FLOWERS -Le volume sur hiver- (冬篇) その1(シナリオレビュー)

冬編をやろうと思っていたら夏になってしまった。
なので、エアコンをガンガンで冬っぽくしてプレイ!

四季4部作の最終章の主人公は、春編と同じく白羽蘇芳。
残された七不思議のふたつ、「真実の女神」「アガペのタルパ」の謎解きを通して、消えてしまった勾坂マユリを追うストーリーとなっている。

この記事では勾坂マユリにスポットを当て、この作品の根幹である七不思議である、「マユリが真実の女神に攫われた理由」を探ってみたいと思う。
なぜ彼女は想いを通じ合わせたはずの蘇芳になにも告げずに去ったのか?
なぜ彼女は「シオン=バスキア」と「勾坂マユリ」の二足のわらじを履かなかったのか?
(たとえばアミティエたちにマザーエルダーのことを打ち明け、淡島家の屋敷から学院に通うことはできなかったのか)

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結論から言えば、マユリが淡島邸から学院に通うことも不可能ではなかったと思われる。
(学院側からしてみればバスキア家の弱みが明らかにされることは好ましくないだろうが、マユリが口止めされている描写は見当たらなかった)
しかしそれができないのが、マユリの弱さだった。

"言ったでしょう、人は醜いものだと"


この作品群の根底には、秋篇での譲葉も、蘇芳のタルパである義母も言っていたこの思想が根付いている。
そして、マユリにとってもそれは真実だった。

ここでマユリの抱えていた心の傷についておさらいしておく。
マユリの両親は彼女が10歳の頃に離婚し、父親に引き取られた彼女は家政婦に育てられていた。
しかし、どうしても母が恋しくなってしまったマユリは、一人で母に会いに行く。
そこで彼女は離婚の真相――母親の浮気という真実を目の当たりにしてしまう。
そうして心に深い傷を負ったマユリを献身的に癒やしたのが、彼女の育ての親とも言える家政婦だった。
そんな彼女にマユリは恋心を抱くが、その恋が実ることはなく、逃げるようにして全寮制であるアングレカム学院へとやってくる。
そこで知り合ったのが、想い人だった女性を彷彿とさせる少女――花菱立花であった。

あんなに優しくて大好きだった母親が、父と自分を裏切っていた――
幼かったマユリは、真実を追い求めたばかりに人間の醜さを知ってしまったのだ。
彼女にとって真実とは恐ろしいものであり、二心は忌むべき醜さだった。
だが、自分の心の中にもその醜さがたしかにあることを、彼女は知っていた。

立花に想い人だった女性を見ていたこと――
その想いを蘇芳に向けたこと――
そしてなにより、女の子を好きになってしまったこと――
だからこそ彼女は、自分の心の内を明かすことを人一倍恐れていたのだ。

そんなマユリの懊悩すべては、母親に端を発したもの。
すべてを受け入れて愛してくれるはずの存在に拒絶されたトラウマが、彼女を臆病な少女に変えてしまっていた。
蘇芳がどれだけ優しかったとしても、「失恋した」という打ち明け話をするのが限界で、「お母さんがほしい」などという心の弱さは見せられなかった。
だから彼女はアミティエにはなにも告げず、自分の本当に弱い部分は隠したまま、「攫われる」ことを選んだのだ。

マザーエルダーは孫を無条件に愛していたし、マユリは無償の愛を求めていた。
マユリにとって「シオン=バスキアになる」という行為は、「勾坂マユリ」が失ってしまったものを取り戻す行為だったのだ。

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結局、マユリは最後まで自分の弱さを克服することはできない。
「真実の女神」が消えるそのときまで、彼女は学院には帰ってこないのだから。

人間は醜い存在である。
そんな「本当のマユリ」を知って、それでも蘇芳と立花は温かく迎え入れる。
彼女たちは友人であり、恋人であり、家族であり――アミティエなのだから。
そうして勾坂マユリは、かつて失ってしまったもの、それ以上のなにかを手に入れるのだ。

「わたしたち、三人のアミティエで佳かったわね」
「一人が倒れたとき、アミティエの一人が支えてくれれば佳い。けれど、寄りかかって二人とも倒れてしまったら――」
「わたしが二人とも抱き起こすわ! だからアミティエは三人じゃなくちゃね!」

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