灰羽連盟 7~9話

7話 傷跡 病 冬の到来

冬が来ても、ラッカはクウのことを忘れられず、悲しみに暮れていた。
そんなラッカの灰色だった羽は、だんだんと黒く染まっていってしまう。

レキ曰く、灰羽には祝福を受けて巣立つことのできる灰羽と、呪いを受けて閉じ込められ続ける「罪憑き」がいる。
そして、レキはまだらの羽を持って生まれた罪憑きなのだという。
街を囲む壁は、いい灰羽にとっては外から護る盾に、そうでない灰羽にとっては外へ出さない檻になる。

ラッカは本当に罪を犯してしまったのだろうか?
だから羽が黒く染まっていってしまうのだろうか?
自分で羽を切るラッカを見ていると、とても悲しい気持ちになるよ。
それはきっと、どうしようもないことなのだろうけれど。

私はずっとこの街は楽園なのだと思っていた。でも、みんなこんなにも優しく、だれかのために精一杯生きているのに、悲しいことは起こる。呪いを受け、苦しむ者もいる。
灰羽ってなんだろう……。


8話 鳥

「壁も、この街も、灰羽のためにあるんだってみんな言う。でも、灰羽は突然生まれて、突然消えてしまう。私、自分がどうして灰羽になったのかわからない。何も思い出せないままここに来て、何もできないままいつか消えてしまうんだとしたら、私になんの意味があるの?」
「意味はきっとあるよ。それを見つけられたら、きっと――」


自分の存在意義を自問自答するラッカ。
クウのベッドとカエルの置物をもらい、冬服を買いに行っている間にも、その問いはまるで羽に広がる黒い染みのように、消えることはなかった。

「私の居場所なんて、どこにもない……。私なんて、いなくなっちゃえばいいんだ」


ラッカが落ちこむのは、単に「自分はみんなと違う」という疎外感のせいだけじゃない。
言ってしまえば、だれもが持つ、根本的な問い。それは当然、私たちも持つもので。
――どうして私はここにいるんだろう?
――その答えが見つけられないままここにいる自分に、なんの意味があるんだろう?

逃げ出したラッカは、カラスに導かれて西の森の井戸へと行く。
そこにあったのは、カラスの死骸と、いつか見た夢。
壁と、森と、井戸の底。
なんだか村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」みたいなお話だなぁ。

「あなたが私を呼んだの? 鳥の姿をしてるけど、ずっと昔、どこかで私、あなたを知っていた気がする……」
「私、自分の名前も思い出せないの。灰羽はみんなそうなんだって。だから私、あなたがだれなのか思い出せない。ただ、大切なだれかとしか……」
「でも、あなたはそばにいてくれた。鳥になって、壁を越えて、私は一人じゃなかったんだって伝えようとしてくれたんだね」


9話 井戸 再生 謎掛け

「鳥が私に伝えてくれたのは、私が繭の中で見た夢の、本当の意味なんです」
「ここじゃないどこか知らない場所で、私はずっと一人ぼっちなんだと思いこんでいました。自分がいなくなってもだれも気にもしてくれないって。だから私、消えてしまいたいと思ったんです。そしたら私、空にいる夢を見て……。でも思い出したんです。夢の中に鳥がいました。鳥の姿になって呼び戻そうとしてくれた。私は一人ぼっちじゃなかった。なのに、私……」


井戸の底で、ラッカは知るべきことを知る。
忘れたものは、壁の向こうから鳥が運んでくるから。

「罪憑きってなんなんですか? 私は罪人なんですか? 私が見た夢は、本当のことなんですか?」
「それを確かめる術はない。繭の中で失ったものは取り戻せない。誰かを傷つけたとしても、その者と再びまみえることはない」
「私が罪人で、本当はここにいちゃいけないなら、どこか私のいるべき場所へ連れて行ってください。ここは、この街は、私には幸せすぎます。みんな優しくて、だれからも大事にされて、居たたまれないんです。もし私の見た夢が本当のことなら、私、帰りたい……。帰って謝らなきゃ……」


自分がここにいる理由は未だにわからない。
けれど、ここにいちゃいけない理由ならわかる。
自分はだれからも優しくしてもらう資格なんかない。
だって、大切な人を傷つけたまま、そのことすら忘れてしまっていたのだから。

けれど、レキの優しさは、本当に温かかった。
ここからいなくなったら、きっとこの人まで傷つけてしまう。
これ以上罪を重ねたくない、この温かさを手放したくないと、ラッカは思った。

「私、消えたくない……」
「消えたりしない、大丈夫だから」
「ここにいたいの。私、どこにも行きたくない。ここにいて、いいよね?」
「もちろん。ラッカはここにいていいんだよ。ラッカは祝福された灰羽なんだから」


ラッカの罪は、羽から消えていた。
その祝福は、オールドホームの灰羽たちが与えたものなのかもしれない。
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