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キラ☆キラ Rock'n' Roll Show 千絵ルート

ご無沙汰だったギャルゲー、久々にクリアしたのは不朽の名作・キラ☆キラのコンシューマ版「キラ☆キラ Rock'n' Roll Show」。
PS2版なので、エッチシーンはなし。代わりに、日常CGが増強されている模様。
大筋に大差はないので、二周目プレイの意味合いが強いかな。
本家キラ☆キラのほうの記事も割と適当になってしまっていたので、こちらもきちんと仕上げたいと思います。

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まず攻略したのは、やはり第二文芸部部長で幼なじみのお姉さん、石動千絵から。
声を当てているのは、まりのさんこと、かわしまりの。
華はないけど安定感抜群な声優さんです。

千絵ルートのテーマは、誰が悪いわけではないのに状況が悪くなってしまう世の中の理不尽さ。
ひいては、「変わっていくこと」と「変わらないもの」につながっていく。

石動家のトラブルを、人と人とがきちんと理解しあえないから生まれたものだと言う千絵に、きらりは言う。

「あのね、みんな理解理解っていうけど、それだけで、本当に争いごとを避ける力になるのかなっ? それだけで、何もかも解決するの? 大体、みんなの言う理解ってなんなのっ?」
「あのね、世界には、絶対的に何かが足りないんだよ! みんなが、全員が幸福になるための、何かが足りないの! その足りないってことが作り上げた悲しみだとか苦しみが、別のつらいことの原因になってるんだよ!」
「あのね、世の中のいろんな、重要で深刻な問題ってね、こういう、理解だけではどうにもならない足りない苦しみが、細かく複雑に積み重なって出来ているんだよ! あちこちで形を変えて、千絵ちゃんの家では、たまたまお父さんの浮気って形で出ちゃったんだっ!」


千絵のなかには「浮気した父親を責める自分」と「自らの幸せを追い求める父親のことが理解できる自分」とが同居しているせいで、この問題に対してどういう態度を取ったらいいのか、自分でもわからなくなってしまっていた。

「ねえ、私はやっぱり、お父さんを嫌いにならなくちゃいけないのかな……」
「だって、こんなのひどいことだと思うんだよね。私はともかく、妹たちはまだ小さくて、両親が必要なのに、こんな一方的なことをするなんて……。だから、嫌いにならないといけないのかなって……」
  「嫌いになりたくないの?」
「そうなのかな? ……わからないんだ。もしかしたらお父さんが家を嫌になったのは、私たち家族の責任かもしれないし……」


世の中では、否応なしに悲しいことが起こる。
――それはなにが原因で、誰が悪くて、なにが正しいのだろう?
こう戸惑う女の子は、同じシナリオライター・瀬戸口廉也のゲーム「CARNIVAL」のメインヒロイン・九条理紗も同じだった。

「ねえ、何が悪いの? 親が子供にひどいことするのは、子供が生まれたからで、最初から子供が生まれなかったら、そんな悪いことなんか何にも起きなかった、だから、子供が生まれたのが悪かったんじゃないかって思うの」
「だけど、子供は自分から好きで生まれたわけじゃないよね? だから、そんな子供にひどいことするのは親が悪いとも思うの。どっちが正しいかわからないの。ねえ、学君、どっちが正しいの?」


結局、正義の反対にはまた別の正義があるように、世の中には「絶対的な正しさ」というようなものは存在しない。
この理不尽で腐った世界から目を背けたくて、千絵はバンド旅行という名の現実逃避に身を任せていく。

「悪いことじゃないさ。いつまでも逃げ切れるもんじゃないが、逃げてる間に捜し物が見つかることもある。この旅が終わるころには、それぞれが何か今までと違うものを見つけているといいな」


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千絵はいつも優しい。
それは、変化が怖いから。
知っているものを受け入れていれば、新しいものを見ずに済むから。
けれど、それだけでは前に進めないことも、彼女は気づいていた。
旅行では知らないことが沢山あって、辛いこともあったけれど、それ以上に嬉しいことのほうが多かったのだから。

「私、思うんだ。一つ一ついやなことを乗り越えて、そのたびに、新しい難しい心配が増えていくだろうけど、そういうものなんじゃないかな。前に進むって」
「いまここで、嫌なことから逃げて、それで心は平和だとしても、それって、もっと、怖いことだと思うな。ねえ、鹿之助もそう思うでしょ?」


前に進む決意をした彼女に足りなかったのは、たった一つ、「勇気」だった。
それが、旅の果てで彼女が見つけた、世界を良くするためのささやかな方法であり、きらりの言う「全員が幸福になるために、この世界に決定的に足りない何か」だった。

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幼なじみというのは、だいたい相手のことを異性として見られないもので、そこには他の異性よりも大きな溝がある。
千絵ルートでもそれは同じだけれど、その溝の埋めかたが上手い。
「幼なじみシナリオ」としての完成度も、地味に高いものだと思う。

「寂しいよね」
 そうだな、と、思う。
 昔はいつも一緒にいて、子犬同士がそうするように、じゃれあって遊んでいた。それはひなたぼっこをするような暖かく平和なものだったはずだ。
 それが僕らが成長するにしたがって、いつの間にか、いけないことに変わってゆく。僕らがそう思わなくても、世間は別の意味を付け加えていった。そして世間の付け加えた意味を理解すると共に、僕らの意識そのものも変わってしまう。
 そうして僕たちは時間をかけて、少しずつ、あの楽園から離れていったのだ。僕はその場所の風景を良く覚えてはいるが、もう戻れないこともよく知っている。今の僕は、昔と同じ気持ちでは振る舞えない。
 きっと千絵姉も同じだったろう。
 僕らはもう無邪気な子供時代には戻れないが、先に進むことは出来る。幼い関係を壊して、その上に僕らの成長に見合った新しい関係を築くということは、可能性としてそこにあるのだ。


付き合う二人のきっかけになったのも、千絵の「勇気」であり、その先に待っていた素晴らしいものたちも、「変わることを怖れずに前に進んだから」得られたものだった。
その勇気の言葉を叫ぶラストシーンは、青春モノとして、本当にキラキラした爽やかさを放っている。

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永遠は存在しない。
このシナリオで、そのスタンスを曲げることはない。
それは時にシリアスで、でもそれでもいいんだと認める優しさは、翠ちゃんの言う「間違いだらけのパンクロック」と同じ雰囲気を持っているように思う。

「ねえ鹿之助、私たち、いつまで二人一緒に居られるのかな?」


千絵はふとそう漏らす。
永遠が存在しないことが怖かった。
いつか、自分たちも、両親のようなトラブルに直面することがあるのかもしれない。
彼女はそういうことに、おそらく確信を持っているのだろう。
なぜなら、世界は変わっていくものだから。

けれど、彼女はそれでもいいと、今では思えるようになっているはず。
半田良介の話が、いくつものライブを経た彼女には、自分の体験として実感できているのだから。

「音楽は時間の芸術って言うけれども、変化がなければ、心が動かない、心が動かなきゃ、オモシロくない。例え、悲しみの方向への変化だとしても……」
「……それはそれで、面白いものなんだぜ? 俺は思うに、これが人生を楽しむってことなんだ」
「なんだって、楽しむことは出来る……それは嘘じゃない」


そうして、いま、彼女は新しい世界へと、一歩を踏み出していく。
変わることを怖れない勇気を胸に抱いて。
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