WHITE ALBUM2 -closing chapter- ノーマルエンド

終章「closing chapter」開始。
序章から3年後、春希と雪菜が大学3年のときの話。

自分の序章の記事を読み直していて気付いたのだけれど、発売日と物語の山場の時期がちょうど合っているんだよね。
序章は高校を卒業することがひとつの区切り、だから発売が3月末。
終章はクリスマスがひとつの区切り、だから発売が12月下旬。
そう思うと、このゲームを本当に楽しむためには発売日に手に入れなきゃいけなかったんだなぁと思う。
とは言え、クリスマスにこんなゲームやってたら、私の心がどうにかなってしまいそうだけれども。

ネタバレが怖いのであまり詳しくは調べていないのだけれど、とりあえずはノーマルエンドから回収する。
ノーマルエンドは、誰ともくっつかなかった場合のお話。

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千晶の春希に対するセリフは妙に印象的だった。
「あんたって誰にでも面倒見がよくってさ、一生懸命で、頑張ってるんだけど、いつも与えてばかりで損してるって思ってた」
「ところが実は全然そうじゃないんだね。色んな人が、男も女も、春希に与えようとする」

聖書にもあったよね。与えよ、さらば与えられん。

その通り、周りの人間は、みんながみんな春希と雪菜を復縁させようとする。
小春の押し具合は正直ウザいくらいだった。
けれど、そこまで押されても踏み出せない訳は。
踏み出しても駄目だった訳とは。

時間はいつでも何かをするには短すぎ、何もしないには長すぎるもの。
彼らが過していた3年間は、それを浮き彫りにしている。
ノーマルエンドは、そんな春希と雪菜の付かず離れず具合をひたすら描いている。
ある意味、特典ノベル雪菜編への答えにもなっているね。

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春希は雪菜が好き、雪菜は春希が好き、これは間違いない。
けれど、春希が好きなのは、雪菜だけじゃない。
春希が書いた冬馬かずさの記事を読んだ雪菜には、それがわかってしまった。

「何を忘れたって?何を消したって?」
「三年前の春希くんと、何が変わったって言うの…?」
「これは、この文章はさぁ…あの頃の春希くんの言葉そのままだよ…っ」
「こんな想いを込めたラブレター見せつけられて、わたし、どうやって納得すればいいの…?」
「あなたは…何年たっても、わたしに嘘をつき続けるんだね」
「忘れられるはずのない思い出を、忘れてしまったかのように嘘で塗り固めて、ずっと、自分を殺して生きてくつもりだったんだね」


自分の気持ちも春希の気持ちにも気付いてないフリをして、キスして、抱かれようとして。
それでも最後まで春希のそばにいたのは、冬馬かずさだった。
雪菜の涙は、自分を選んでくれない春希への怒りでも、春希の心を占め続けるかずさの幻への嫉妬でもない。
ただ自分が春希を好きになったこと、自分が春希とかずさの間に割り込んだことへの自責のみ。

もし春希と雪菜が付き合うにしても、この3年のわだかまりを解かす過程は必ず必要になる。
過去に春希が雪菜ではなくかずさを選んだ事実は変えようがなく、雪菜はそれ以来春希に避けられ、傷付き続けていたのだから。
そのためには、互いが互いの傷を癒すように、心を寄り添わせるしかない。
けれど、その傷はふたりが今でも好きなかずさによって付けられたもの。
心を寄り添わせるたびに、かずさの存在がふたりに影を落とす。
そして、そのことにまた傷付いていく。

――つまり、それってさ…
――俺はもう二度と、一緒に歩いていくことができないって、そういう、ことなのかな?
――世界でただ一人、小木曽雪菜とだけは。


まるで呪いのようだね。
離れれば辛い、けれど近づくともっと辛い。
それでもふたりは離れることはできない。
望むと望まざると、機会は周りが与えてくれる。

ノーマルエンドは、そうして終わる。
けれど「WHITE ALBUMの季節」は終わらない。
もし物理的な距離が離れたとしても、ふたりの中には、互いの、そしてかずさの存在は一生残り続ける。
しかし現実はきっと「秒速5センチメートル」的に、雪菜も春希も他の異性と付き合っていったりするのだろう。
75%や85%の恋愛を経験して、そして100%の恋愛をしていたこの時間を思い返したりするのだろう。
素敵な時間になっているのかはわからないけれど、少なくとも輝いていたことだけは間違いない、この「WHITE ALBUMの季節」を。

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新キャラ、杉浦小春はやっぱり観月マナを踏襲しているのだろうな。
後輩だし、なんか立ち絵のポーズも似ている気がする。
しかし小春希とはよく言ったものだ。
春希のウザさを再確認できた…したくなかった…ウザい…。
小春ルートは、春希に惚れてる矢田美穂子が絡んできて、だいぶドロドロしそうだね。

和泉千晶はとても気になるところ。
思わせぶりなことをボソボソ言うあたりは狙いすぎかな、と思わなくもないけれど。
千晶ルートは期待できそう。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -closing chapter- 小春ルート

WA2cc、個別ルートはまず杉浦小春ちゃんから。
1ルートクリアするのにとても時間がかかった気がする。
ほとんど共通のみのノーマルエンドで6時間、そこから個別ルートに入って6時間。
これはテキスト量が多いせいというよりも、私の読解力に問題がある気がする。
他人の立場に立って、その気持ちを理解していくのはあまり得意じゃないのだよ…。
場面転換のエフェクトがとてももっさりしているせいな気もするけど。

小春ちゃんは、主人公によく似た、お節介焼きで正義漢の固まりのような後輩の女の子。
主人公が小春の友達でもあるバイト先の塾の生徒を手酷く振ったことで、親友の仇とばかりに絡んできたところが、小春の恋物語の始まり。
ロリ系で可愛いのだけれど、やっぱり最初の絡みはウザい。
デレてくるととっても可愛いのだけれども。

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小春ルートは、小春が誰にでも誠実であろうとしたせいで、全ての人間を不幸にしていく話。

クリスマスイブに雪菜と致命的な行き違いをしてしまった春希は、翌日バイト先に顔を出し、小春にその憔悴具合を見咎められる。
小春は春希の落ち込み具合に責任を感じ、さらに持ち前の「誰にでも発揮されるお節介焼きな性格」もあり、春希の側にいることで元気付けようとする。
春希の抱えている傷の存在に気付き、でもイブの夜にあったことは聞かずに。
春希はそんな小春の優しさに癒され、小春も春希が元気を取り戻していくのを純粋に喜ぶ。

年が明け、春希は小春に三年前からクリスマスまでの出来事を話す。
そして、小春は春希の肩を持つ。
「わたし…小木曽先輩が嫌いになりそう」
「今の話のどこを取ったら、先輩の方に非があるなんて言えるんですか!」
――だから俺はずっと前から雪菜を傷つけて…
「それこそずっと前からわかってたことじゃないですか!」
「それを許せないなら、最初から会わなければいいじゃないですか。未練のある素振りなんかしなければいいじゃないですか」

「今度ばかりは間違いなく向こうが悪い。先輩は全然悪くない!」
――違う!雪菜は悪くない!
「なら先輩はわたしが悪いって言うんですか!」
――…なに言ってんだ。君には全然関係ないだろ
「じゃどうすれば関係あることになりますか!?」


小春が春希に似ているから、春希のことが理解できて、だからもっと春希の力になりたいと望む。
それは春希が3年間自分を責め続けて自分を嫌いになり続けていたことを知ったせいでの同情かもしれないし、孤独なひとを見捨てられない性格のせいかもしれないし、医学部との合コンに行った雪菜を本気で探している姿を尊敬したせいかもしれないし、その後の春希と雪菜の言い合いをこっそり見ていたせいかもしれない。

「悲しいよ…悔しいよ…なんで、そんなこと言うの」
「先輩が先輩のこと好きじゃないなんて…わたし以外に、誰も味方がいないなんて…」
「そんなこと言わないで…言っちゃやだよぅ…っ」


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しかし、そんな優しい関係が、その形を保ち続けられるはずもなく。
小春は美穂子に自分から春希を取ろうとしているんじゃないかと疑いをかけられる。
小春は当然否定するけれど、クリスマスに春希と一緒にいた理由、春希の傷については話さない。
それが小春の「春希に対する」誠実さ。
小春にとっては当然の選択だったとしても、小春のなかでの春希の存在の大きさを物語るよね。
最初は「美穂子に対する」誠実さで春希に近づいていたのに。

美穂子に裏切り者扱いされ、自分が初対面のときに春希に対して求めていたものの残酷さにも気付く小春。
彼女は自分の大切なものを天秤にかけ、その間で立ちすくんでしまう。
けれど、小春は美穂子とのことは春希に話さない。
意図していなかったこととは言え、原因の一端は春希にあり、そのことを伝えれば春希が持ち前の責任感でなんとかしようとしてくれることがわかっていたから。
自分から春希が離れていくことがわかっていたから。
それはある意味小春の強さであり、小春の弱さでもある。

春希はその小春の強さを尊重し、彼女が自分にしてくれたのと同じように、側にいることで彼女を元気付けようとする。
最初は春希のために小春が、いまは小春のために春希が。
互いが互いのことを尊重し、そのために距離が近づいて、それがゼロになって。
これが、ふたりの一番幸せだった時間。
ここのCGの甘さはヤバかった…。

「わたし、いいこだから…今までずっと頑張って、いいこにしてきたんだから」
「だから、いいこいいこって…してください」
「わたし、今…生まれてきてから、一番弱い自分かもしれないですっ」
「ここ数日で、一生分の嘘をついちゃったのに、それなのに、こんなに幸せな気持ちになるなんて…」


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ここからはもう、引き返せない道程。
春希と小春がキスしていたのを友達に見られていて、それがスキャンダルとして学校中に広まっていく。
優等生だった小春は、そこからの転落も早い。
小春はその落差を、春希との距離を縮めることで、自分を保とうとする。

春希にとって自分が一番ではなかったとしても、それでも自分には一番近いひと。
唇を重ねて、身体を重ねて、小春はただ先へ進んでいく。
純粋さを捨てて、誠実さを捨てて、彼女が彼女らしかった何もかもを捨てて。

「お前たちには、自分たち以外にも大切なものが…しがらみって名前の、守るべきものがたくさんある」
「お前らはそれを絶対に捨てられない。二人だけの世界なんかで生きていけない」
「今のままじゃ、いつまでもお前と一緒にはいられないよ。多分、破滅の日はすぐ近くに来てる」
「雪菜ちゃんを裏切ったお前は最低だ。けど、あのコを助けないお前はもっと最低だ」


ふたりの関係を知った武也はそう言う。
小春は自分の傷を癒すために春希を求めて、自分の信じていたものを、自分を信じていたものを、全てを捨てて求めて、そのせいでもっと傷付いて。
彼女はもう一歩も動けない。
ここが、小春の、ふたりの限界。

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小春が選ぶことができるのは、全員が「比較的」後悔の少なくなるグッドエンドのみ。
裏切ってしまった親友のために推薦での大学への進学を辞め、春希の一番になろうとすることを辞めて、春希と同じように自分を犠牲にして。
そんな彼女を許したのは、雪菜だった。

「そこまで頑張って…何もかも敵に回してあなたが手に入れたものは、それだけの価値があるんだって信じていいと思うよ」
「そうやって自分ばかり責めないで。…そんなところまで、彼そっくりなんだから」
「だからわたし、あなたのこと好きになれそうだよ」

「あのとき、もし側に春希くんがいてくれたなら、わたしは絶対にあなたにすがりついてた。…二度と、その手を離すことはなかったかもしれない」
「なら、今のわたしが求めてるものもわかるでしょう?…中学時代のわたしを、助けてあげてよ」
「今…あなたが一番守ってあげたいのは、誰?」
「あなたは、治せる人を治してあげてね。わたしの傷はもう…あなたには専門外だから」
「あなただけには、もう癒すことができないんだから」


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最後の別れのシーンは、ちょっとうるうるしてしまったね。
まさかここまでドロドロしてくるシナリオだとは思わなかった。予想以上。
小春の純粋さがどんどん穢されていき、最後には再び白さを取り戻す。

ひとは正しいことばかりして生きてはいけない。
大事なのは、間違ったあとにどうするか、ってことなんだろうね。
失ったものを必死で取り返そうとする小春の誠実さは、とても輝いていた。
私は自分の罪で傷を癒そうとしてしまい、小春ほどの強さは持てないだろうなぁ。

雪菜の苦悩が透けて見えるあたりが、とても良いシナリオだったと思う。
雪菜が春希のことを好きになったのは、中学時代の断絶があったからだからね。
ちょっと春希の存在感が薄かったけれど、展開的にしょうがないか。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -closing chapter- 麻理ルート

WA2cc、風岡麻理さんを攻略。
個別ルートは4時間くらいのボリューム、小春ルートより短か目。

麻理さんは、春希のバイト先の出版社の有能な上司で、ワーカホリック気味な高嶺の花。
やっぱり年上の女性を入れてくるのも、1作目の踏襲なのだろうか。
このゲームは声優が公開されていないけれど、麻理の声はかわしまりのが当てているように聞こえる。
あまり人の声を聞き分けるのは得意じゃないので、もしかしたら違うかもしれない。

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小春ルートのときはあまり感じなかったけれど、麻理ルートではかなり「浮気」がメインな内容になってきた。
雪菜とのクリスマスイブの後、麻理に会いに行った先の話。

今回は春希がかなりの駄目さ加減だった。
傷付いた春希は、麻理の強さと包容力に勝手に甘えて、傷を癒していく。
しかしお互い真意を測りかねて、すれ違うこともある。
その距離が劇的に縮まったのは、麻理に避けられたと勘違いした春希が仕事に逃げ続けていた、年明けのある日。

春希がほとんど寝ずに仕事をし続けていたことに気付いた麻理は、自宅に帰りたがらない春希を自分の家に上げる。
春希が麻理に惹かれるきっかけは、冬馬かずさに似た強さを持っていたから。
そして、その強さはほんの殻で、実は弱い面を持っていることを知っていたから。
それを聞かされた麻理は、自分が冬馬かずさの代わりなんだと思い、春希から距離を置こうとする。
――また、俺を放り出すんですか?俺を、見捨てるんですか?
――離しません。俺から、逃げないで…っ


ここでの春希は、さすがの私でも酷いと思う。
春希は、完全にかずさと麻理を重ねている。
かずさに似たひとに同じように距離を置かれるのに耐えられなくて、雪菜に付けられた傷を忘れたくて、そのまま犯してしまう。
そして、終わった後にそのことを死ぬほど悔いて、麻理の優しさに甘える。

春希は麻理にかずさと雪菜のことを、自分でも見たくない自分のことを全て話して、その上で許しを請おうとする。
けれど、麻理は春希が自分を求めているものだと思い、健気にも抱かれる準備を整えてくる。
春希は麻理に何も話さずに、身体を重ねてしまう。
それまでは麻理に許してもらって元の関係に戻り、雪菜ともう一度やり直そうと思っていたのに。

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麻理を抱いてしまったあとは、雪菜にそのことを話し、雪菜に別れを告げようとする。
けれど、雪菜は自分から離れていきそうな春希を察し、その話を避け続ける。
それを繰り返すうち、麻理との断絶の日がやってくる。

雪菜の誕生日と麻理との約束が被った2月14日、麻理にとっては自分のアメリカ赴任を決断する最後のチャンスだった。
春希は雪菜の誕生日に出て、しかも麻理とのことは話せずに、麻理を待たせ続ける。
そして、待ちぼうけの麻理は、アメリカへ行くことを、春希と離れることを決めてしまう。
自分との約束より大事な用事って何だ、と問い詰める麻理に、春希は本当のことを全て話す。

「やっぱり私は代用品なんじゃないか!」
「冬馬かずさに似てるって言ったのも、似てるけどそんなこと関係ないって抱きしめたのも…」
「みんな、本命の彼女を隠すためのカモフラージュだったんだな…っ」


当然のようにそう激昂し、自分のアメリカ行きを、別れを打ち明ける麻理に、春希はまたしても留学していくかずさを重ね、引き留めようとする。
けれど、麻理との間にできた溝は埋まらない。
麻理は最後に、アメリカ行きの便だけを伝え、春希が自分を選んでくれることに賭ける。

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だから浮気は否定されるのだろうけれど、このシナリオの春希はだいぶ酷かった。
最後のオチだけ綺麗にまとめたら許されるとか、そういう問題じゃないと思うよ。

辛いときに近くにいる人に逃げて、そのことを過ちとして終わらせようとして、既成事実が出来てしまったら逃げじゃなかったことにしようとして。
辛いときは逃げたくなる、それは仕方がないことだと思う。
人間は誰もが現実に立ち向かえるほど強いわけじゃないからね。

けど、春希が酷いのは、全てを正直に話すことが「誠実」だと思っている点。
雪菜に対して、麻理とセックスしていることを話す必要がどこにあったのだろうか。
裏切ってしまったのなら、最後まで悪役に徹して騙し続けるべきだと思うよ。
自分が雪菜に対して誠実に生きる資格と価値のある人間だと思っているあたりが気に入らないな。
雪菜にこんな悲しいことを言わせるなんてね。

「その人のことを語るあなたは、かずさを語るときの顔。本当に好きな女の子を語るときの顔だから」
「今ここで泣いてもいいよ。抱いてもいいよ。わたしを…その人の代わりにしていいよ」
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ゲーム [★★★☆☆]
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WHITE ALBUM2 -closing chapter- 千晶ルート

終章個別ルート、新キャラのラストは和泉千晶ちゃん。
千晶ルートは2周する必要がある。
1周目は千晶の本性に気付かずにフェードアウト、2周目で気付いてエンディングへ向かう。

春希の前では和泉千晶、高校時代は瀬能千晶という名前で高校の同級生、大学の劇団では瀬之内晶という名前で看板女優、千晶はそんないくつもの顔を持った演技の天才。
最初は春希をモデルに小説でも書いてるのかなぁと思っていたけど、演劇の脚本にしていたんだね。
千晶ルートは、そんな「人の気持ちが読める」けど「思いやることはできない」女の子が、演技対象にしてた恋にハマっていくお話。

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とてもだらしない雰囲気を持った、女を感じさせない親友キャラの女の子。
そのせいで、ときどき顔を見せる女の部分がとても魅力的に感じられたりする。
それが、千晶の演技していた「和泉千晶」。

雪菜とのクリスマスイブの後、千晶のケータイに着信履歴を残すと、千晶はサンタコスをして春希のマンションへ押しかけてくる。
そして春希がとても傷付いていることに気付き、その傷を甲斐甲斐しく癒そうとする。
とても甘い罪の味。
「あたし…あんたの逃げ道になったげるよ、春希」
「一緒に、堕落しようね?」


千晶は、高校の学園祭のステージの時から「届かない恋」を演奏していた三人の三角関係を役者としての才能で見抜いていて、その関係を舞台で演じることを夢見ていた。
春希が三年になって文学部に転部して千晶と顔を合わせたところから、千晶の三年越しの「届かない恋」舞台化計画は始まっていた。
春希の必要とする女の子になり、春希に抱かれ、春希の気持ちを知り、雪菜の気持ちを知り。
全ては、舞台を完成させるための演技で、千晶にとっての春希は演技指導担当で。

千晶は春希を騙していた。
けれど、千晶はそのことに罪悪感を覚えていたりはしない。
実際に雪菜に傷つけられた春希を助けたのは千晶だし、春希が千晶の正体を知らなければ雪菜とのハッピーエンドもあったかもしれない。
悪意がない悪こそ、一番残酷なのかもしれないね。
「愛してるよ、春希。だから泣かないで…ううん、もっと泣き顔を見せて。あたしに」
「あぁ…愛しい。あんたの呪いの言葉が、あたしの引き出しをまた満たしてくれる」
――ふざけるなっ…どこまで俺を弄べば…っ
「ううん、真剣。あたし、春希のこと愛してる。あたしほどあんたをわかってる人間は他にいないよ?」
「あたし、本物の小木曽雪菜になってみせるよ。彼女の本当の気持ち、あんたに伝えてあげるからね?」


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春希は当然、信じていた女の子に、好きになりかけていた女の子に裏切られて、酷く傷付く。
けれど、春希は千晶を本気で恨んだりしない。
そんな「異常な」世界に身を置き続けている千晶のことを心配する。
自分が今見ている千晶が「演技している千晶」なのか「素の千晶」なのかはわからない。
それでもそう思ってしまうのは、情が深いという春希の弱さでもあり、自分が一番大切に思う気持ちに正直という強さでもあるんだろうね。

そんな春希に、千晶は引きずられていく。
本当の自分の気持ちがどこにあるのか、わからないまま。
そして、舞台が完成したとき、自分が舞台で演じたのが「北原春樹を愛している小木曽雪菜と冬馬かずさ」ではなく、「小木曽雪菜と冬馬かずさを演じている、北原春樹を愛している和泉千晶」になっていることに気付く。
春希は本当の気持ちを伝えてくれた千晶を、許しはしないものの、受け入れる。

そんな、ミイラ取りがミイラになったような、哀しくて甘い恋のお話。

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千晶と雪菜の心理描写はとても良かった。
千晶の舞台は面白かったし、その他のイベントも楽しかった。

一方、春希のほうはやや疑問符が付かないわけではない。
単に、しがらみに縛られまくりな雪菜じゃなくて、そういうのが何もない千晶と付き合ったほうがラク、っていう姿勢が見え隠れする。
そんな春希に、武也がとても良いことを言っていたね。
「好きな女に拒絶されたとき、自分の心が保てないとき、他の女に逃げるのの何が悪いんだ?」
「どうして相手がもう一度振り向いてくれるまで律儀に待ち続けなくちゃならないんだよ?そもそも、振り向いてくれる保証なんかあるのか?」


誰しもが思い描いた理想通りの強い自分になれるわけじゃない。
間違えて、傷付いて、弱い自分と向き合わなきゃならない。
こういう傷の舐め合いみたいなシナリオは賛否両論ありそうだけれど、私は好きだよ。
二次元のヒーローはいつでも完璧主義なひとには合わないかもしれないけれどね。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -closing chapter- 雪菜ルート

満を持して、メインヒロインのひとり小木曽雪菜ちゃんを攻略。
サブヒロインルートは攻略を見なくても入れたけれど、雪菜ルートは適当にやるだけじゃ入れなかった。
サブヒロインの好感度を少しずつ上げておくことが大事なのかな、多分。

雪菜ルートをプレイする前に、序章と「歌を忘れた偶像」をもう一周しておいた。
序章には、いくつかイベントが追加されていたり。
主だったところでは、高校時代の千晶についてと、春希を巡っての雪菜とかずさの視点からの話。

二周目のイベントで、雪菜が自分を責める原因がよくわかるようになる。
雪菜は最初は春希に告白せずに「三人」の関係を保とうと思っていたけれど、文化祭が終わった直後、かずさが居眠りしている春希の唇を奪うところを目撃してしまう。
それを見て、かずさと春希を天秤にかけ、春希を選ぶ。
千晶にはそれが学園祭のライブを見たときからわかってたんだね。
「彼がもし小木曽さんと付き合ってるなら、それは間違いなく彼女による略奪だよね」

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  どうしてこうなるんだろう…
  好きな人が、自分に嘘をついてまで、わたしに振り向いてくれて
  自分の想いを殺してまで、わたしに報いてくれて
  三年越しの想いが、やっと叶うって
  それで十分だと思ってたのに
  私の想いだけ遂げられればよかったはずなのに
  なのに、どうして、こうなっちゃうんだろう…


考察というほど立派なものではないけれど、私なりの解釈で雪菜の気持ちを整理してみた。

これは私の経験だけれど、好きな人がいて、好きだからこそ許せないことってあるよね。
本当に好きで、だからその人のことばかり考えてしまい、するとその人が自分を傷つけたことも思い出してしまう。浮気されたときとかね。
普通は罪を許すか、好きな人から離れるかのどちらか。

けれど、雪菜にはどっちもできなかった。
雪菜にとっては、春希は心の底から好きな人で、春希のしたことで心の底から傷付いていた。
大好きだけど、だからこそ許せない。
許せないっていうと少し語弊があるかな、雪菜は自分を守るために、傷付いた原因が自分にあると思い込んでいたのだから。
雪菜には、かずさから春希を奪ったという自分を責めるだけの理由があったし、きっと大好きな人を憎むという矛盾を抱えるよりも、大好きな人に愛される資格がないと自分を貶めるほうが、精神的に楽だったのだろうね。

とにかく、そのパラドックスを抱えて、雪菜はもう一歩も動けなくなってしまっていた。
彼女が求めているのは、「春希のことを好きではなくなり、春希から離れられるようになること」か「春希のしたことを許せるようになり(春希に自分を裏切らせた自分のことを許せるようになり)、春希に近づけるようになること」のどちらか。
自分からは嫌いになれない、けど自分からは許せない。
クリスマスイブは、春希がどちらも解決させないまま距離を近づけようとしたことで、雪菜に拒否反応が出てしまったのだろう。

「変かもしれないけど…わたしね、今まで、春希くんがわたしを避けてたことに安心してた」
「わたしの想いが届かないなら、もうあれ以上傷つかないんだって。三年前の辛さを繰り返さずに済むんだって」


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雪菜ルートでは、そんなふたりの矛盾が解けていく。

話としては簡単。
年明けに「雪菜のことが好きだ」「クリスマスのことを許す」と、春希から雪菜に一歩歩み寄ったこと。
そして、雪菜が柳原朋にハメられてナンパされそうになった夜、やけ酒をした雪菜が自分の本音を春希にぶつけたこと。
ふたりの関係を変えるのに必要だったイベントは、それだけ。
お酒の力を借りて、というのはいまいち気に入らないけれども、それでも理性を保ったままでは崩せない矛盾を、感情のままにさらけ出すツールとしてのお酒は、便利ではある。

不安定な均衡で揺らいでいたふたりの距離が一端崩れれば、あとはなし崩し的に縮まっていく。
そうして、傷ついても大丈夫なくらいの、今までよりももっと強い「好き」を手に入れたのか、もしくは罪を許せるくらいの「強さ」を手に入れたのか、あるいはその両方か。

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バレンタインコンサートは、春希にとっての、自分を許すためのイベント。
春希は、雪菜が自分を手に入れるために歌を捨てるなんて、そんな決断はさせたくなかった。
ふたりのきっかけは歌だったわけだし、それに触れないまま距離を縮めるなんてことができるわけもない。
何より、春希が一番好きだったのは、大好きな歌を楽しそうに歌う雪菜だったのだから。
――俺が失ったものを…俺のせいで失ったものを、取り返したい。

その歌は、春希が書いたかずさへのラブソング。
当然雪菜もそのことはわかっている。
けれど、春希はその歌を雪菜に歌ってほしいと望む。
春希にとっては、今の自分の全てを雪菜に受け入れてもらうため。
雪菜にとっては、春希が望む、輝いていた季節の自分を取り戻すため。
そして、その先で。

  冬が、終わる。
  三人の季節が、終わる。
  「WHITE ALBUM」の季節が、終わる。
  そして、俺たちの…二人だけの季節が、始まるんだ。


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正直に言って、退屈だった。
春希はともかく、雪菜の心理描写は面白かったし、エッチシーンも充実していた。
けれど、起きるイベントが少なすぎる。
あと、終章のトゥルー的位置づけでもあるようなので、雪菜についてだけではなく、例えば春希と矢田美穂子との溝を埋めていったりとかそういう話が混ざっていたのが、シナリオの完成度というか春希と雪菜のラブストーリーとしての純度を下げていたように思う。

コンサートのイベントが終わってからは、エンディングが流れるのを今か今かと待っていたよ。
単純な話なんだから、ここまで水増ししなくてもよかったのに。
今までのふたりの距離感を埋めるように、ラブラブシーンを見せてくれたのかもしれないけれど、私にとっては完全に蛇足だった。
まぁまだ雪菜ルートは完結していないので、批評は最終章codaを終わらせてからにしよう。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -coda- 雪菜ルート1(ノーマルエンド)

最終章codaの雪菜ルートをクリア。
終章closing chapterから2年後、冬馬かずさと再会した後の話。

クリスマスイブのフランス、ストラスブールで偶然の再会を果たした春希とかずさ。
そこから終わったはずの物語が再び動き出す。
ストラスブールなんて聞いたことがなかったけれど、ノートルダム大聖堂がある街らしい。
さすがにそれは聞いたことがあるね!

ストラスブールでの別れ際、春希はかずさに「もう一度おまえのピアノが聴きたい」という。
元々日本に行くつもりもなかったかずさは、春希のその言葉だけを寄る辺に、日本でコンサートを開く。
春希は仕事をきっかけに、再びかずさとの距離を縮めていく。

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最終章の雪菜ルートは、ただただ春希の煮え切らなさにイライラするだけの話だった。
春希とかずさの距離は、5年前の高校3年生の頃と同じ。
春希はかずさが自分のことを今でも好きな訳がないと勝手に思っていて、かずさは最初から今までずっと春希のことを想い続けていた。
フランスでのインタビューのときに「日本に行く気はない」と明言していたかずさが、その1週間後に突然日本に来ることを決めたあたりで、春希にはそのあたりを察して欲しかった。

春希は、取材の名を借りてかずさに中途半端に近づき、互いの気持ちを確かめ、そして拒絶した。
「お前に聴かせるためだけに帰ってきたのに…最後に、最高の演奏を聴かせて、今度こそ、諦めるはずだったのに」
「なのにお前は来なくて、あたしは最低の演奏をして、今度こそ、何もかも失った」
「離せ…何もかも、壊してやるから。お前も、あたしも…この両手も」


かずさは、自分に向けられるのは偽物の愛でもいいと言う。
けれど、春希はそれさえも拒絶する。
――世界で一番大切なものが、目に見える。ずっと求めていたものが、目の前にある。
――何もかも…他の全てを切り捨てても手に入れる価値のあるものが…
――かつて、世界で一番大切「だったもの」の向こう側に…


春希は結局、雪菜を選ぶ。
雪菜を本当に愛していたのかはわからない。
もしかしたら、プロポーズまでしてしまった手前、これ以上雪菜を裏切るわけにはいかないという、保身のようなものかもしれない。
とにかく、かずさの想いは春希には届かなかった。

彼らの記憶の輝きは余りにも弱く、彼らのことばは5年前ほど澄んではいない。
二人はすれ違い、そのまま人混みの中に消えてしまう。

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小木曽雪菜について。
終章closing chapterでは、春希と雪菜のふたりの関係についての話ばかりで、春希のなかにいるはずのかずさの話はほとんど語られなかった。
だから、私も終章の記事では触れなかったのだけれども。

雪菜は、春希のなかにいるかずさを消せないことを、わかっていた。
それは初恋の相手を忘れられないのと同じであり、初めてのセックスの相手を忘れられないのと同じ。
だから、雪菜は大学3年のクリスマス以降、そのことには意図的に触れなかったし、フランスでの再会を果たしたあとも、かずさについて春希に干渉することを極力避けていた。
たぶん、もし春希が自分から離れてかずさのところへ行くことを選ぶのなら、それを受け入れるつもりだったのだろう。
このあたりはかずさルートでもっと詳しくわかるかな。

雪菜には、やや被支配願望が見受けられる。
周囲からアイドル視されている自分と、自分が認識する自分が乖離しすぎていて、その釣り合いを自分の中でとるために、自分を過小評価しているのだと思う。
けれど、自分が周囲からは「高嶺の花」だと思われていることも知っている。
だから、自分を安売りすることができない。
このあたりが小木曽雪菜の弱さなんだろうな。

きっと、春希が雪菜のことをモノ扱いするような強気な人間だったら、終章を含めてここまで話はこじれなかったと思う。
「世界で二番目にお前のことが好きで、世界で一番お前のことを愛してやる。だから俺のものになれ」
たぶんこのセリフだけで、雪菜はすべての罪を許せたと思うんだよね。
まぁそんなことは嘘でも言えない春希の優しさに、雪菜は惚れたのかもしれないけれど。

とにかく、春希の優しさという名前の付いた残酷さが、とても目に付くお話だった。
彼の誠実さは、結局は自分に対してのみの誠実さなんだろうな。
春希は、自分に誠実であることこそが、他人に対して誠実であることだと心から信じている。
まったく友達になりたくないタイプの人間だなぁ
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -coda- かずさルート1(ノーマルエンド)

最終章coda、かずさルートその1をクリア。
知らなかったのだけれど、かずさルートは二つあるんだね。
終わらせてからCGをチェックしたら、まだだいぶ埋まっていなかった。
ちなみに、終章closing chapterのかずさフラグっぽい選択肢はダミーのようだ。
どうやっても解放されないし。

一つ目は、ノーマルエンド的な位置付け。
かずさとの距離は縮まったけれど、ふたりは幸せな未来を描けなかった。

---

春希にとって、世界で一番好きな人は、本当に好きだったのは、高校最後の半年にずっとその姿を追い求めていた冬馬かずさだった。
これはたぶん雪菜ルートでも変わらない。
違うのは、何を大事にするか、っていうことなんだと思う。
冬馬かずさが輝いていたその瞬間を大事にするのか、小木曽雪菜と積み上げてきた年月を大事にするのか。

前者を選んだ春希は、雪菜にプロポーズしておきながら、コンサートの後にボロボロになったかずさの想いを受け入れる。
しかし、春希も自分の選択が正しいものではないことを理解していた。
そんな春希に、かずさが与えた免罪符。

「最低で何が悪い?」
「あたしと過ごすときは、ただ獣みたいに身体だけを求めろ。雪菜と過ごすときは、何もかも忘れて心から愛してやれ」
「それであたしは満たされる。お前も悩みから解放される。雪菜は幸せでいられる。何の問題もないじゃないか」
「雪菜のことを愛してる春希が現実にいるから。あたしのことを愛してない春希が日常にいるから。三人に、それぞれ帰る場所があるからこそ、あたしはこうして、お前に安心して抱きしめてもらえる」
「あたしと二人きりでいる間、何も考えずに、ずっと嘘をついてみろよ」
「あたしのこと好きだって、愛してるって、ずっと昔から、変わらぬ気持ちのままだって…」


春希は元来誠実さを信条に生きている人間。
そんな彼が、雪菜をそんな自分勝手な理由で裏切り続けて平気なわけがない。
かずさにとっても、5年間忘れられなかった相手と肌を重ねられたら、本当の心まで重ねたいと思うのは当然のこと。
ふたりは、全てから逃げ、駆け落ちしていく。

「本当に、本当に…これからも、一緒にいてくれるのか?」
「あたしが行くところに、ずっと、ついてきてくれるのか…?」
「このまま…地獄にでも?」
――お前が望むなら。どこまでも一緒だ
「なんてな…お断りだ。あたしはお前と一緒には行けない」


---

当然のことながら、こんな不安定な関係が長く続くはずもなく。
何も選ばず、現実から逃げた先には、当たり前のように破滅が待っていた。

「あたしのために全てを捨てるって…?一緒に地獄に堕ちるのも厭わないって…?」
「そんなのが…そんなぶっ壊れたお前が、本物の、あたしの春希でなんかあるもんか!」


かずさが好きだったのは、お節介で、お人好しで、自分のことよりも相手のことを優先してしまうような、そんな高校時代の春希だった。
彼を必要とする人も、彼を愛している人も、何もかもを捨てて自分を選ぶような春希じゃなかった。
そして、そんな風に春希を変えてしまったのも自分だということを、かずさは理解していた。
だから、かずさは身を引いた。
世界で一番好きな人を、世界で一番幸せにしてくれる人に、託した。

「あたしが何を誰に捧げたとしても、春希を守ることはできないんだ」
「お前を愛することしかできない、駄目な奴だ。お前を何一つ支えることのできない、弱い奴だ」
「雪菜には…一生勝てない女だよ」

「あたしの、世界で一番大切な宝物は…あたしが持つと壊してしまうんだ」


---

結局、春希は5年前と同じ事を雪菜にしただけだった。
けれど、雪菜は自分から離れていこうとする春希を、決して離さなかった。
春希のなかのかずさが自分には消せないことがわかっていたし、5年前と同じ傷なら、癒し方ももうわかっていたから。

身体から重ねていくやり方が悪いとは思わない。
けれど、春希に嘘をつかせたのは失敗だったね。
かずさの想いも、春希の想いも、5年前ほど純粋ではなかった。
春希の慟哭はだいぶ見苦しかったね…そうなるのもわからないではないけどさ…。

結局は、雪菜がとても良い子でした、っていうオチ。
なんだか全体的に予定調和みたいな展開で、やや面白みには欠けたかもしれない。
浮気モノとしては良かったかな。
浮気っていうか不倫みたいになっていた気はしなくもないけど。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -coda- かずさルート2(トゥルーエンド)

ホワイト・アルバム2もいよいよ大詰め、かずさルートその2をクリア。
というか、ここまでやっておいて気付いたんだけど、最終章の雪菜ルートも2つあったんだね…。
通りでCGが埋まらないわけだ。

二つ目のかずさルートは、トゥルー的位置付け。
春希とかずさと雪菜の三人が全てののカードを切り、その結果春希がかずさを、かずさが春希を選ぶ話。

---

自分が主人公の立場だったとしても、雪菜とかずさのどちらを選ぶか、相当悩む問題だった。
かずさがピアニストとして成功しつつあったのは、母親の冬馬曜子をピアニストとして越えたいという目標があったのと、春希がかずさのピアノを好きだと言ってくれたから。
かずさにとって、ピアノを弾くことは、春希に対して愛を囁くのと同じこと。

しかしこのルートだと、冬馬曜子が白血病を患っていて、ピアニストとしては引退せざるを得なくなっていることがわかる。
さらに、日本での初回公演後、春希はかずさの告白を受け入れなかったし、かずさは春希と雪菜が婚約していることも知ってしまう。
かずさは、今まで自分がピアノを弾いていた理由の全てを、一瞬にして失ってしまった。

春希がそんなかずさを見捨てておけるはずがない。
他人ならまだしも、今でも好きな初恋のひとだったのだから。
しかし、自分がかずさを支えるということは、雪菜を捨てるということ。

結局、春希は婚約までしていた雪菜を捨て、かずさを選ぶ。
春希にとって、その選択は、想いの強さで選んだわけじゃなかった。
雪菜はそれなりに外向的で、大好きな家族と、大好きな友達がいる。
かずさは相変わらず超内向的で、曜子とピアノ以外にはなにもない。
どちらがより自分を必要としているか、そういう基準でかずさを選択したようだ。

――お前がこんなにも駄目な奴だから、どうしようもない弱い奴だから…
――だから…俺がなんとかするしかないだろ?


正直言って、私には春希の選択が正しいのかわからない。
同じ状況になったら、私は雪菜を選ぶと思うけれど、それは「そのほうが周囲の理解を得やすいから」とか「雪菜が自分のために費やした数年間を無駄にさせるのは忍びない」とか、そういう理由からだろう。
そんな後手に回るような私の選択も、あまり正しいとは思えない。
というか、そもそもこんな選択を迫られる状況に陥ること自体が、致命的に間違っていると思うのだけれどもね。

---

春希とかずさは、全てを裏切って、二人だけの世界を創っていく。
仕事を捨て、家族を捨て、友人を捨て、大好きな人を捨て。
――俺…もう雪菜とは、一緒に歩いていけない

案の定、雪菜との別れのシーンはとても切なかった。
やっぱり雪菜は春希の一番の理解者だったね。
春希の前にかずさが現れれば、どうしようもなくかずさに惹かれていくだろうって気付いていた。
気付いていても、自分が簒奪者だという負い目を感じていて、積極的に春希を引き留めることはできなかった。

「どうすれば…あなたはさっきの言葉を撤回してくれるのかなぁ。わたしのところに、帰ってきてくれるのかなぁ」
――どうも…しなくていい。雪菜は、間違ってない。悪いところなんかひとつもない
「それじゃ…直せないよ。教えてくれないと、あなたのために、変われないよ…あなたがまた、振り向いてくれる女の子になれないよ」


どうやっても春希の一番になれない現実を突きつけられた雪菜は、5年前のように三人で一緒に幸せになるほうに逃げて、少しずつ壊れていく。
「三人がいいんだよ。だから、何も終わってないんだよ、わたしたち…」
「だから、ねぇ、春希くん。わたしを、入れてよ…仲間はずれに、しないでよぉ…っ」
「取らない、取らないよ…もう、かずさの春希くん、取ったりしないからぁ…っ


壊れていく雪菜を見るのはとても悲しかった。
かずさとふたりで話しているときとかね。
壊れるっていうのはちょっと悪意的に過ぎる気がしないでもない。
端からみたら破綻した論理展開でも、そうでもして自分を納得させないと心のバランスが取れなかったんだろう。
最終的には、雪菜は春希がかずさにしたように、全てを捨ててでも好きな人の近くにいるという選択肢を選ぶことが出来なかった。
彼女には、自分のことを愛してくれる家族と、大切な友人がいたから。

しかし現実問題、雪菜の傷はもう癒すことはできないだろうね。
春希はそうは考えていなかったし、雪菜も言いかけて否定していたけれど、いまの雪菜は「小木曽雪菜」だけで構成されてるわけじゃない。
残るのは、「北原春希」が欠けてしまった、歪な心を抱えた女の子。
いったい雪菜がその空っぽな気持ちのままどう生きていくのか、気になるところではある。
なんだかすごく歪んだ恋愛観を持ったりしそうな気がするね?

冬馬かずさについては、あまり語ることはない。
彼女に必要なのは、春希とピアノだけ。
そんな一途で純粋なところが、かずさの魅力であることは間違いない。

---

しかしまぁずいぶん悲劇的なシナリオだった。
雪菜とここまで時間をかけてラブラブになっておきながら最終的にかずさと結ばれるなんて、そんな強引な結末にするには、それなりに代償は必要だった、ということだろうね。

あと、ちょいちょいミスリードを誘ってくるのはなんなのだろうか。
かずさが自傷したっぽかったシーンとか、春希にフラれた雪菜が倒れて死んだっぽかったシーンとか。
するつもりもないのに無駄に泳がせてくるのはやめてほしいです。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 -coda- 雪菜ルート2(トゥルーエンド)

ホワイト・アルバム2、雪菜ルートその2を終わらせて、ようやくオールクリア。
いやぁ長かった…。
序章で10時間、終章の共通で6時間、個別で5時間*4、最終章で4時間*4、合計50時間強か。
こんなに壮大な物語だとは思わなかったよ。

雪菜ルートトゥルー編は、雪菜が幸せになるためのワガママを全て叶えていく話。
ホワイト・アルバム2という作品自体のトゥルーエンド的位置付けでもある。

---

途中までは、かずさルートトゥルー編とほぼ同じ。
母親の冬馬曜子と想い人の北原春希を同時に失い、壊れかけているかずさの世界。

「今までは、ピアノを弾けば幸せになれた。…ウィーンにいれば、あたしは五年前から先に進む必要がなかった」
「けれど日本に来て、五年後の世界に来て…幸せな空想が、現実に壊された」
「あたしの世界が消えた後…やっぱり、あたしも消えてしまうのか?」
「怖い、怖いよ…消えたくない…でも残るのも辛い。世界が壊れるのも、取り残されるのも嫌だ」
「あたしを仲間外れにしないでくれよぉぉっ!」


春希は結局、雪菜を頼った。
けれど、言ったのは「自分を助けてくれ」ではなく「迷子になっているかずさを助けてくれ」。
雪菜は春希がかずさを見捨てられないことを知っていたし、かずさが春希を愛していることも知っていた。
そして、そんなかずさのことを妬んでいると同時に、大好きだった。
自分も幸せになりたいし、自分の大切なひとをみんな幸せにしたい。
それが雪菜のワガママ。

雪菜は、かずさの世界に新しく意味を吹き込む。
かずさの作る音楽を待ってくれている人に、かずさの好きな人のために、かずさのことを好きでいてくれる人のために、かずさは再びピアノを弾くことを決意する。
かずさは母親と春希が自分の世界の全てだと思っていたけれど、本当は自分のピアノはもっと凄いことができるって気付いたんだね。

三人は、三人に戻って、また5年前のようにスタジオに篭もりきりになる。
切なくも甘い記憶そのままに。
それが終わったとき、今度こそ三人は間違えない。

「終わらない、まだ終わってないよ。わたしたち三人、こんなことじゃ全然終わらないんだよ」

---

ようやく雪菜はその複雑な想いの一端を明らかにしてくれた。
今まではずっと自分の気持ちより春希の決断を優先させていたし、その決断に対して文句を言ったことなんてなかった。
春希がかずさを好きなことも、他のルートで他の女の子を選ぶことも、恨み言なんて一つも溢さずに、いつでも春希を愛している優しい女の子になっていた。

「酷いよ、酷いよ…っ!わたし、ずっとずっとギリギリだったんだよ!今にも折れてしまいそうだったんだよ!」
「あなたに甘えたかった!護ってもらいたかった!でも、そうしたらみんな壊れてしまいそうだった」
「手に届くものを掴んだら、本当に大切なものを手放してしまいそうだった。だから、だから…すごく我慢したんだよ!」
「わたしが一番頑張ったんだよ!とっても辛い思いをしたんだよ!だからいいよね?幸せになってもいいよねぇっ!?」


雪菜はただ、ずっと耐えていただけだった。
自分の幸せよりも春希の幸せを優先させるような、献身的に過ぎる女の子なんかじゃなかった。
自分の一番大切なもの、自分が自分でいられるためのもの、自分を過小評価している彼女だからこそ絶対に譲れないものを、必死で守ろうとしていただけだった。
言葉にすると陳腐になるけれど、それはたぶん「優しさ」とか「甲斐甲斐しさ」とか、そういう言葉で表現されるものだと思う。
それが守れなかった雪菜が、かずさトゥルーの雪菜なんだろう。

---

最後は割とアッサリ目でまとめてきた。
トゥルーとして武也と依緒の顛末とか、春希の母親との和解とか、そういう話があるかと思ったのに。
展開として5年前とカブらせてきたのは、悪くなかったと思う。
それなりに楽しかったね。
ようやく終わったという達成感のほうが大きいけれども。

まとめ記事は次回へ。
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM

WHITE ALBUM2 まとめ

--- シナリオ ---

  あなたのことは今でも好きよ。でも、きっとそういう問題でもないのね。
  それは自分でもよくわかっているのよ。


基本的には前作「WHITE ALBUM」と同じく、浮気をテーマとしている。
ここで取り上げられている「浮気」のイメージとしては、男の子を取り合ってドロドロしていくというよりも、しがらみに縛られた行き場のない恋心が腐っていく過程を見せ付けられる感じ。

前作とは直接は関係ないので、プレイしていなくても問題ない。
続編としての位置付けになっているのは、同じテーマを突き詰めて昇華させた作品であるのと、前作「WHITE ALBUM」で使われた曲をリメイクして使っているから。
曲を楽しむには、前作をプレイしていたほうが良いかもしれない。

とにかく、登場人物の心理描写が緻密だった。
人間の綺麗なところも汚いところも、余すところなく描かれている。
シナリオライターの丸戸史明には賛否両論あるようだけれど、私は少なくともこの点でだけは評価できると思う。
その登場人物の心の動きが、シナリオ的に面白いものかどうかは別にしてね。

何はともあれ、このゲームは「小木曽雪菜ゲー」であることは間違いない。
全ての始まりには彼女がいて、全ての終わりにも彼女がいる。
雪菜の心の動きを追うのが、このゲームを楽しむコツかもしれない。
全シナリオで追い続けても飽きない、色んな面を持った魅力的なヒロインだと思う。

大筋とは関係ないけれど、武也と依緒の話をもうちょっと詳しくやってほしかったかなーと思わないこともない。
まぁそこに触れだすと、際限なく物語が膨らんでいってしまうから、CG1枚だけでお茶を濁したのかもしれないけれどね。

個別シナリオ評価
雪菜トゥルー > かずさトゥルー ≧ 千晶 > 小春 > その他

雪菜推しの私としては、やっぱり雪菜が一番幸せになる雪菜トゥルーが一番だね。
かずさトゥルーは、雪菜トゥルーとは対極の、幸せになれなかった雪菜が見られるという意味で高評価。

千晶ルートは、千晶の雰囲気が好きなのと、千晶の屈折した強い想いが綺麗に描かれていたのが高評価。
あと、起きるイベントも楽しかったね。

小春ルートは、やたらドロドロしたという点で面白かった。
小春ちゃんも可愛かったしね。最初はウザかったけど

オススメ攻略順
序章 → 特典ノベル*2 → 終章、ノーマル → 小春・麻理・千晶 → 序章2周目 → 終章、雪菜 → 最終章、雪菜ノーマル → かずさノーマル → かずさトゥルー → 雪菜トゥルー

終章のサブヒロインは好きな順でいいかな。
千晶ルートをクリアすると、序章に新しいイベントが追加されているので、もう一周すると回収できる。
最終章は雪菜トゥルーを最後に持ってくれば、他は適当でも良いかも。
ノーマル→トゥルーの順は鉄板で。

--- CG・キャラクター ---

CGそのものはとても手が掛かっていると思う。
差分も表情だけじゃなく、ポーズが変わるものが多い。

ただ、如何せん絵があまり上手ではない気がする。
一作目をやっていたときと比べたら何も文句言えないのだけれどね。
でも、女の子の見た目がもっと可愛かったら、もっと楽しかったのになぁとは思う。

キャラの好みは、シナリオの根幹とも関わってくるから判断が難しいところだけれど、雪菜>小春>千晶 の順位を付けておこうかな。
雪菜は本当に良い女の子だよ。
それと比べて、主人公の春希は…。

このゲームは、春希がどうにもイライラするところが欠点。
春希の持つ信念は一本ちゃんと筋が通っていて、その行動原理も理解の範疇ではあるけれども、生理的な好き嫌いはどうしようもないね。
ヘタレ系ではなく、なまじっか出来る系主人公っぽいから、なおさらなのかな。
まぁこんなタイプのゲームで主人公にイライラしなかったら、それはそれでスゴイと思わないでもないけれど。
付き合ってもいない女の子に、他の男と付き合うなとか言う男の人って…。

--- その他 ---

Hシーン
普通…かな。
絵が好きなら使えるかも。
浮気モノっぽい背徳感溢れるシーンはあまりなかった。

声優
全体的にレベル高かったような気がする。
千晶だけが残念。ちょっとイメージが違うような…。
キャラ的に色んな声出せる声優を選ばなきゃいけなかったから、仕方ないのかもしれないけれど。
主人公ボイスは…なんであるのかな?

音楽
前作から引き続き、相変わらずとても良かった。
これはこの作品の評価ポイントのなかでもかなりシェアを占める項目。
序章のライブにむけてのシーンはとっても楽しかったね。

序章のオープニングは普通だったけど、終章のフルアニメーションのオープニングは素晴らしい。

システム
新しいゲームにしては、やや貧弱な気がしなくもなかった。
装備としては一通り不足なく揃っているのだけれど、なんだかもっさりしているというか。
ニトロプラスのゲームみたいだね。
シーンからシーンに移るところでやたら時間を食うのはややストレスだったかも。

--- 評価 ---

一言で言えば、興味深い作品だった。
別にプレイ中もそこまで楽しくもなかったし、退屈する場面もいくつもあったけれど、それでも頑張って進めてきたのは、ひとえに好奇心から。
私はあまり人の心の動きを把握するのが得意じゃないので、こういう心理描写が緻密なものに触れてみたかった。
そういう意味では、十分プレイした価値があったように思う。
めっちゃ時間かかったけども…。

シナリオ自体としては、序章は楽しかったけれど、全て合わせると良作レベルを出ていないように思う。
この作品が評価されるのは、エッチシーンがあることが前提の純愛系エロゲーに必須の「恋愛」というものに真摯に向き合っているからだと思う。
逆に言えば、この恋愛要素を抜きにしては純愛系エロゲーは語れないと言っても良いかもしれない。
そのせいで、例えば「穢翼のユースティア」は、「物語として」面白かったと思うけれど、「エロゲーとして」評価され辛い作品になってしまっていたよね。
どの作品にも含まれている要素だからこそ、それを突き詰めたこの作品が「エロゲーとして」高評価を獲得している。

私もその姿勢は評価するし、恋愛要素の完成度も高いし、純粋な恋愛モノとしてのエロゲーとしては代表作と言っても良いと思う。
けれど、それと面白さや楽しさが直結しないのは残念だよね。
実際に浮気したり浮気されたりといった恋愛を経験したことのある人には、とても染み入るお話だったのではないかな。
私としては、良作★3評価を付けておきます。

個人的には、そんなに恋愛要素を突き詰めたいなら、エロゲー的お約束も取っ払ったもっとリアルな恋愛モノがみてみたいと思うよ。
例えば、主人公じゃなくてヒロインが浮気していたりとか、ヒロインが再会するまでに他の恋愛を経験していたりとかさ。
そんなゲームじゃ売れないのかな?
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ゲーム [★★★☆☆]
WHITE ALBUM