

背景の都市や空は幻想的でとてもきれい。私好み。

音楽

Ep.1~3ともに、テーマ曲は「岸田教団&明星ロケッツ」。
存在を知っていただけで曲はほとんど聞いたことがなかったけど、アップテンポなロックナンバーは、このゲームの疾走感によく似合っている。
曲はEp.2のテーマ「cause to decide」が一番のお気に入りかな。

オープニングムービーも中の上くらい。
同人ゲームでこれは、なかなかのクオリティなんじゃないでしょーか。

BGMは、そこまで惹かれるものはなかったものの、よくまとまっている。

システム

通常のギャルゲーと同じレベル。
スキップボタンがないので、飛ばしたいときはCtrlキーで。

総評

エロなし全年齢対象の、上質なノベライズゲーム。

このゲームにキャラクターボイスは存在しない。
にもかかわらず、ここまできっちりキャラが立ててこられると、本当にギャルゲーにCVが必要なのか? という疑念すら抱かせてくる。
まぁエロゲーの場合、聴覚からの興奮ってのも重要なポイントなんだろうけど。
このゲームにそれは必要無いし、むしろ声がないほうが会話のテンポや駆け引きの妙といったものが際立つようにも思う。
ついでに安くなるし。

エロなしお色気なし、シナリオ一本勝負でここまで面白いゲームとなると、シュタインズ・ゲートくらいしか思いつかない。
この時間・金額でここまで楽しめるのなら、神作に認定してしまってもいいように思う。
ちょっと甘めではあるけれど、拡散希望ということで、2年ぶり5作目の★5評価です。
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