SWAN SONG まとめ

--- シナリオ ---

完成度は非常に高い。
エロゲーのテキストというよりも、普通の小説のような印象を受ける。

起こる事件やイベントなどは単純でわかりやすい。
けれど、その行動に至る登場人物の思考、心理を追うのは難しい。
それは、私が大災害という非日常の舞台に経験がないせいでもあり、私が他人の気持ちを想像したり共感したりすることが苦手なせいでもあると思う。
だが、おそらく最も大きな理由は、このシナリオがとても詳細に登場人物の心理を描写する反面、その裏を読ませようとする書き方をしているせいだろうと思う。

群像劇という形式を取っているこの作品では、複数の登場人物の視点で物語が進む。
そして、あろえについてはまったく語られない。
あろえはとても重要なキャラクターなハズなのに。

彼女については、公式HPに「プレ・スワンソング」として震災前のショートストーリーが公開されている。
なかなか面白いエピソードだったね。
ゲームに収録してもいいくらいのクオリティだと思うのだけれど。

八坂あろえについて
これは他所で書かれていて納得してしまったのだけれど、他の登場人物の欠点を詰め合わせた象徴的な存在として、自閉症の少女八坂あろえは描かれているという。
ひとりでは生きられないから社会を作り、孤独から身を守ろうとして見栄を張り、他人がわからないから自己に埋没する。
人がその欠点に押しつぶされて個を保てなくなったとき彼女も死に、うまく共存できたときは彼女も笑う。

「白鳥は死ぬ前に一声だけ鳴く」「その鳴声はその生涯で最も美しい」
こういう伝説があるらしい。知らなかった。
教養がないとこういう時に面倒だ。

この作品だと、白鳥はあろえで、その歌は継ぎ接ぎのキリスト像、と考えるのが自然かな。
他の登場人物の可能性もあるけれど、白鳥に喩えられるほど美しい死に様を見せた人はいなかったもんね。

あろえの歌が本当に美しいものだったのかどうか、私にはよくわからない。
けれど、心を表現する術のない彼女の鳴声をどう感じるかは受け手に任されてしまっているし、私は人間はその死に際が最も美しくなれる可能性を持った瞬間だと信じている。

--- キャラクター ---

それぞれのキャラクターの個性が良く考えられて描かれていた。
キャラクターの性質がそのままシナリオに直結しているからね。

一番わかりやすかったのは、狂気に当てられた悪役としての鍬形だね。
別に悪じゃないんだけれどさ。
何度でも言うけど、鍬形に必要だったのは柚香でも希美でもなく、雲雀だったんだよ。

そして、柚香も少し変わった登場人物だった。
司と付き合うは付き合うけれど、ふたりはおそらく永遠にわかり合うことはできないだろう。
ふたりともよく似て、とても内向的なんだよね。

--- CG ---

絵のタッチは少し独特かな。特に鼻の描き方。
私は好きでも嫌いでもなかった。

立ち絵はなく、表情をカットインとして入れてくる。
その演出はよかったね。
背景などの細かいカットインも多かったし、グラフィック的なクオリティは比較的高めだと思う。

グロ描写のCGがほとんどなかったのは不満。
まぁそういうゲームとは違うのだから仕方ないのかもしれないけれど。

--- その他 ---

声優
特筆すべきことはなかった気がする。

音楽
普通。
BGMを使わないことでの場面演出が多かったな。
それと、オープニング曲はもう少しなんとかならなかったのだろうか。

Hシーン
それ目的では使えないかな。
セックスを物語に含めることでリアリティを出すためだけに、Hシーンは入っていると思って良い。

システム
このシナリオライターの特徴として、一文がものすごく長くなる傾向にあるから、そこに配慮してほしかった。
わかりやすく言うと、テキストが読みづらい。
それと、音声再生中に次の文章へ進むと台詞が切れる。
この2点以外不満はありません。

--- 評価 ---

テキスト的な意味でのボリュームは少なめだけれど、内容は盛りだくさん。
エロゲーを作るつもりだったというよりも、ノベライズゲームを作ったらたまたまエロゲーになってしまった、といった風情の作品。

完成度はとても高い。
ただ、人を選ぶ作品であるのには間違いない。
おそらくこのシナリオライターは、ノーマルエンドのほうを主眼に物語を書いている。
なので、処女厨とハッピーエンド厨には合わないと思う。

あまり鬱ゲーと言われる作品を多くプレイしてきたわけではないけれど、このゲームの鬱な感じを超えられる作品はなかなかないと思う。
トゥルーエンドだって、バッドエンドと比べて変わったのは「一見平和になった」というだけで、登場人物の人間性は何も変わっていない。
彼らは変わらず欠点を持っているし、変わらずわかり合うことはできない。
でもそれが現実であり、人生なんだよなぁ

個人的には、文庫本みたいな形で枕元に置いておきたい作品。
寝る前とか、気が向いたときに気に入った部分だけパラパラ読み返したい感じの。
そんな「読ませる」エピソードがいっぱい散らばっていたね。
鬱ゲー枠でこれを超える作品はあるのだろうか、★4評価です。
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