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宇宙よりも遠い場所 12、13話+まとめ

STAGE12 宇宙よりも遠い場所

南極での最後の大きなプロジェクト、内陸遠征。
道中でしらせの母・貴子が行方不明になったその計画は、藤堂隊長たちにとっては3年越しの悲願であり、しらせの旅の目的地でもあるはず。
しかし、そのしらせ自身が、どうにも乗り気でないようであった。

満を持して、この旅のきっかけになった「めんどくさい」系南極少女・小淵沢報瀬の回。
たしかに、待望の南極だったはずなのに、しらせは妙に普通だった。
お母さんの話をしないわけではなかったが、とくべつ感情を動かした様子も見られない。

「私ね、南極来たら泣くんじゃないかってずっと思ってた。
 でも実際はそんなこと全然なくて、なに見ても、写真と一緒だ、くらいで」


そのことに一番戸惑っていたのは、しらせ自身だった。
彼女の「お母さんが帰ってくるのを待っている毎日」は、まだ続いている。
それを終わらせるために、ここまで来たはずだったのに。

「でも、そこに着いたら、もう先はない。終わりなの。
 もし行ってなんにも変わらなかったら……私はきっと、一生今の気持ちのままなんだって……」


そんなすくみそうになる気持ちを奮い立たせたしらせは、最後の旅に出ることを決意する。
彼女を後押ししたのは、やはり彼女自身だった。
100万円の札束は、既に6話において、自分の生き方が間違っていなかったことを証明している。
だから、仮にそれが思い込みでしかなかったとしても、この生き方を最後まで貫こう――そう覚悟を決めたのだ。

しらせ的な山場は、雪上車での車中泊の夜の、キマリとの内緒話だった。
自分本位な考え方に陥りがちな彼女だけれど、キマリの言葉を聞いて、自分が一人ではないことをふと噛みしめる。
宇宙よりも遠い場所で、ブリザードの吹きすさぶ中までも、一緒に旅をしてくれる友達がいることを。
それだけで、彼女は満足してしまったのだった。

「ねぇしらせちゃん。連れてきてくれてありがとう。しらせちゃんのおかげでわたし、青春できた」


けれど、満足しなかったのは、そんなおせっかいな友達たち。
旅の終着点まで来ても「普通」なしらせの、なにか力になりたい――
その思いで見つけ出したのが、基地に残されていた、お母さんのノートパソコンだった。

宇宙より遠い場所でしらせを待っていたのは、お母さんではなく、毎日のように送り続けていた自分からのメールだった。
もう読んでくれる人のいないそれが受信フォルダに溜まりつづけていくのを見て、しらせは唐突に理解するのだった。
自分がどれほどお母さんを必要としていたのかを。
そして、お母さんが本当に宇宙よりも遠い場所に行ってしまったことを。
しらせの「まるでお母さんの帰ってくるのを待っているみたいな毎日」は終わり、「お母さんのいない毎日」が始まるのだ。

STAGE13 きっとまた旅に出る

南極への旅を終え、日本に帰る4人。
すっかり南極になじんでしまった4人の様子からはじまる、まるまる1話を使った壮大なエピローグ回。

しらせの吹っ切れ具合は見ていて清々しい気持ちになるほど。
私がボブカット好きーなせいもあるのかもしれないけど、しらせちゃんのショートカットはすっごく可愛かったです!

特にお気に入りは、Cパートのめぐみのエピローグ。
途中、「極地への旅」などという本を読んでいる描写があった彼女だけれど、どうやら「ここではないどこか」に北極を選んでしまったようである。
そして、北極と南極のオーロラは同時に発生するものらしい。
オーロラをバックにドヤ顔決めちゃってるめぐっちゃんは、きっとそれを知っていたのだろう。
やっぱり2人は親友なのでした!



まとめ

「ここではないどこか」を求め、女子高生が南極に行くアニメ。
マッドハウス制作の、完全オリジナル作品。

映像的な美麗さは極上品。
そして、1クール13話でここまで完成度を高めてきたシナリオを評価したい。
特に、登場人物の心理描写の細かさについて。
4人それぞれに抱えているものがあって、南極への旅を通して、それがきちんと精算され、成長していく。

もしこの作品に「うーん……」となってしまう人がいたとしたら、それは「なぜ彼女たちは南極に行かなければならなかったのか?」と考え込んでしまったからだろう。
結論から言えば、それが「南極」である必要はまったくなかった。
(たとえば、報瀬の母親が冒険家で、K2登頂中に行方不明になってしまった――という設定でも、物語の本質は変わらない)
(女子高生がK2に登るのは、南極に行くよりも難しいかもしれないが……)

「キマリは南極好き?」
「うん、大好き」
「そう」
「でもね、一人だったら好きだったかわからなかったかも」
「そうなの?」
「みんなと一緒だったから。みんなと一緒だったら、北極でも同じだったかも」


ただ、シナリオの背景の描写は、少し物足りなかった気がしないでもない。
民間観測隊ならではの目的(あるいはスポンサーがついた理由)や、結月(+ポンコツJK)の行っている配信やその反響、といった現実的な要素を、もう少し取り入れてもよかったかも。
(ただ、これは制作側の作為も感じられる。具体的な数字は極力出さないことで現実の生臭さを薄め、登場人物の心理描写に集中させたかったのか?)
(館林から呉までの距離、南極旅行の日程、観測隊の規模、etc)

私のお気に入りは、6話(ドリアンショー)> 11話(年越し生中継)> 12話(内陸旅行)。
どうやらしらせちゃん絡みのエピソードが好きらしい。
それは、おそらく私が情熱や信念といったものに憧れているからなんだろう。

まぁ、一番泣いたのは5話のめぐっちゃんのエピソードなんですけどね?
そして、12話の受信フォルダーにどんどん溜まっていくメールを描くシーンは、こんな描写の仕方があったのか! という感動すら覚えるほど。
こういった、セリフ以外での演出がとても上手い作品でした。

「自分探しの旅」をテーマにした、「友情・努力・勝利」風味の青春ストーリー。
「女子高生が南極行くアニメ? ばかばかしい」と思ってしまった人にこそ見てほしいかも!?
ただ、「しょーがねぇなぁ、じゃあ暇つぶしにでも……」というテンションで見るにしても、電車の中は絶対にオススメしません!
私の評価は、★5・神作評価。

「なんか、私たち、ちょっぴり強くなりました?」

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宇宙よりも遠い場所

宇宙よりも遠い場所 10、11話

STAGE10 パーシャル友情

南極に到着した4人。
感動もつかの間、3年ぶりに稼働させる昭和基地の日常的なアレコレに忙殺されていたある時、もう一人の(隠れ)めんどくさい系女子が、えらいものを出してくるのだ。

① 私、白石結月とあなたは、友達である、ということを約束してください
② この旅が終わったとしても、私たちの友情は絶対に終わらない、と約束してください
③ どんなに距離が離れていても、私たちは友達であり続けると約束してください
④ どれだけの時間私と会えなくても、私と友達であり続けると約束してください
⑤ もしも時間を合わせることができたなら、何があっても必ず会う、と約束してください


ということで、今まで一度も友達いたことない系女子・白石結月の回。
たしかに、友情は恋愛とは違って「今日から友達になりましょう」などと宣言することは、まずない。(恋愛関係でもないことすらあるけど……)
なぜなら友情とは名前をつけて始める関係ではなく、その関係に名前をつけようとしたときに当てはめられるものだから。
それは幼稚園の砂場で学ぶもののはずなのだけれど、4歳から子役の仕事に忙殺されていた結月は、おそらく砂遊びもしたことがなかったのだろう。
「ともだち」に偶像的な憧れを持ってしまった結果、手にとって目で見ることができる、明確な形を求めてしまう。
それが、この「おぉ……」という内容の友達誓約書(手書き)なのだ。
しかし、こんなものがなければ安心できない彼女のことを思うと、私もキマリと同じ気持ちになる。

だから、3人はサプライズで結月のバースデーパーティをする。
自分が生まれてきたことを一緒に喜んでくれる関係。
それにどんな名前をつけたらいいのか、ようやく彼女にもわかったのだ。

STAGE11 ドラム缶でぶっ飛ばせ!

南極を満喫している4人。
そんな4人が行う南極からの年越しの生中継イベントに、日向を「ダメ」にした高校の同級生たちがやって来る。

今回は、ムードメーカーな三枚目女子・三宅日向の回。
決して自分の弱さを見せようとせず、作っていた心の壁を陽気なキャラクターで隠そうとしていた女の子である。

彼女が南極に行きたい理由を正しく語ったことは一度もない。
2話と7話で「受験までになにか大きなことをしたかったから」と言った程度のもの。
今回、抱えていたモノを吐き出したのち、ようやくその本心を少しだけ見せてくれる。

「私がさ、なんで南極来たと思う?
 なんにもないからだ! なんのしがらみもない人と、なんにもないところに行きたかったんだよ」


つまり、彼女は逃げてきたのだ。
それでも現実は追いかけてくる。こんな世界の果てのようなところまでも。
追い詰められた彼女は、彼女らしくない弱気な笑みを浮かべて、こう言うのだ。

「なぁ……。許したらさ、楽になると思うか?」
「許したい?」
「それで私が楽になるならな。……けど、それでほっとしてるあいつらの顔を想像すると、腹は立つな」
「ざけんな?」
「っ……だな、ちっちゃいな、私も」


自分たちの裏切りが人一人を傷つけて、その人生を変えてしまった。
16歳の少女にとって、それは忘れようにも忘れられない嫌な記憶だろう。
もう気にしてない、大丈夫だから、そういう言葉が欲しくて彼女たちはやってきたのだ。

かたや日向の立場から見れば、選択肢は3つしかない。
「彼女たちの望む通りの言葉を与える」か、「彼女たちに恨み言をぶつける」か、「彼女たちを拒絶して出演しない」かだ。
どの選択肢を選ぼうと、日向にとって不愉快な結果しかもたらさない。
彼女もまた、あの日を乗り越えられていないからだ。

だから、しらせはそんな日向の手を引く。
日向が囚われ続けている過去から、明日へ向かって。

「日向は、もうとっくに前を向いて、もうとっくに歩き出しているから! 私たちと一緒に踏み出しているから!
 あなたたちはそのままモヤモヤした気持ちを引きずって生きていきなよ!
 人を傷つけて苦しめたんだよ、そのくらい抱えて生きていきなよ!
 それが人を傷つけた代償だよ! 私の友達を傷つけた代償だよ!」


この回は、ドリアンショーに次いでお気に入りのエピソード。
……ふと思ったんだけど、なんだろう、私はしらせちゃんファンなのか!?
とにかく、キッと睨んでタンカを切るしらせちゃん、最高にカッコよかったです!

「今さらなによ。ざけんなよ」

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宇宙よりも遠い場所

宇宙よりも遠い場所 7~9話

STAGE7 宇宙を見る船

フリーマントルで南極観測船「ペンギン饅頭号」に乗り込む4人。
国家事業ではない民間船ならではの、隊員たちそれぞれの思惑が示唆される。
だって、お給料が出るのかはともかく、何ヶ月も日本を離れるのだから、まぁそれはやっぱり普通の人生とは少し違うものになるよねぇ。

とりあえず、なんだか思った以上にショボい体制で事業が進められていることに、4人は戸惑いを隠せない。
そこで行われる潜入ミッションあたりのドタバタは、やっぱり面白い。
というか、相変わらずしらせちゃんはポンコツなんだよなぁ……!

トリにある4人の自己紹介は、それぞれの魅力と目的をシンプルに伝えてくれる、いいシーンでした。
私もキャッチーでウィットに富んだ文章を書けるようにがんばります!!
ちなみに、日向ちゃんがでっかいのは心だけじゃないと思いますよ!?

STAGE8 吠えて、狂って、絶叫して

南極に向けて出発した「ペンギン饅頭号」その1、船の中の4人。
どうやら南極の海は緯度が高くなればなるほど荒れていく傾向があるらしい。
私も乗り物には酔いやすい性質なので、うーん、想像したくない……。

「……本当に南極行けるんですかね」
「そりゃ行くだろ。この船に乗ってるんだから」
「それはそうですけど。でも、着いたところでなにもできないっていうか……」


観測隊に限った話でもないのだろうが、こういうお仕事はまず体力勝負みたいなところがあるのだろう。
普通の女子高生だった4人と比べれば、みんな体力があって、船酔いもしなくて、その上で専門的な作業に従事している。
結月が弱音を吐きたくなる気持ちもわかる。
けれど、もうここまで来てしまったのだ、やるしかない。他に選択肢はないのだから。

「……そうじゃないよ。選択肢はずっとあったよ。
 でも選んだんだよ、ここを。選んだんだよ、自分で!」


STAGE9 南極恋物語(ブリザード編)

南極に向かう「ペンギン饅頭号」その2。
隊長である藤堂吟に想いを寄せる男性隊員・財前敏夫を通し、しらせと藤堂隊長の微妙な関係を描く。

何度も語られているように、しらせの南極行きの原動力は、行方不明になった彼女の母・貴子。
藤堂隊長は、貴子が行方不明になった時の指揮官であり、捜索を打ち切った責任者でもあった。
それは事故であり、誰が悪いわけでもない。南極とはそういうところなのだ。
しらせもそれは理解していて――それでも、そう簡単に割り切れるものではなかった。

「ただ、お母さんは帰ってこない。私の毎日は変わらないのに!
 毎日毎日思うんです、まるで帰ってくるのを待っているみたいだって。
 変えるには行くしかないんです。お母さんがいる、宇宙よりも遠い場所に」


しらせもまた、ここではないどこかへ行かなければならない少女の一人だった。
そして、彼女たちはもう一歩踏み出せないままの高校生ではないのだ。
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宇宙よりも遠い場所

宇宙よりも遠い場所 4~6話

STAGE4 四匹のイモムシ

4人が訓練合宿を経て、南極への心を一つにする回。
しらせの母への想い、しらせの母と隊長の関係など、細かな伏線も張られる。

南極の基礎知識、隊員の心構え、必要な技術など、現実的なことを視聴者である私たちに紹介してくれる回。
個人的には、あのルート工作なオリエンテーリングのことがもっと気になります!

ストーリー的な進行度はほとんどない。
メインは、1話ではどうしようもなく燻っていたキマリの、その心の変化。

「どうして南極に? あの子に誘われた?」
「……はい。でも決めたのはわたしです。一緒に行きたいって。このまま高校生活が終わるのはいやだって。ここじゃないどこかに行きたいって。
 でも、日向ちゃんと知り合って、結月ちゃんと知り合って、観測隊の人の気持ちを知って、隊長としらせちゃんのこと聞いて、思いました。
 どこかじゃない、南極だって」


「ここではないどこかに行きたい」気持ちと、「今とは違う自分になりたい」気持ちは同じもの。
それが南極なのだとわかったキマリはつまり、なりたい自分を見つけたのだ。

STAGE5 Dear my friend

いざ南極へ向けて出発する回。
しかしこれ、まさか全校集会で取り上げられるほどのイベントだったとは!?
クラス会レベルだと思っていた私は、南極を見くびっていたのでしょうか……!?
とりあえず、お姉ちゃんの門出を祝ってバケツプリンを作っちゃう妹ちゃんがお姉ちゃんっ子かわいい!

今回は、キマリが南極のことを言い出すようになって、なぜかネガティブなことしか口にしなくなった親友・めぐみについてがメイン。
ナチュラルに見下していたはずのキマリがなんだかスゴいことをしはじめていて、それが面白くないのかなぁ……くらいのことは思っていたけれど。

キマリは純情ストレートな女の子なので、そんなめぐみの小さな悪意になんて気がつくはずもない。
けれど、キマリだってめぐみと同じことを考えていた。
自分はめぐみに頼ってばかりの、ダメな存在だった。
でも、これからはめぐみに依存するのではなく、同じ視点で助け合える自分になりたい――
それが彼女のコンプレックスであり、「ここではないどこか」へと歩みはじめる原動力だったのだ。

キマリの行きたいところを知って、めぐみはようやく今自分がどこにいるのかに気づく。
どうしてキマリが南極に行くのが腹立たしいのか。
どうしてキマリを南極に行かせたくないのか。

「キマリに頼られて、相談されて、呆れて、面倒見るようなふりして、えらそうな態度取って――……そうしてないと、なにもなかったんだよ、私には!
 自分になにもなかったから、キマリにもなにも持たせたくなかったんだ。
 駄目なのはキマリじゃない、私だ……!
 ここじゃないところに向かわなきゃいけないのは私なんだよ!」


出立の朝、そう胸の内を吐露し、絶交を宣言するめぐみ。
自分のために、そしてキマリのために、この関係は終わらせなければならない。
そうして別れを告げためぐみに、しかしキマリは。

「――めぐっちゃん! ……一緒に、行く……?」
「……どこに」
「南極!!」


もちろん一緒に行けるはずがない。それはキマリだってわかっているはず。
もう出発なんだし、飛び入り参加なんて許されるわけないし、荷造りだってしてないし、飛行機のチケットも、パスポートも、あれも、これも。
それでも、彼女は言わずにはいられなかったのだ。

これは永遠を誓うことによく似ている。
「君を永遠に愛しつづける」、それを言う人も、言われる人も、世界が滅びた後までも続くような、本当の意味での「永遠」が存在しないことはわかっているはず。
ありえないこととわかっていながら、それでもこの気持ちを伝えるため、あえてこの言葉を選びたい――
その想いの強さに、人は心を動かされるのだ。

苦しんでいるめぐみは、南極を知る前のキマリだった。
だから、キマリの口をついて出たのは、自分が変わるきっかけになったしらせの言葉。
それがありえないこととわかっていて、それでもめぐみの力になりたい――その気持ちを抑えきれなかったから。

「バカ言うなよ、やっと一歩踏み出そうとしてるんだぞ、おまえのいない世界に」


そうして2人は別々の道を歩みだす。
それは今までの関係が終わっただけ。
キマリの南極への誘いは、めぐみへの赦しであり、救いであり、友情の証であった。
ここではないどこかにたどり着いたとき、2人はまた新しい関係を築いていくのだ。

たった一言にここまでの想いが詰まっていることなんて、そうそうあるものじゃない。
その衝撃に撃ち抜かれた私、もうティッシュが止まらないのですが!?

STAGE6 ようこそドリアンショーへ

日本を出発し、フリーマントルへの乗り換えのため、シンガポールに立ち寄る4人。
しかし、ホテルに着いたとき、なぜか日向のパスポートがどこにも見当たらないのだった。

しらせの正体が明らかになる回。
この作品で私が一番好きな回でもある。

こういうトラブルが起こったとき、自分だったらどうするだろうか?
結月ちゃんが提案したように、飛行機を二三日後に変更して、その間に大使館でパスポートを再発行するのが最善に思える。
集合期日には遅れてしまうけれど、出港には間に合うし、事情を説明すれば隊長だってわかってくれるはず。
結月ちゃんってば最年少なのに一番のしっかり者なんだよなぁ!(決して他3人がポンコツすぎるわけではない。たぶん)

さて、ここでしらせちゃんの「めんどくさい」ところをどうぞ!

「変えるの!? 到着日……!?
 大丈夫かな……。ほら、観測隊って結構規律厳しかったりするから……だったら来なくていいとか言われたり……」


几帳面な人なら、この「予定通りにいかない」ことにすごく落ち着かなくなるしらせちゃんの気持ち、よくわかるのではないだろうか。
特にこの南極行きはしらせちゃんの悲願だったわけだし、なるべくリスクを少なくしたいだろう。
そんな気持ちを汲んだ日向は、しらせたちに予定通りに飛行機に乗るように言うのだ。
パスポートが再発行でき次第、追いかけるから――と。

これはよくある「ここは俺に任せて、おまえは先に行け!」と同じ構図。基本的には死亡フラグである。
それを理解したしらせは、やっぱり飛行機は遅らせよう、4人で一緒に行こう――そう言う。
けれど、しらせの提案を、その気遣いを、日向は拒絶するのだった。

「……ごめん。しらせ、気使ってくれてるのにさ。私、こういうの、ダメでね。
 誰かに気使われるとさ、居心地悪くなるっていうか、本心がわからなくなるっていうか……。
 だから高校もムリーってなって、なるべく一人でいようと思って……。
 結局、私がだれかと一緒にいると、こういう感じになっちゃうんだよなあ。だから気にしなくていい。全部私の問題だから」


日向は語ったことはないけれど、彼女が「高校ムリ」になってしまった理由も、どうやらこのあたりにありそうだ。
これは彼女にとって、すごくナイーブな問題なのだろう。
人付き合いの下手なしらせも、ようやくそう理解する。
少なくとも私だったら、まぁ本人がそこまで言うのなら……と、納得はしないまでも、飲み込んでしまうだろう。

さて、ここでもう一度、しらせちゃんの「めんどくさい」ところをどうぞ!
彼女は日向に黙って、キマリと結月に嘘をついてまで、飛行機を変更しようとする。
空席がないと知ると、彼女はあの100万円を叩きつけてまで、無理を通そうとするのだ。

「待てよ! だからなに意地になって――」
「――うるさい! 意地になってなにが悪いの!? 私はそうやって生きてきた!
 意地を張って、馬鹿にされて、嫌な思いして――それでも意地張ってきた! 間違ってないから!
 気を使うなって言うなら、はっきり言う。
 気にするなって言われて、気にしない馬鹿にはなりたくない!
 先に行けって言われて、先に行く薄情にはなりたくない!
 4人で行くって言ったのに、あっさり諦める根性なしにはなりたくない!
 4人で行くの、この4人で! それが最優先だから!」


これこそが、私のような凡庸な人間には決して得られない、小淵沢報瀬という人間の本当の価値だ。
100万円の束は彼女の不器用な生き方の象徴であり、4枚のビジネスクラスのチケットは、彼女の生き方が正しかったことの証明なのだ。
そう、だからしらせちゃんはもっとドヤ顔していいんだよ!
……って、あれ? どうかしたの?

「報瀬さん」
「え゙っ」
「なにか隠してますよね」
「あ、ぅ……」
「隠してますよね?」

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宇宙よりも遠い場所

宇宙よりも遠い場所 1~3話

面白かったのでもう一度見て感想文を書くアニメシリーズ



STAGE1 青春しゃくまんえん

高校に入ったらしたいこと
 ・日記をつける。
 ・一度だけ学校をサボる。
 ・あてのない旅に出る。
 ・青春、する。


高校2年・春。
玉木マリは、ふと突然、高校入学時に漠然と立てた目標がなにも達成できていないことに気がついてしまう。
――このままじゃよくない。
そう思った彼女は、親友のめぐみにも協力してもらい、学校をサボって旅に出ようとして――
けれど、どこにも行くことができなかった。

「――怖くなった?」
「ほら、わたしいつもそうじゃん? 部活入るときも、習い事するときも、受験でいい学校チャレンジしようってときも……全部直前まで来ると怖くなって。
 やったことないこと始めて、うまくいかなかったらどうしようって。失敗したら嫌だなって。後悔するだろうなって。ギリギリになると、いつも……」
「……ま、それは悪いことじゃないと思うけどな」
「でも……わたしはきらい。わたしのそういうところ、だいきらい」


そんなやりきれない思いを抱えていたキマリは、一人の少女に出会う。
小淵沢報瀬――100万円の札束を握りしめ、南極に行くと言ってはばからない少女に。

「行けるわけないのにね」
「でも100万あるんだよ? それにあの子、絶対行くって――」
「――行けないよ、南極だよ?」


高校生がバイトしてお金貯めて南極に行く。
みんなが馬鹿にして笑うような、そんな夢に青春のすべてをかけているしらせに、しかしキマリはどうしようもなく心を動かされてしまう。
自分に致命的に欠けているものを、彼女は持っている。
だから、彼女と一緒にその夢を見られたのなら、ほしかったものを手にすることができるかもしれない――
そう思って協力を申し出るキマリに、しらせは言うのだ。

「じゃあ……一緒に行く?」


その言葉から挿入歌が入り、キマリが悩み抜いた末に心を決めたところからエンディングロール。
この構成は本当に綺麗すぎて、鳥肌モノですよ!
夢への第一歩を一緒に踏み出したキマリを迎えてくれるしらせの笑顔は、最高にかがやいています!

STAGE2 歌舞伎町フリーマントル

南極に行くための作戦その1、観測隊員の男性と仲良くなろう!(ただし女性隊員に見つかってはいけない)の回。
三宅日向が仲間になる回でもあり、しっかり者に見えていたしらせが実はポンコツなことが明らかになる回でもある。

それではまず、日向が南極に行きたい理由から。
というか、日向もキマリと同じく、「南極」にこだわっているわけではない。
ただ、キマリとしらせに興味があったのだ。

「二人だけはなんか別だなーって。空気が違うっていうか。
 私さ、集団の中でぐちゃぐちゃ~みたいなの苦手でさ、だから高校ムリだったんだけど、二人はいいなーって」
「いいって、なにが?」
「うーん……なんだろ、ウソついてない感じ?」


最後は冗談めかして誤魔化してしまった日向だけれど、きっとこれが彼女の本心。
そして、しらせの情熱の源泉も描写される。
しらせの母親が南極観測隊員であり、現地で行方不明になってしまっていたことは語られていたが、それこそが彼女の原動力。

「だって、お母さんが待ってる」


このアニメ、こういったそれぞれの心理描写がしっかり決まっているのに、ギャグパートまでもがしっかり面白いのがすばらしい。
歌舞伎町着いてから、しらせちゃんリーダー解任動議までのテンポは小気味いいほど。
っていうか、しらせちゃんJKお散歩も知らないのに色仕掛けって、そりゃ無理がありますよ!

STAGE3 フォローバックが止まらない

白石結月が仲間になる回であり、南極行きが決まる回。
リーダーを解任されたしらせがお茶汲みからやり直す回でもある。

結月は売れっ子の女子高生タレントであり、そんな彼女のマネージャーでもある母親が、南極チャレンジのリポーターの仕事を取ってくる。
(そのプロジェクトが、民間観測隊の資金繰りを大きく助けているようでもある)
しかし、結月自身はどうしても行きたくない。なので、南極行きを熱望しているらしいしらせに、その仕事を譲ろうとやって来るのだ。
とは言え、現実問題、売れっ子タレントが出たくないからと言って、代わりに一般JK(ポンコツ)を出演させるわけにはいかない。
なので、結月を説得させられたら3人を同行者として推薦する――というところまで結月ママを譲歩させることができたのだ。

キマリたちは、結月が南極に行きたくない理由を尋ねてみる。
ようやく――といった感じで重々しく口を開いた結月は、こう言うのだった。

たぶん、皆さんにはわからないと思いますけど。
私、友達いないんです。
今じゃないですよ。今まで――今まで、一度も。


学校に行って友達を作りたいから、もう仕事はしたくない。
高1の春、今を逃したらまた友達のいない3年間が始まってしまう――
そう言う結月に、3人は「南極に行け」と口にすることなどできなかった。
だからキマリは言うのだ、「一緒に行こう」と。

冒頭のしらせリーダー弾劾裁判から、南極行きを手にしたしらせの狂喜乱舞、そして二人羽織の茶番まで、今回のギャグパートも絶好調。
そして、その始終を見ていた結月は、3人の作り出す空気感を「親友同士のそれ」だと感じていた。
もしそこに自分もいられたなら……。
そう思ってしまったのは、もちろん結月ちゃんだけじゃなかったはずである。
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劇場版 PSYCHO-PASS Sinners of the System

Case.1 罪と罰

全3部作な劇場版2期の1話目は、ナマイキ系後輩・霜月美佳が主人公なお話。
美佳ちゃんのことが気になっていた私の期待にまさか応えてくれるなんて、この世界もまだまだ捨てたものじゃない!?

本来、すべての刑事事件はシビュラシステムを擁する厚生省公安局の管轄であるが、今回の事件ではなぜか経済省の横槍が入る。
その強引さに疑問を感じた朱と美佳は、事件の裏を探るべく捜査に入る。
朱は東京で情報を集め、美佳は経済省管轄の潜在犯隔離施設「サンクチュアリ」の現地調査のために青森へと飛ぶのだった。

もともと美佳ちゃんはかなりの自信家であり、「潜在犯に人権などない」(劇場版1期)と言い切ってしまうほど保守的な考えの持ち主だった。
だから拘束された夜坂泉はもちろん、捜査に非協力的な施設の潜在犯や職員たちも、彼女にとっては「悪」であった。

けれど、事件の謎が解けていくうち、彼女は泉にも色相を悪化させざるを得ない事情があったことを知る。
そして、それは当然のことながら、泉に限ったことではないのだ。
誰だって潜在犯になってしまったからといって人権がなくなることなんてないし、潜在犯だからといって使い捨ての歯車にしていいわけでもない。

「あんた、久々利武弥を助けたいの? あの子を守るために東京に来たのね?
 ……ったく、それならそうと最初から言いなさいよね!」


すっかりクールビューティが板についてしまった朱ちゃんに比べると、美佳ちゃんの感情の起伏の激しさがとても鮮やかに見える。
自分のことをドヤ顔で「公安のエース」と言い切っちゃうところとか、思うように捜査が進まなくてブチ切れちゃうところとか!
そう、素直なのが美佳ちゃんの美点なのだね!

だからこそ、彼女は己の信じる正義を妨げていた本当の「悪」が許せない。
たしかに、今回のシビュラシステムは色々と杜撰だった。
六ケ所村に埋められていた核廃棄物については、正体を偽装しつつ内々に処理しなければいけない事案ではある。(テロリストに見つかったらタイヘン!)
とは言え、殺人を許容するのはともかく、今回の施設長のような潜在犯を生み出しかねない方法を許してしまうのは、その完全性を疑うのに十分なものに思える。

そうして、美佳ちゃんはシビュラシステムに使われる盲目的な道具ではなく、人々の幸せのためにシビュラシステムを使う存在へと変わったのだった。
(思わず『成長する』と表現したくなるが、そう言ってしまった途端、シビュラシステムにすべてを管理されたこの世界がディストピアになってしまうので、そこは気をつけておきましょう!)

「ねぇ刑事さん、どうして助けてくれたの?」
「うーん、それはねえ――私たち・・が正義の味方だから!」


Case.2 First Guardian

元特殊部隊員、公安局一係執行官・須郷徹平の過去。
征陸のとっつぁんと、劇場版1期のシーアンへの日本国としての絡みも描かれる。
時系列はTV版1期よりも前だから、監視官な宜野座さんや、執行官な狡噛さんや縢くんなど、懐かしい面子も見られる。

起こった事件そのものは、国防軍の特殊作戦に絡む復讐劇であり、ちょうど一時間で描ききれるサイズのもの。
しかし、犯人へのよくある説得、「○○はそんなこと望んでない!」というフレーズへ一石を投じる内容になっている。

特殊作戦を指揮した高官の殺害を目的としたテロだったが、その主犯は、特殊作戦で殉職した大佐とその妻の記憶を素にした模造知能であった。
引き金を引いたのは妻であるが、実際に行動を起こしたのは死んだ夫の意志でもあったのだ。
大勢を巻き込んだテロ事件ではあったけれど、知らないうちに大量破壊兵器を使用させられていた須郷は、納得してしまったのだろう。

――強く生きろ。
生まれる前に子供を失った私は、兵士に戻るしかなかった。


Case.3 恩讐の彼方に__

劇場版1期、シーアン事件の狡噛慎也のその後。
まるで浪人のように目的もなく諸国を旅する狡噛は、内紛状態のチベットで一人の少女に出会う。
その少女・テンジンは、両親諸共に故郷を滅ぼした武装ゲリラに復讐をするため、狡噛に師事したいと言うのだった。

自らの復讐を遂げるために槙島聖護を殺し、すべてを失った狡噛は、テンジンに自分のようになってほしくないと思う。
成り行きで仕方なく彼女に体術を教えるうち、彼はふと気がつくのだった。
それは久方ぶりに感じた、己自身の意志なのだと。

テンジンの父の遺品であり、彼女が読み解いている「恩讐の彼方に」は、こんなおはなし。
主殺しの罪から江戸を出奔し、強盗殺人を繰り返して暮らしていた主人公は、ある日唐突に己の業の深さに気がつき、出家僧となる。
贖罪の旅を続けていた彼は、たまたま訪れた難所の峠にトンネルを掘ることを決意する。

市九郎は、自分が求め歩いたものが、ようやくここで見つかったと思った。一年に十人を救えば、十年には百人、百年、千年と経つうちには、千万の人の命を救うことができると思ったのである。

そうして20年近く穴を掘りつづけているうち、最初は彼を馬鹿にしていた村人も、いつしか手伝うようになる。
しかし、あるとき彼の前に、殺した主人の息子が敵討ちに現れるのであった。

テンジンにもまた、親の仇を討つ機会が訪れる。
唐突に訪れたその絶好のチャンスに、しかしテンジンも引き金を引くことはできなかった。
それどころか、知ってはいけないことを知ってしまったせいで殺されかけてしまったのだ。

狡噛は、テンジンを傷つけられたことへの怒りと、悪党を倒さなければいけないという義憤にかられる。
大立ち回りの末、正義を成した彼は、自分もテンジンのようにならなければいけないと強く思うのだった。
彼女は人を殺さない未来を選び、過去の己を乗り越えた。
だから、自分もまた、過去に決着をつけ、己の道を歩まなければならないのだと。

この映画、ストーリーはとても面白かったし、アクションシーンも相変わらずのクオリティ。
おかげで狡噛さんが日本に戻るTV版3期も見たいと思ったけれど、それよりも小説の「恩讐の彼方に」のほうが面白かったのが大きな問題。
なんだ、菊池寛はやはり天才なのか。
青空文庫で15分で読めるので、みんなも読もう! おもしろい!
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