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FLOWERS -Le volume sur printemps- (春篇) その1(シナリオレビュー)

祝・冬篇発売決定!
ということで、記事を書かずにやりっ放しプレイだったFLOWERSだけれど、ようやく2周目をしたので、ようやく記事にします。

余談だけれど、イノグレは私のベスト3に入るお気に入りブランドなのです。
そのお気に入りポイントをごり押ししてくるのが、この作品。
この透明感は他所じゃ味わえない!

---

『悪魔と青く深い海の間で』という英語の慣用句がある
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現だ
青い海に飛び込み身を投げてしまった女性
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況であれば――
悪魔に食べられたくない女性は時として深い海のほうが魅惑的に感じるという
どちらを選んでも救いはない
これから始まるのは
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない二つの問いに迫られる、始まりのお話


「百合系ミステリィADV」と銘打たれているように、このゲームには主人公も含め、女の子しか登場しない。
(ついでに、全年齢レーティングなのでHシーンもない!)
四部作の「起」に位置づけられるこの春篇は、超絶コミュ障な主人公が、拙い足取りで初めての友達を作り、ゆっくりと絆を結んでゆく、三角関係のお話である。

---

ストーリーそのものについては、語るべきことは多くない。
学院生活に起こる身近な事件を、主人公が探偵のように解決していくあたりが「ミステリィADV」なのだろう。

けれど、このゲームでのメインは、謎解きミステリィではなく、謎を解いた結果として影響を受ける少女たちの関係性がメイン。
(例えば、立花の濡れ衣を晴らしたことで、主人公のポジションが「取っつきづらいミステリアスな美人」から「知的で寡黙な大人な女性」にランクアップし、立花からの好感度がうなぎ上りする――など)

まぁ……マユリちゃんを失踪させた「真実の女神」は、本物のミステリィかもしれないけど。
この謎については、冬まで持ち越しということで……ひとつ。
(というか、毎度イノグレ作品は選択肢が意味不明すぎるんだよなあ?)

「好き」も「嫌い」も、本当に他人だったなら持ち得ない感情だ。
もはや他人でもただのクラスメートでもない「アミティエ」という仮初の友人となったせいで「関係」が生まれる。
三人の少女たちのそれぞれの思惑と、否応なしに起きる出来事と、どうしようもない感情によって、近づいては離れ、また近づいて……な、思春期独特の距離感が、このシナリオの醍醐味である。

ここでは主人公・白羽蘇芳にスポットを当て、感想文をまとめてみようと思う。

---

彼女はいわゆる「おどおど系」で、内気な小心者だ。
このキャラクターには、たぶん好き嫌いがあると思う。
(うじうじ思い悩むばかりの彼女にイライラさせられた諸兄姉も多いのではなかろうか?)

けれど、そのメンタルの弱さとは対照的に、今流行りのラノベ主人公も真っ青な超絶スペックの持ち主でもある。
誰もが学年一と認める容姿に、恵まれた体躯、頭脳明晰、手先も器用で、アルパカみたいに優しくて、おっぱいも大きい。
彼女こそが「実は出来る系主人公」そのものなのだ。

ついでに個人的な話をさせてもらえれば、彼女こそが私の「憧れ」でもある。
もし私が女の子として生まれたのなら、蘇芳ちゃんになりたかった。
そう、そんな私はおどおど系の陰キャなのでした!
(どーでもいいことを一応断っておくと、今から女の子になりたいとは思わないので、TSモノには興味がなかったのでした)

そして、このシナリオはそんな人見知りな蘇芳ちゃんの成長ストーリーでもあるのだ。

例えば、「血塗れメアリー」事件での、沙沙貴姉妹との顛末。
自分の中に膨れ上がる感情を初めて発見し、思い切って言葉にした日。

「――だって、友達じゃない」


例えば、「桜狩」事件の最中、自暴自棄にすべてを吐露せざるを得なくなるほど弱り切ったマユリとの顛末。
自らの過去を明かし、そしてこう続ける。

「私が自分の事を告白したのは、マユリさんを擁護するためではないの」
「貴女が今ここで全てを失っては……諦めてしまったら、貴女を目指していた私も終わってしまう。そう感じたのよ」
  「私を立ち直らせるのは……自分の為、か」
「そう。だから聖母役を降りるなんて言わないで。私が目指せる貴女で居て欲しいの」


蘇芳は決して自分に自信が持てるようになったから、強い言葉を口にできるようになったわけではない。
友人になれるほど彼女たちと積み重ねてきた日々を――つまりは友情を、信じられるようになったからだ。
そうして結実するのが、マユリエンドなのである。

---

ふと
「悪魔と青く深い海の間で」という英語のことわざを思い浮かべ
私自身が分水嶺にいるのだと識った
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況――
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現
どちらを選んでも救いはない
私たちの行為は神に叛するものだろう
だけれど、
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない選択を迫られている今こそ愛おしいと思えた


彼女たちの関係性は変わっていく。
それがたとえ背徳だったとしても、想いを交わすことの、互いのすべてを受け入れることの喜びを知る。
けれど、彼女たち自身は変わらない。
己の弱さを克服できないままだ。

真実はいつも残酷だという
ならば嘘は優しいのだろう
いつか読んだ文章にあった言葉、次はなんと続くのだったか


二人きりの深夜の図書室を「青く深い海」となぞらえた蘇芳は、なぜマユリを「悪魔」にたとえたのか。
互いのすべてをさらけ出し、重ねること。
その後戻りのできない一歩が「絶望の海」だというなら、「優しい悪魔の囁き」は、マユリの抱く二心だ。

――だから優しさは嘘だ

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」5話より)


それを知っていたから、少女たちは祈るのだ。

どうかこの一時だけ
アングレカムの花言葉を私に――

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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur printemps- (春篇) その2(まとめ)

シナリオ

「百合系ミステリィADV」と銘打たれているものの、中身は、やれば出来る系主人公の成長譚。
もちろん、女の子たちの百合百合しい距離感も、見どころの一つ。
詳しいレビューは、記事その1を参照されたし。

「マリア様がみてる」から影響を受けているような部分も散見されるが、ただの二番煎じではない。
もっと繊細な「自分探し」がテーマとなっている。

しかし、冷静になってみると、私たちは「自分らしさ」などという台詞をキーワードに、いつでも居場所を探している気がする。
その頻度は恋をするくらい高いようにも思える。
ひょっとしたら、だから恋をするのかもしれない。

テキスト

読み物としてのクオリティは十分満たしている。
漢字の使いかたに代表される、グラフィックにマッチした透明度の高い綺麗なテキストで作られている。

その文章自体にさほど意味のない、装飾的なテキストが多いのも特徴。
「文章力」という観点で採点したときの評価はわからないけれど、それが作品の雰囲気作りに大きく貢献しているのはたしか。
(そういう意味では、奈良原一鉄のような個性があると言えるのかもしれない)

ただ、選択肢はちょっと意味不明気味。

グラフィック

さすがイノグレ、さすがスギナミキと言いたい。
殻ノ少女シリーズのときはちょっとダークな雰囲気の絵が多かったけれど、今回はもっと明るくて優しい絵が多い。
はじめて図書室に入ったときの蘇芳ちゃんを見ていると、なるほど、一枚何十万とかの萌え版画を買っちゃう人の気持ちがわかる気すらしてくる。
グラフィック面では、間違いなくギャルゲー界最高峰の一角。

個人的にお気に入りなのは、聖アングレカム学院の制服。
ワンピースのセーラー服に、ベルト代わりにリボンを結ぶデザインだと思うのだけれど、これが妙にロリロリしい。
生地がずいぶん柔らかそうなせいか、スモックのようにも見えますね!?

声優

どうしてこんなところにまりのさんが!? とは思うけれど、全体的にナイスキャスト。
特に、やっぱり蘇芳ちゃん。
この控えめで優しい声で囁かれると、もー蕩けちゃいそうです。

苺と林檎の声優さんが一緒っていうのも、にわかには信じがたいところ。

音楽・ムービー

BGMやボーカル曲を単体で取り上げたときのクオリティは、中の上~上の下くらい。
つまり、「ふつーにいい」レベル。

ただ、この作品の雰囲気作りには二役か三役くらい買っている。
縁の下の力持ち、ってやつかな。

そして、OPムービーにはこのゲームの魅力が濃縮されている。
イノグレ作品はいつもそうだけれど、こういう一点に作品の雰囲気を凝縮して投影するのが上手なんだよなぁ。

システム

必要十分。
バックログがマウスでスクロールできないのが、ちょっと残念。
(ウィンドウモードが使えなくなってしまったのは、たぶん私の環境のせい?)

イノグレ作品では、キャラクター別音量調整は必ずしようね!

総評

ミステリィ風味の百合系日常ADV。
気になったなら、まずはOPを見てみよう。
そこで感じた雰囲気は、ゲームの中に広がる世界とまったく同じものだ。

また、作品を構成している要素すべてが「透明感」という統一性を持って、作品の雰囲気作りに寄与しているのは、特筆すべき点だと思う。
まったくブレがない、いわゆる「一貫性がある」というやつ。
こういった個性とセンスはなかなか持てるものじゃない。

大人数が関わって完成する作品にそこまできちんとした芯が通っているということは、それほど「作り込まれている」と言える。
その点のみでも評価されるべきだと思うし、さらに、その個性が私の好みにとても合っているのだ。

また、このゲームが18禁じゃないのも重要な点。
「マリみて」とは違って、このゲームでは女の子同士でキスするし、たぶんそれ以上もしてる。
(蘇芳ちゃんとマユリちゃんは図書室でマリア様に見せちゃいけないことをしたよ! 私はそう信じている)

もちろん、そういった18禁要素が一枚絵付きで描写されたならそれは至福の時だろうが、そうして作品がR18指定になった瞬間、すべての個別ルートでえっちなことをしなくちゃいけない義務が発生する。
それは、彼女たちの純粋さを大きく損なうことになる。
(男の子はエッチしたいから恋をするけれど、女の子は恋をしたからエッチをするのです!)

つまり、このゲームは全年齢レーティングだからこそ、透き通る輝きを放っているのだ。
FLOWERS・春篇、傑作評価・★4。
批評空間ベースでは、83点です。
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur été- (夏篇) その1(シナリオレビュー)

FLOWERS・夏篇がなぜ素晴らしいのか、考えてみた。

ツンデレ小悪魔とクーデレ雷がイチャイチャするゲームとか、素晴らしくないわけがなかった。
(千鳥のCV・洲崎綾は、艦これ第六駆の声優さんなのです!)

と、一行で感想文を終えてしまうわけにもいかないので、二人のイチャイチャ具合をもう少し掘り下げてみたいと思う。

今回のシナリオは、(普通のギャルゲーと同じく)主人公がヒロインの抱えている問題を解決することで、距離が縮まっていく――という、王道のパターンだ。
ここでは、その「ヒロイン」である考崎千鳥嬢にスポットを当てる。

---

足下に落ちた自分ノートを拾いぱらぱらと捲った。こんなものが無ければ、好きか嫌いかも判断できない自分。
父母が興味を持ってくれるかだけを考え――詐病を繰り返し、バレエですら父母を振り向かす為の……。
私は、私自身とは何なのだろう。


(ありがちな話ではあるが)えりかも千鳥も「家族」に問題を抱えていた。
二人ともきっと気が合うわぁ――とはバスキア教諭の言葉だけれど、大きな共通点は、まずここだ。

えりかは足が不自由なことから、どうしても家族に負担をかけざるを得なかった。
そのことに心を砕いた彼女は、全寮制の学校に進み、家族から離れることを望む。

一方千鳥は、能力至上主義な家庭に育ち、常にエリートでなければならなかった。
けれど、両親が唯一認めてくれたバレエに挫折し、聖アングレカム学院に転入することとなる。

千鳥が今まで努力してきたすべては、両親に認められたいからであり、ひいては「自分のため」だった。
彼女が病を患ったのは、バレエを踊ることを「後輩のため」と歪な動機付けを行ったからだろう。
今までの彼女の人生のスタンスでは「他人のためになにかをする」ことが認められなかったからだ。
(もちろん、千鳥もそれが正しいことだと頭では理解していたはず。けれど、実際に行動に起こせるかは別問題だ。
 朝起きなきゃいけないとわかってはいても、学校や仕事が苦痛すぎてベッドから出られないのと同じことだ)

けれど、千鳥は(春篇と違い、正しい意味で)変わっていく。
それは朗読劇を成功させるために奔走したえりかの、発表会を成功させたいと自分を思いやってくれたえりかの姿を見たからであり。
そして過去を乗り越えたことを知ったとき、自分がどれほど多くの人に支えられていたか、アミティエがどれほどのものを自分に与えてくれたかを知る。
自分のためではなく、贖罪のためではなく、本当の意味で「人のためになにかをする」ということを肌で理解するのだ。

自分とはなにか。
自分はなぜ生きているのか。
「両親のため」「後輩のため」と自分を騙すことができなくなった彼女は、そうして一つの答えを得る。

好きな人の為に、何かしてあげたいと思ったことはありますか――


---

バスキア教諭の言う、二人の共通点。
それは、触れられたくない心の聖域を守るために周囲に壁を作っているということ。

千鳥は信念を持って生きている、強い少女に見える。
逆に、えりかは不自由な身体で、なんとなく優しくしてあげたくなる少女に見える。

けれど、実の二人はその見た目とは全く逆だ。
千鳥の心はとても脆く、(そのクールなルックスからは信じがたいほどの)幼い拗ね方をしてみせたりする。
逆に、えりかは他人を寄せ付けないほどの強い自分を持っている。
いずれにせよ、千鳥はその態度で、えりかはその言葉で、他人を拒否していたのだ。

私たちはいつでも居場所を探している――
私はそう書いたけれど、居場所とは、自分を守るために身構える必要がない場所だということ。
そんな二人が良いアミティエになるのは、パズルのピースがはまるのと同じくらい自明なことだ。

「この学院に転入して――落ち込むこともあったけれど、今は此処が私の家だわ」
「そしてわたしは家族」
問うわたしへ、千鳥は小さく、だが決然と首を振る。
「えりか、貴女は私の――」
呟かれた言葉は、確かにわたしが望んだ言葉だった。


照れ屋なえりかはそれを家族と呼び、生真面目な千鳥は恋人と呼んだ。
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur été- (夏篇) その2(まとめ)

春篇の感想はこちらから。

シナリオ

あぁ、夏篇も「百合系ミステリィADV」だったんだっけ?
「ツンデレとクーデレのイチャイチャADV」かと思ってたよ!
シナリオの詳しいレビューは、記事その1からどうぞ。

夏篇の本当のミステリィ要素は、「フックマン事件で、バスキア教諭が庇おうとした人物」「マユリが絵画に残したメッセージ」「八代譲葉殴打事件で、譲葉が庇おうとした人物」になるかな。
まぁこのあたりのお話は、秋篇以降で。

エンディングは、私はやっぱりトゥルーを推しておく。
友達以上恋人未満エンドも悪くはないけど。やっぱりギャルゲーだしね、ハッピーエンドがいいですね!
ダリアエンドも、私は嫌いじゃない。
というか、えりかちゃんってばおっぱいにドキドキしすぎなんだよなあ?

テキスト

基本的には春篇の感想に準ずる。ライターは同じ人だしね。

ただ、春篇よりもギャルゲー寄りの甘いテキストが増えた気もする。
これは主人公が真面目キャラの蘇芳ちゃんから、皮肉屋のえりかちゃんに変わったからかな。

えりかの軽口に千鳥が皮肉で返す、偏差値高そうな会話が好き。
バレエの講師が誰か尋ねられて「私だよ」とか適当言っちゃうえりかちゃんを見つめて、「嘘つきの顔をじっくり確認しておきたかったのよ」と返しちゃう千鳥ちゃんとか。

私のお気に入りは、プロローグの最悪の出会い。
だいたい口達者なえりかちゃんにやり込められちゃう千鳥ちゃんだけど、えりかちゃんに煽られたこのときの刃物みたいな鋭さは、彼女のキャラクターを印象付けるとてもいいシーンだったと思う。

わたしの眼を、顔を、身体を、車椅子を、動かない足を順に眺め、
「――貴女は卑怯者ね」
耳元でそう言った。
続け――甘えている、と。


グラフィック

夏篇は夏服なのです!
セーラーワンピ、いいですねえ!
学院指定の下着(そこまで制服!)に色気が足りないのは、やや問題ではあるが。

今回は、おいしそうなお昼ご飯CGが充実していた。
料理絵って手抜きなことが多いので、こういうの好感度高し。
(っていうか、えりかちゃんグルメすぎでしょ?)(仔牛のカツレツとか食べたことないですけど?)

あとは――もう原画・スギナミキのグラフィックについて語るのも野暮でしょう。
トゥルーエンド後のタイトル画面は、ギャルゲー史に残ると信じています。

声優

私は痛車のモデルにしちゃうくらい雷が好きなのです!
なので、CV:洲崎綾がヤバスギでした。
ちょっと心を開いてくれたときの無防備な声なんか、まんま雷なんだよなぁ。
(壁を作っているときが響だというわけではない)(暁と電要素もないので、あしからず)

ちなみに、えりかちゃんに那珂ちゃん要素はぜんぜんなかった。

音楽・ムービー

こちらの評価も、春篇に準ずる。
OPムービーは春篇のほうが好きだったかも?

ただ、千鳥ちゃんがアカペラで歌っていた唄がEDに流れるのは、かなり震える。

システム

こちらの評価も、春篇に準ずる。
キャラ別音量調整が、さらに手が込んでおりました。

総評

ミステリィ風味、百合系日常ADV。
春篇に比べて、ギャルゲー色が強まっている。

春篇での百合百合は、世界で一番大切な相手のことを便宜上「恋人」と呼びました――といった、S極とN極が引き合うのと同じお付き合いだった。
変わって、夏篇での百合百合は、前世からの絆であり、薬指の運命の赤い糸に結ばれたお付き合いだった。
あまあま度が段違いなのです!

とは言え、今回の作品ではレーティングが18禁だったとしても、Hシーンが入るようなことは誰もしていなかった。(春篇とは逆に)
ま、奉仕の心に目覚めた千鳥ちゃんに、照れ屋なえりかちゃんが押し倒されちゃうシーンとか想像してしまいますけどね!

FLOWERS・夏篇、傑作評価・★4つを継続です。
批評空間ベースでは、春篇をしのぐ86点をつけておきます。
ツンデレとクーデレがイチャイチャするゲームとか、傑作以外ありえないんだよなぁ……。

ちなみに、車椅子少女に萌えてしまうのは人間として不健全なので、私はここには書かないようにしました!
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur automn- (秋篇) その1(シナリオレビュー)

一年越しの2016年5月枠、FLOWERS・秋篇をプレイ。

今作では、八代譲葉が主人公、小御門ネリネがメインヒロイン。
サブヒロインとして、沙沙貴姉妹が充てられている。

今作では、この「FLOWERS」という作品に対するシナリオライターの哲学が明らかになっている。
春篇での、蘇芳を脅して恋人にする立花。
あるいは秋篇での、譲葉を口説き落とす機会を逃さなかった林檎、林檎に代償行為を求めてしまった譲葉。
ヒロインは清く正しく描かれるのが大概のギャルゲーなのだが、この作品においてはなぜか違うのだ。

たしかに、人は過ちを犯す生き物だ。
けれど、なぜヒロインにそんなに大きな過ちを犯させるのか?
それを端的に言い表したのが、譲葉のこの台詞。

「人というのは時折、醜い顔を覗かせることがある。そいつがない人間なんていないんだ」


おそらく、これがこのゲームのテーマの一つだ。
ヒロインたちは、皆少しずつの欠点を持ち合わせている。
そして、その欠けた部分を埋めようと、少しずつ利己的な行動を取ってしまう。
今回、その人間臭さがもっとも顕れていたのが、幼少期のネリネだ。

ネリネの「罪」は、友情を試し、信仰を強要したこと。
ネリネは謝罪はしたけれど、そもそもそれを罪だと思っていない譲葉は謝罪を受け入れなかったし、だからネリネに罪を償う機会も与えられなかった。
いずれのルートでもそのまま物語がエンディングを迎えてしまうことに、納得できていない諸兄姉もいるかもしれない。
(罪を犯したのなら罰を受けなければならないはずなのに、なぜ?)

しかし、幼い頃のネリネの行為を「罪」だと思う心こそが、ライオンの言う「臆病さ」そのものなのだ。

---

夏篇ではグリム童話を下敷きにしていたが、秋篇で扱われていたのはオズの魔法使い。
譲葉は自分を「心のないブリキ」に、ネリネを「臆病ライオン」に喩えていた。

オズの魔法使いで、ライオンは「自分が臆病なことを知っている限り、それは確かな不幸せだ」と言う。
いくらライオンが凶暴な獣だと皆から恐れられていても、自分がどう思っているのか、それこそが真実なのだという。
ネリネも(本当に罪を犯したかはさておき)罪を犯したと思っている限り、幸せにはなれない。

小御門ネリネは己が罪を背負っていることを知り、それをひた隠しにしている。
私はそれを卑怯だとは思わない。ただ臆病なのだと思う。
だが、臆病なことの何が悪い?
踏み出せない、勇気がなく口に出せない事なんて誰だってある。
だから私は――


だから譲葉は、臆病な彼女に代わり、勇気を振り絞る。
譲葉が自分をブリキだと言うのは、自分の心を殺し続けてきたから。
ネリネとの、あるいは両親との関係のなかで、「自分の望む自分らしい自分」ではなく「他人が望む八代譲葉らしい自分」になろうとしていたからだ。
けれど、そうやって心を無くそうとしてきた譲葉は、臆病な彼女のため、「自分の望む自分」になることを決意するのだ。

「ネリーにとっての真実と、僕にとっての真実は違う。同じ物でも視ている側にとって真実なんてものは別の顔をみせる」
「君は自分の行ったことを悔いているようだが、僕には救いだった。逃避? 違うね、天啓だよ」


たしかに、幼い頃のネリネにとって譲葉は大勢の友達の一人でしかなく、ちょっと構ったら思った以上に懐いてしまったことが楽しくて、ペット感覚で可愛がっていただけだった。
けれど、譲葉からすればどうだろうか。
転校を繰り返した結果、消極的で内向きな性格になってしまった譲葉。
愛情表現の苦手な両親と、一人の友達もいない学校。
居場所のなかった彼女にとっては、どんな思惑であれ、一緒にいてくれるネリネの存在は計り知れないものだったのだ。

傲慢は七つの大罪にも数えられているけれど、結果的にその行為は譲葉を救っていた。
ならばそれは本当に「罪」なのか?

その答えは、足を挫いて動けなくなった譲葉を迎えに来たネリネの姿にあると、私は思う。

「かかとを三度鳴らしたら、助けに来る。そう約束したでしょう」


---

一つの事実を異なる側面から見たとき、真実は多様な姿を見せる。
この作品では、動機的にではなく、結果的にその事実がどう作用したのか――そこに結論を求めていた。
たしかに、仮にそれが悪意だったとしても、結果的に彼女が救われていたことこそが真実かもしれない。
私としても、そこに異議を唱えるつもりはまったくない。

……ところで、私は似たようなシチュエーションが用意されたゲームをやったことがある。
そして、そこで出された結論は、まったくの正反対だったような気がするのだ。
いやはや、これはどうしたことなんでしょうかねぇ……?
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS

FLOWERS -Le volume sur automn- (秋篇) その2(まとめ)

春篇の感想はこちら、夏篇の感想はこちらから。

シナリオ

「……ねぇ考崎君。どうしても手に入れたいものが二つあったらどうする?」


秋篇では「停滞」と「変化」が一つのテーマになっている。
そのために用意されたのが、春篇でも一要素として取り上げられていた三角関係である。

本当は恋人になりたいけれど、今の親友という関係を崩してしまうのが怖くて、一歩が踏み出せない――
こんなのはどこにでもある話だ。

譲葉は、変わりたいけれど変わることが恐ろしかった。
ネリネは、変わることそのことを恐れていた。
だから二人はずっとこの距離のまま停滞し続けてきたのだ。

けれど、林檎が一歩を踏み出すことで、否応なしの変化が訪れる。
(林檎が変化を恐れなかったのは、決して彼女が勇気ある少女だったからではない。
 自分を変えられるきっかけを待ち望んでいたのだ)

すべてを受け入れてくれる林檎との優しい関係か、実らないかもしれないネリネへの初恋か――
選択を迫られたとき、千鳥は言うのだ。

「私は、どちらかを必ず選ばないといけないと為ったら迷いません。自分の心に従います」
「私の好きなあの子の言葉を借りるなら“誰にでも佳い顔なんて出来ない”ということだと思います」

「一歩を踏み出すのは誰でも怖い。でも、踏み出さなかったら、ずっと同じ場所でとどまってしまう――」
「それは選ぶ側も、選ばれる側も損なわれる行為ではないでしょうか?」


---

こういったテーマのシナリオゆえに「停滞し続けている関係を、最終的に変化させる」というストーリーにせざるを得ない。
そのせいで物語に起伏が少なく、やや退屈気味だったかもしれない。
(もちろん様々なイベントは起きるが、ヒロインたちの関係性に大きな変化が起きない――という意味で)

ちなみに、豆腐メンタルな私的には、林檎エンドがお気に入りです。
年下女房は年上のように、年上女房は年下のように。
甘えさせてくれる林檎と、甘えっ子な譲葉のカップルは、とってもお似合いだと思うのです!

テキスト

シナリオライターは同じなので、基本は夏篇以前の評価に同じ。
今回、テキスト的に特筆すべき点は特になかったよーな気がします。

グラフィック・ムービー

とにかく譲葉とネリネは写真写りが良すぎるんだよなぁ。
そのせいもあって、OPムービーの出来がハンパないことになっている。
特に、曲名が出るところの二人の「虹の魔法」のCGと、アウトロの「天体観測」のCGのキラキラっぷりがヤバイ。

あとは、過去回想CGの使いかたが上手い。
最初のタイトルコールではネリネの騎士のように譲葉を置いておいて、サビに入ったところで「幼少期:譲葉の手を引くネリネ」を出し、そして「現在:ネリネの手を引く譲葉」を見せる。
もう完璧な物語性ですね!

立ち絵と一枚絵を基本としたスライドショー形式のOPムービーとしては、全ギャルゲーの中でも最高峰の出来と言っても過言ではないかもしれない。
というか、イノグレはいつもOPのクオリティが高すぎる。

音楽

OP曲はシンプルに名曲だけれど、その挿入歌としての使いかたが上手過ぎる。
作中では、この「虹の魔法」がオズの魔法使いの「虹の彼方に」に充てられて、二人の思い出の曲になっているのだ。
その二重唱のシーンも、単純にアレンジとしての完成度も高く、うーん、まりのさん結構歌上手いんじゃないですか! ねえ?

それ以外のED・BGM等はふつう。

声優・システム

こちらの評価も夏篇に準じます。

総評

「百合系」とは言うけれど、譲葉はボーイッシュなキャラクターなので、あんまり百合感は強くない。

ちなみに「ミステリィADV」要素の進展は、ほとんどなし。
「真実の女神」に通じる「アガペのタルパ」という七不思議が明らかになり、七つすべてが出揃う。
これがマユリ消失の鍵になっているらしいのだが……冬篇ってけっこうサスペンス要素強めなんですかね?

ところで、春篇での私は蘇芳ちゃんにベタ惚れしていたけれど、それは「主人公」としての彼女が好きだという話。
「ヒロイン」としてなら、CV:洲崎綾な千鳥ちゃんがナンバーワンなのです。
そして、えりかちゃんもかなり上位なお気に入り。
なので、まるでアフターストーリーみたく「ちど×えり」の出番の多い今作は、もーたまらないですって!
(それにしてもチドリンはちょっと丸くなりすぎ感はあるけど!?)
(完全に恋する乙女なんですよねぇ……)

私の評価は、★4・佳作入選。
シナリオ的には良作の域を出ていないが、グラフィック・音楽・ムービー等のビジュアル面が秀逸。
批評空間ベースでは、80点です。
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ゲーム [★★★★☆]
FLOWERS
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