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WORLD END ECONOMiCA episode.1

二周目プレイ:加筆修正 2012/09/27

狼と香辛料の著者、支倉凍砂がシナリオを書いている同人ゲーム「WORLD END ECONOMiCA」の第一話をプレイしてみた。
三部作構成らしいが、去年の夏コミで一話が発売されて、次回は今年の夏コミらしい。
まだ半年以上先かぁ…長いなぁ…

狼と香辛料も主人公が商人で経済的な事柄を扱っていたが、このシナリオでもその方向性。
てっきりライターは経済学部でも出ているのかと思っていたのに、Wikipediaによると物理専攻だったらしい。よくわからん
ともかく、話を書く上で自分の得意なジャンルがあるというのは、大きな強みだよね。

--- シナリオ ---

――俺は月生まれだ。
――地球生まれの奴らとは違う。人類の最先端が、俺の生まれ故郷だ。


株式の短期売買で金を稼いでいた家出少年ヨシハルと、人助けが趣味と言い切るクリスチャンの理沙、理沙に匿われている数学オタクの家出少女ハガナ、3人の生活から話は始まる。

ある日ハルが帰ってくると、ハガナは理沙が留守の時に教会にやってきた金貸しトヤマと大喧嘩していた。
それを仲裁し、トヤマの借金の利子をハルが立て替え、その場は収まった。
しかし理沙が言うには、ハガナはその借金を自分のせいだと自責していて、自分を売ろうとしているらしい。

「あの子を無視しないで。あの子は自分の価値を見失っているの。借金のカタにすぐに自分を売ろうとする思考がマトモなわけないわ」
「あの子に、自分は単なる商品ではなく、一人の人間であるということを忘れさせないで欲しいの」


ハガナは最初から必要以上にハルのことを目の敵にしていた。
親からも売られて月に来て、家出した先でも借金を作ってしまったと思っている彼女は、一日中パソコンに向かっているハルのことが許せなかったのだ。

「働いてないくせに」
「私たちは一生懸命生きている。月で生まれたお前なんかとは違う」


机上の問題は美しく解けても、現実問題は何も解決できない。
そんなハガナにも自分の力を発揮できる場所を用意できたのが、ハルだった。
借金を一括返済しなくてはならなくなった理沙に、ハルは自分がデイトレードで稼いでいることを明かし、自分の取引資金からその借金を立て替えること、投資コンテストでの賞金のこと、そのためにハガナの力を借りたいことを話す。

金融工学。
ハルが感覚的、経験的に行っていることを、ハガナが数式化し、プログラムにして効率化する。
ふたりは二人三脚で協力することにした。
ハルはコンテスト入賞者に行われるヘッドハント目当てで、ハガナは自分の存在意義を確認するため。

「ハガナ。あなたの一番得意なことが人に本当に必要とされてるのよ」


ハガナのプログラムはとても優秀で、コンテストだけでなく現実の株式市場でも通用するものだった。
しかし、ハガナがクオンツ(金融工学者)として優秀であればあるほど、ハルの存在価値が減ってゆく。
ハルはハガナのプログラムの一部になってしまったような気がして、モチベーションを保てなくなってきてしまう。
そんなハルにアドバイスしたのは、ハルと同じく自分の目と経験で成功したヘッジファンドのオーナーのバートン。

「ニーチェは言っている、科学の秘密とは、計算できないものへの本能的な恐れだと」
「人が機械を越えるには、その計算できない物へ近づかなければならない」
「それができるのは、出来事の向こうに人の思惑を見抜ける者だけだ」


ハルは自分の投資家としての矜持を取り戻したが、コンテストは最後に負けてしまい2位で終わる。
次の問題は、理沙と同じ境遇の人から借金返済のための資金運用を頼まれ、最終的には金貸しのトヤマにまで頼まれてしまった、現実の株式市場。
トヤマがいきなり一括返済を求めてきたのは、地上げ屋に代わった金主の、トヤマの顧客の持っている土地を借金のカタとして取り上げたいという思惑があったからだった。

ハルとハガナはなんとか目標額に乗せようとするも、如何せん期限が短すぎて届かない。
ハルは、最後の手段としてバートンに自分に投資してほしいと頼むも、断られる。
しかしその代わりにバートンからインサイダー情報を教えてもらう。
臨んだ最終日、ハルは情報を信じて全力でバートンの言う銘柄に注文を出す。
しかしハガナは情報通りに値段が下がらない銘柄に対し、値動きがおかしい、プログラムで計算してもここから逆転することはあり得ない、早く損切りするべきだと言ったが、ハルはインサイダー情報に固執して聞く耳を持たなかった。
結局、バートンは真逆の情報をハルに掴ませていた。

「考える頭を持って取引をしたかね?」


――ハガナは教会から消えていた。
――俺の十代は、こうして、幕を閉じた。


---

まず、主人公の夢や目標もシンプルで、登場人物の心理がわかりやすくて良いね。
ハルのクオンツとしてのハガナの能力への嫉妬と、同じ目標を共有するパートナーとしてのハガナへの信頼の対比は鮮やかだった。
ハガナも最初の敵意むき出しのツンツンした態度から、ハルを信頼していく様子がきちんと描かれていたね。
デレてたのとはちょっと違うけど、確かに庇護欲をそそられる感じだったね!

「あの子が他人へ辛く当たるのは、自分の辛さをガマンしている裏返しだと思う。痛みを我慢して力んでいると、力の加減ができないようにね」


起きるイベントもなかなか熱い展開を見せてくれて燃えたし、ラブコメ要素が皆無なのも好感が持てる。
経済的な事柄については、教養程度の経済知識を持っていればほとんど問題ないレベル。
理屈がわからなかったとしても、ちゃんと勝利条件を提示してくれるのは親切だね。

ご都合主義な展開もあまりなかったし、ツッコミどころも少なめ。
シナリオとしての完成度はかなり高いと思う。
主人公もできる系だし、ハガナも可愛い。
ラストの引きも良いね!
二話も買ってしまうこと間違いなしだ。

--- 絵・キャラクター ---

出てくる登場人物のキャラがちゃんと立っているのは魅力的。
と言っても、今のところあんまり出てきていないけれども。
クリスなんかは次回以降本気出してきそうだね。

CGは40枚弱と、比較的多め。
エロ無しでこの分量なら十分じゃないかな。
細かいところでも一枚絵が出てきたりして、ちょっと贅沢な気分になれたね。

絵自体は上手いのか下手なのかよく分からない。
割とかわいい系な絵だね。嫌いじゃないよ!
お気に入りは、寝起きで伸びをしてるハガナの後ろ姿。

背景はとっても綺麗!

--- その他 ---

音楽
BGMは優。結構好みな曲が多かったと思う。
オープニングムービーは同人ゲームにしては秀逸。
かなり気合い入れて作ってきているね!
ハルとハガナが街を眺めているところは、ハガナのスカートがはためくアニメーションが欲しかったけど…贅沢かなぁ

システム
必要最低限のものは全て揃っている。

--- 評価 ---

エロ無し音声無しの、シナリオで勝負してきているゲーム。
あ、絵も気合い入れているのかな。

勝負は勝ちだと思います。普通に面白いね!
投資コンテスト終盤から、ラストのインサイダー取引までの疾走感はハンパない。ヤバい。
これなら、2話以降の展開も安心して期待できそう。

現時点では自信を持って人にオススメできる秀作、★4評価。
category
ゲーム [★★★★★]
WORLD END ECONOMiCA

WORLD END ECONOMiCA episode.2

二周目プレイ:加筆修正 2013/10/05

昔、一人の女の子を最後まで信じ抜くことができなかった。
自分は、誰を信用するべきなのか、なにを守るべきなのか、本当に大事なものはなんだったのか、土壇場で見失ったのだ。


夏コミで出た「WORLD END ECONOMiCA」の第二話をプレイ。
いちおう、第一話をプレイしなおしてからの取り組みだよ!
第二話には第一話も収録されているので、今からはじめる人は第二話だけ買えばOKっていう親切設計。

---

話は第一話の4年後、ハルが20歳になったところからはじまる。
取り返しのつかない過ちを犯したハルは、株の世界を離れ、役所で働きながら夜学で法律を学んでいた。
4年前も、結局は困った人を助けようとしたことだった。法律を学ぶのも同じこと。
そう言うハルに、理沙は言った。

――大人になっちゃったのね。


けれど、実際はそうじゃなかった。
過去から目を背けて、自分を否定して、殻に閉じこもっているだけだった。
ハルの過ちは、投資に失敗したことじゃない。ハガナの手を払いのけたことだった。
あんなに近くにいたはずだったのに。何もかもをわかりあえたと思っていたのに。

「皆、きちんと前に進んでいるのよ。止まっているのはあなただけ。いえ」
「迷ったままなのはあなただけ。一時は立ち直ったかと思ったけど、さっきのあなたを見て確信した。あなたは自分で自分を誤魔化していただけ。しかも、強烈にね。違う?」
「ハル。一生傷口をかばって自分に嘘をつき続けることも可能かもしれない」
「でもね、人生は一度きりだし、あなたがそういう一生を送ってほしくないと願う人は、あなたが思う以上にたくさんいるものなのよ」


そんなハルに訪れた転機。
4年前の投資コンテストのデータを見て、ハルをスカウトしにきた零細ファンドの代表、エレノア。
クリスは彼女の元で、ハルとハガナの遺したプログラムを洗練させ、トレーダーとなっていた。
クリスは、4年前のハルとハガナの雄姿に憧れ、そして目指していたものがあった。

「私は、バートンのようになりたいんです」
「信念があって、目的があって、手段があって、行動があって……誰かになにか言われるかもなんて全然気にしなくて、誰かがこう思っているから妥協するなんて全然なくて、鉄の塊みたいに進むのが本当に格好良かった」
「私は自分が嫌だったんです。お父さんのために頑張ろうとか、皆が応援してくれるから頑張ろうとか、それで、そうやって、誰かのために頑張ってしまう自分が嫌だったんです」
「それに、私はお金が嫌いです。もう二度とあれに振り回されたくありません。だから、今度は私が振り回します」
「そして、そうして、本当に、自分が思うように……生きてみたいんです……」


ハルは「クリスのお目付役」という建前で、エレノアのファンドに参加することにする。
本音は、ハガナだった。
過去をなかったことにはできない。だから、きちんと立ち向かわなくちゃならない。
もしハガナにもう一度会えたのなら、黒ずくめの少女は、きっとこんな自分に失望するにきまっているから。
それに、投資の世界はやっぱり面白かった。

エレノア・シュヴァイツェル。
家業だった会社を潰した、没落貴族。妙に意志の強い瞳を持つ、ブロンド娘。
彼女もまた、取り返しのつかない過去を持っていた。
彼女の自宅代わりのホテルの部屋を訪れたとき、ハルはそれに気がつく。
シュヴァイツェル家の持つ数百年の歴史を、悪によって傷つけられてしまった。取り返しのつかないこと。正義の実現。

ここには、目的がある。信念がある。
俺の胸の中にぽっかりと空いた穴を埋めていた物である、泣きたくなるほど立ち去りがたい懐かしさが、ここにはあったのだった。


そうしてハルは、エレノアの、自分の会社を潰した黒幕である大企業アバロンの不正を暴くという目的に、協力することにする。
ハガナを求める資格を得るために。離してしまった手を、もう一度握れる日が来ると信じるために。

トリカエシノツカナイコトを、私は絶対に取り返す。
この、手と、この力と、あなたの協力で。
そしてその到達点を、正義の実現と言ってのける!


しかし、国家予算規模の大企業の不正を暴くなど、簡単なことではなかった。
決定的な証拠をつかんだと思ったその瞬間に、エレノアは足もとを掬われてしまう。

「ハルがこの右手を忌まわしいものかのように見るのは、そういうこと。ハルが一番後悔しているのは、ハガナを救えなかったことじゃない。最後までハガナの側にいられなかったこと」
「じゃあ、今度こそ、やるべきことは決まってるんじゃないかしら?」
「本当に大事なものだけは見失わないで。あなたはそれが、とても壊れやすくて、取り戻すのがどれほど大変か知っているはずだから」


---

第二話はここでおしまいかよ! という悔しさがまず第一。こっからすげぇ面白くなりそうなのに!
いや、ここまでも十分面白かったんだけどね。

エレノアの女の子としての魅力の引き出し方はとても上手かった。そう、SUSHIのくだりだね。
そして、ハルとエレノアの、紙媒体には電子媒体のような「偶然の出会い」がないという話題からの、洗練されたいちゃこら具合も大したもの。
並みのギャルゲーなんか目じゃないよ!

クリスの淡い恋心のお話も、完成度高し。
ラストで、クリスとハガナをダブらせるあの構成はとてもいいね!
私はクリスみたいなタイプの女の子にはあまり食指が動かないので、クリス絡みのエピソードはあまりそそらなかったけど、クリス好きな人はかなりやきもきしたんじゃないでしょーか?
バートンみたいになりたい! と言い切るクリスは格好良かったけどね!

しかし、それで言うならやっぱり理沙のお姉さんっぷりはすごい。
私はまごうことなき理沙派です。ハガナやエレノアを差し置いてね。
スージー・ウーがハメられたあとの、教会での理沙とハルの語りは最高だよ。
神の見放した世界の果てで、自分の信念で優しく包み込んでくれる。
あぁ、私もこんなお姉さんがほしい。

――神ってのはどこにいるんだ?
「聖書に書いてあるわよ。神は常にいまし、昔にいまし、後に来られる方」
「あなたが困っている誰かの元に駆けつければ、その誰かはあなたの側に神を見るでしょうね。それこそ……あなたには見えなくても」
「これが、神は常にあなたの側に、という言葉の、あまり語られないもうひとつの、でもとても大事な意味」


---

CGや音楽なんかのクオリティは第一話と同程度。
エロゲーじゃないから、CGが全部イベントCGになっている。そのせいか、やっぱり使い方が贅沢に思えてしまうね。
もっと長い間見ていたいCGとか、結構あったよ。

オープニングは、台詞が入ってきたせいで、なんだか安っぽく見えてしまった気がした。
そこだけは少し残念。

現状の評価は、やはり★4を継続しておこうと思います。
ただ、第一話であったような、血湧き肉躍るといった感じの冒険譚とは少し違った。
疾走感は相変わらずスゴイけどね。

取り返しのつかないことを取り返す。
きっと第三話は、ハガナと再会できるに違いないよ。そうして、失ったものを取り返すんだ。
……え、取り返せるのは次の夏コミかよ。長すぎる……。
category
ゲーム [★★★★★]
WORLD END ECONOMiCA

WORLD END ECONOMiCA episode.3

今年の夏コミで出たWEEのシリーズ完結編、第三話をプレイ。
バージョンは「FULL」として、各1500円だったEp.1とEp.2も同梱の、2500円での販売。
少し高い分だけあって、CGは2割増量、演出も強化されている。
というか、Ep.1から比べたら、画力の向上が著しいね!

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話は第二話の4年後、すなわち第一話の8年後、ハルが24歳になったところから。
アバロンは潰れ、エレノアは地球に帰り、ハルは月面の英雄としてシュヴァイツェル・インベスメントを切り盛りする、敏腕投資家となっていた。

今回のテーマは、不動産バブルと月面の崩壊、そして本当に大切なもの。
月面は新天地。誰もが憧れ、移住したいと願う。
おかげで不動産価格は実体経済以上の伸びを見せ、絶対に損をしない「聖杯」が飛ぶように売れる。
それを作り出したのが、ハルにふられて自らの才覚を磨くことに専念しはじめたクリスなのだから、なんとも心躍る展開だ。
しかし、ハルと「悲観の帝王」の二つ名を持つドクター・ウォレスは、そこに欺瞞を見る。

聖杯たるABSに乗り切れないハルが、時代に取り残されているのではないかと焦燥を抱く心理描写は、かなりリアルだったように思う。
読んでいるだけの私まで、ちょっとモニターの向こう側を透かしてしまったりしたからね。
だから、エレノアとの会話シーンは、かなり染み入るものがあった。
正直なところ、私はエレノアルートでも全然構わなかったよ?
第二話のあの子には、そのくらい思い入れがあるもん。

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逆に言えば、ハガナの登場は突然すぎたようにも思う。
いや、もちろん突然出てきたからハルも驚いて、私も驚いたんだけどね?
もう少しハルの成功を噛みしめたかったような気がする。

仲直りする前に、ハガナにもっと色々語らせてほしかった。
ハガナがそういうキャラじゃないというなら、もっとその態度で示すような、ね?
尺やシーンが足りなかったのかなぁ。でもソリティアだけじゃちょっと物足りなかったです。

それでも、言葉少なに語ってくれたハガナの台詞にはぐっと来た。
もし世界が滅びなかったら、月と地球とどっちで暮らしたい? と聞いたハルへ。

「私は、月面がいい」
「ここには、思い出があるもの」
「だから、消したいと思ったの」


---

今回の理沙のお姉さんぷりも、なかなかだった。
私は第二話のお下げにシスター服が一番好きだったけど。
それでも、ウォレスが挫折しかかったときの、ハルを止める残酷なまでの優しさは、やっぱり理沙だった。

しかし、どんなに私が理沙に恋い焦がれようとも、理沙ルートに行ける気がまったくしない。
このあたりが、理沙の魅力なのかもしれないなぁ。

一方で、住宅支援プロジェクトだかなんだか知らないけど、レナの使い方は非常に残念。
あの子は第二話の、結婚指輪を見せてくれたところが役所のピークだった。
第三話は大団円にしたかったのかもしれないけど、それでもレナはまったく物語に絡んでこないのだから、出てこないほうがよかったなぁ。レナがお気に入りだからこそ、そう思うよ。

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物語のオチとしては、おぉなるほど! といったところ。
これは一重にバートンの使い方の賜物。
個人的には、ハルに前人未踏の地へ行ってほしかったところだけど、理沙お姉さんの言葉を借りれば、こうなるだろう。

――大人になっちゃったのね。


Ep.3単体の評価は、★4つ。期待通りの面白さ。
この「期待を裏切らない」って、すごく大事で、すごく大変なことだよね。
1~3の総評は、次回記事でまとめます。
category
ゲーム [★★★★★]
WORLD END ECONOMiCA

WORLD END ECONOMiCA まとめ

シナリオ

シナリオライターは支倉凍砂。狼と香辛料を書いている商業作家の同人作品。
さすがプロと言うべきか、ストーリーの練り込み具合はすごい。

近い未来の月面が舞台ということで、SFに経済小説を混ぜたようなジャンルだが、しっかりと地に足の着いた世界観。
そこで一人の少年が人生における最も大切なものを手に入れる様子を描き切る。
そこには苦悩があり、挫折があり、停滞があり、しかしきっちり成長していく。
その成長と立身出世がうまく噛みあうデキル系具合は、見ていてとても気持ちがいい。

ヒロインやサブキャラも魅力的な人物ばかり。
特筆すべきは、悪役の使い方の上手さ。
筋の通った悪役はカッコイイ理屈もあり、さらにバートンの場合、一概に悪とも言い切れない。
バートンとハルの信念が対立したせいで、たまたま悪役に見えたという解釈だってできるわけだし。

そして、バートンこそが、主人公を成長させる最も重要なキャラクター。
最終的に彼を乗り越えてエンディングを迎えるあたり、出世ものの作品としての完成度は高い。

しかし、どうも私の根が貧乏性なのか、後半になると金額が壮大すぎて、わけがわからないことになってくる。
宝くじで3億円どころか、1千万円当たったって即座に隠居生活を決め込む自信がある私には、兆の位で話をされても、正直ピンとこない。
というか、作中の登場人物もピンときていないから、あんなことになってしまうのだろうけれど。

テキスト

これがこのシナリオライターの特徴なのだろうか、文章がかなりくどい。
同じことを手を変え品を変え、何度も描写する。ハルの内面なんか、特に。
大事なことをわかりやすく、感情移入が苦手な人も引き込むように、なのかなぁ?

そして、第三話で顕著だったように、金融商品のお話なんかはかなりオタク臭い。
私はデリバティブとかスワップとかオプションとかに馴染みのある人間だったからよかったようなものの、まったく知らない人にとっては、第三話の序中盤はかなりしんどかったんではなかろうか。
逆に言えば、だからこそ物語に裏付けが作れて、深みが出るということなのかもしれないけど。

ただし、シナリオを展開させるテキストは読みやすい。
気づけば電気もつけずにディスプレイにのめり込んでいるあなたがいるはずだ。

ギャグ的な意味での面白さというのはほとんどなし。
代わりに、狼と香辛料でのホロとロレンスのように、頭がいい人同士の掛け合いの妙といったものがたっぷりと堪能できる。
これがこのライターの醍醐味なのかもしれない。

キャラクター

どのキャラクターにも信念があり、それがとても格好いい。

私の一押しは、理沙。
二次元ヒロインランキングに入れてしまおうか本気で悩むレベルの、すてきなお姉さん。
本作には挫折する主人公・ハルを導くキャラクターが数人いるが、その中でも最も心に寄り添ってくれるのが彼女。
特に、第二話での迷える子羊だったハルの背中を押してくれる理沙は、本当に神様みたいだった。

クリスもエレノアもハガナも、その気になればルートに入れるだろう、言わば正ヒロイン。
けれど、理沙だけはどうやってもルートに入れる気がしない。
それが理沙が理沙たる由縁であり、理沙がいつでもすてきなお姉さんな証でもある。
手に届かないものって、いつでもキラキラして見えるんだよね。

グラフィック

CGの枚数は、Ep.1、2が各40枚、Ep.3が60枚程度。
これらがすべて日常シーンなのは、すごく贅沢な気分になる。
Ep.1では画力は同人ゲームレベルだが、Ep.2、3では商業作品でも通用するレベル。

背景の都市や空は幻想的でとてもきれい。私好み。

音楽

Ep.1~3ともに、テーマ曲は「岸田教団&明星ロケッツ」。
存在を知っていただけで曲はほとんど聞いたことがなかったけど、アップテンポなロックナンバーは、このゲームの疾走感によく似合っている。
曲はEp.2のテーマ「cause to decide」が一番のお気に入りかな。

オープニングムービーも中の上くらい。
同人ゲームでこれは、なかなかのクオリティなんじゃないでしょーか。

BGMは、そこまで惹かれるものはなかったものの、よくまとまっている。

システム

通常のギャルゲーと同じレベル。
スキップボタンがないので、飛ばしたいときはCtrlキーで。

総評

エロなし全年齢対象の、上質なノベライズゲーム。

このゲームにキャラクターボイスは存在しない。
にもかかわらず、ここまできっちりキャラが立ててこられると、本当にギャルゲーにCVが必要なのか? という疑念すら抱かせてくる。
まぁエロゲーの場合、聴覚からの興奮ってのも重要なポイントなんだろうけど。
このゲームにそれは必要無いし、むしろ声がないほうが会話のテンポや駆け引きの妙といったものが際立つようにも思う。
ついでに安くなるし。

エロなしお色気なし、シナリオ一本勝負でここまで面白いゲームとなると、シュタインズ・ゲートくらいしか思いつかない。
この時間・金額でここまで楽しめるのなら、神作に認定してしまってもいいように思う。
ちょっと甘めではあるけれど、拡散希望ということで、2年ぶり5作目の★5評価です。
category
ゲーム [★★★★★]
WORLD END ECONOMiCA